【特集ブリュノ・デュモン】『フランドル』地続きにある死と生

フランドル(2005)
FLANDRES

監督:ブリュノ・デュモン
出演:アデライード・ルルー、サミュエル・ボワダン、アンリ・クレテル、ジャン=マリー・ブルヴェール、ダヴィド・プーラン、パトリス・ヴナン、ダヴィド・ルゲetc

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

ブリュノ・デュモンが第59回カンヌ国際映画祭に出品しグランプリを受賞した『フランドル』を観ました。第59回カンヌ国際映画祭は激戦区となっており、『パンズ・ラビリンス』、『ファーストフード・ネイション』、『Climates/うつろいの季節』、『街のあかり』、『ボルベール〈帰郷〉』などと強豪が多い中、ミニマルな戦争映画である『フランドル』がグランプリ獲ったのは驚きである(パルムドールはケン・ローチ『麦の穂をゆらす風』)。DVDのパッケージからは激しい戦闘シーンを想起させるが、案の定ブリュノ・デュモン印に満ちた映画であった。

『フランドル』あらすじ

人間のあらゆる罪を受け止めるかのように男たちと体を重ねる少女の姿を描き、カンヌ国際映画祭で審査員グランプリを受賞した衝撃作。監督は「ユマニテ」でも同賞に輝いたブリュノ・デュモン。フランドル地方で暮らす少女バルブは、複数の男たちと関係を持つ。彼女に強い想いを抱くデメステルもその内の1人だった。やがて他の男たちと戦場に赴いた彼は、そこであらゆる罪を犯していく。それに呼応するかのように、バルブの精神は異常を来たし始める。

映画.comより引用

地続きにある死と生

戦地に赴く前夜。特に変わったことは起こらず、淀んだフランドルの地方の日常が淡々と紡がれていく。だが、焚き火を囲む者たちの心境には不安が立ち込めている。ガラリと日常が変わってしまう直前のソワソワとした感触がそこにある。

戦地では、文字通り死と隣り合わせな世界が描かれる。ブリュノ・デュモン特有のドライに事象を積み重ねていく様子が戦争の凄惨さを物語る。行動をしていると、建物から襲撃される。その戦闘に巻き込まれて、牛が負傷し、ぐったりと道に倒れる。兵士は、刹那に牛の苦痛を感じ取り、射殺する。自分の罪を償うようにして牛を殺害するのだ。戦争では、瞬時の判断こそが全てだ。人を殺すことによる迷いがどんどんなくなっていき、攻撃を躊躇う敵に対しても暴力を振るっていく。人間の持つ理性がなくなっていき、本能がむきだしとなっていくのだ。それと対応するように、フランドル地方の女も汚い空間で本能的に肉体的交わりを行い、精神に異常をきたしていく。

戦争映画とブリュノ・デュモンとの相性はあまり良くないのではと観賞前には思っていた。しかし実際に観てみると感情を排除して淡々と行為を連ねていく様子から戦争でむきだしにされる暴力という点で相性は良かったと感じた。

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※MUBIより画像引用

 

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