『誰かがあなたを愛している』華やかだけがアナザースカイではない。

誰かがあなたを愛している(1987)
An Autumn’s Tale

監督:メイベル・チャン
出演:チョウ・ユンファ、チェリー・チェン、ジジ・ウォンetc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

海外留学、華やかなイメージを持つかもしれません。実際に日本で聞く留学話は楽しい話がメインだ。コミュ強、陽キャラの物語が支配している。だが、フランスに留学したことがある私に言わせれば、ネガティブな話も少なくはない。例えばアジア人は白人から、または英語圏の人からは忌避される傾向があるなんていうのは代表的だ。頑張って日本人以外のコミュニティから飛び出しても、様々な人種が議論しあったり、遊びに行ったりする状況はあまり生まれなかったなと記憶している。また、ワーキングホリデーに行った友人はどん底のようなコミュニティで低賃金労働に揉まれ苦言を呈していたりするから、海外に行く=楽しいの方程式は成り立たない。それは海外旅行と勘違いしていると思っている。さて、香港映画『誰かがあなたを愛している』を観た。これが面白いアナザースカイ映画だった。

『誰かがあなたを愛している』あらすじ

演劇の勉強と留学中の恋人に会うため23歳の香港女性ジェニー(チェリー・チェン)は、そこで遠い親戚にあたるサミュエル(チョウ・ユンファ)という33歳のやくざな男の面倒になるが、特に男性として意識することなくニューヨークの生活は始まった。彼はチャイナタウンの小さなチャイニーズ・レストランで働き、下町のうらぶれた2階建てのアパートに住んでおり、ジェニーもそこに間借りすることになった。早速彼女は恋人ヴィンセント(ダニー・チャン)に会いにゆくが、彼は冷たく、他に交際している女性もいることを知りショックをうけたジェニーは、あやうくガス事故を起こしそうになる。そんな彼女を立ち直らせようと一生懸命元気づけるサミュエル。いつしか彼はジェニーを愛するようになっており、彼女もサミュエルに好意を抱いていたが、2人の仲はなかなか進展しない。自分の気持ちをうちあけようと、サミュエルはある夜パーティを開くが、そこに現われたヴィンセントの姿に勘違いした彼は、パーティを飛び出し酒を飲み、荒れに荒れた。ヴィンセントの事は過去のものと思っていたジェニーは当惑し、やがてその夜はサミュエルの34歳の誕生日であるこを知った彼女は、彼のために小さな人形を作ってやる。翌朝それを見つけジェニーの心を確認したサミュエルは感激して、以前彼女が欲しがっていた金の時計バンドを買いに行く。その頃サミュエルの心を知らないジェニーは、アパートを出てゆく決心をし荷物をまとめていた。彼女はサミュエルにプレゼントの小箱を渡し去ってゆく。サミュエルも無理矢理笑顔をつくり、自分の全財産をはたいて買ったプレゼントを彼女に差し出した。車が走り出し、ジェニーのブレゼントを開けたサミュエルは、そこに彼女の金の時計を見つける。一方サミュエルのプレゼントを見たジェニーは彼への愛を確かめるが、時はすでに遅かった。彼女はロングアイランドに移り、家庭教師を始めた。時がたち、ジェニーは昔二人で歩いたビーチを訪ねると、そこに“サミュエル”というビーチレストランを見つける。そして笑顔で彼女を見つめるサミュエルの姿も……。

映画.comより引用

華やかだけがアナザースカイではない。

演劇を学ぶため、ニューヨークに降り立つジェニファー(チェリー・チャン)。右も左も分からぬ彼女を歓待したのは、お調子者のシュンタウ(チョウ・ユンファ)だった。彼に案内されたのは、列車の轟音が鳴り響く埃まみれの廃墟のような空間であった。先に留学していた恋人ビンセント(ダニー・チャン)ととっとと再開して輝かしい留学ライフを送ろうと目論んだが、彼はすっかりアメリカかぶれとなっており別の恋人とイチャついていた。失意の彼女は勉学に集中することにするが、理想の生活はない。汚らしい、アジア人経営のレストランでランチを食べ、その他大勢として生活に食らいつくのみだ。アルバイトも上手くいかない。

この描写が非常にリアルだ。アメリカという非日常にいながらも、その非日常の主人公になることができない。周囲を見回すと、アメリカに適応したアジア人がイキっていたりする。いわゆる海外かぶれだ。そんなかぶれたアジア人に揉まれながら幻滅しつつも現実を受け入れていく過程がとても良い。

大学4年生の時に、学部のWeb広報で「留学前に観ておくべき映画5選」を執筆したことがあるが、今だったらこの映画を推薦したい。留学は楽しいだけではないことを知らないと痛い目を見ることは少し知っておいた方がいいのかもしれないなとこの映画を観て思いました。

※IMDbより画像引用