【 #死ぬまでに観たい映画1001本 】『孤独な場所で』ファムファタールの対岸にいるDV男

孤独な場所で(1950)
IN A LONELY PLACE

監督:ニコラス・レイ
出演:グロリア・グレアム、ハンフリー・ボガート、アート・スミス、マーサ・スチュワート、カール・ベントン・リードetc

評価:90点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

以前、「死ぬまでに観たい映画1001本」掲載作かと思って観賞した『危険な場所で』は違ったので、リベンジとして『孤独な場所で』を観てみました。ニコラス・レイといえば女性版西部劇として『大砂塵』を発表したことで有名だが、本作ではファムファタールを逆転させることで男性の暴力性を捉えた大傑作となってました。

『孤独な場所で』あらすじ

ハリウッドで起きた殺人事件を背景に、才能は天才的だが抑えきれない暴力的な衝動に苦悩する脚本家と元女優の若い女の破滅へと向かう壮絶な愛を描く、サイコ・サスペンスにして悲痛なる恋愛映画。「理由なき反抗」「大砂塵」などで戦後アメリカ映画に登場したもっとも重要な映画作家のひとり、ニコラス・レイの長編第5作で、彼の初期の傑作として特に高い。ハンフリー・ボガートがワーナーから飛びだしてコロンビア傘下に設立した独立プロ、サンタナ・プロの製作で、レイは同社の第1回作品「暗黒への転落」を演出している。製作はボガートのパートナーのロバート・ロード。原作はドロシー・B・ヒューズのサイコ・サスペンス小説で主人公が実は連続殺人鬼という設定だが、状況設定を除けば映画は原作とはかなりかけはなれている。脚本はエドマンド・H・ノースの脚色をもとにアンドリュー・ソルトが執筆したが、実際にはレイが撮影と平行してほとんどを書き直している。撮影はバーネット・ガフィ、美術はロバート・ピーターソン、編集はヴァイオラ・ローレンス、音楽はフランス人のジョルジュ・アントゥイユ(ジョージ・アンシール)で、いずれも「暗黒への転落」と同じスタッフ。主演は「カサブランカ」「脱出」「黄金」などのハンフリー・ボガート、「復讐は俺に任せろ」などのグロリア・グレアム。グレアムはレイの監督第2作『A Woman’s Secret』に出演した折りに妊娠し、レイの二度目の妻となったが、本作の撮影中に離婚。このことから本作は二人の私生活を多分に反映しているとも言われる。ちなみにグレアムは、以後フリッツ・ラング監督の「復讐は俺に任せろ」などに主演し、またレイと最初の妻ジーン・エヴァンズの長男アンソニー・レイ (「アメリカの影」に主演) と結婚した。共演はレイと同じ30年代ニューヨークの左翼演劇運動の出身である「忘れじの面影」のアート・スミス、「サリヴァンの旅」などのロバート・ワーウィック。ちなみに真犯人の名がヘンリー・ケスラーというのは、共同製作者のヘンリー・S・ケスラーの名前を借用した楽屋オチである。

映画.comより引用

ファムファタールの対岸にいるDV男

燻っている脚本家ディクソン・スティール(ハンフリー・ボガート)は行きつけのバーで乱闘騒ぎしてしまう。そんな彼は、成り行きでミルドレッド・アトキンソン(マーサ・スチュワート)を家に連れて帰る。脚本家予定の本の内容を聞いてアイデアをもらおうとしている。ここでフラグが沢山立てられる。彼女に酒を飲ませ、彼女は意気揚々と本の世界を熱演する中で「助けて!」と叫ぶ。それを向かいに住む女性ローレル・グレイ(グロリア・グレアム)が目撃してしまう。そして、ディクソンは彼女に金を与えて、帰宅させるや否や殺されてしまう。警察官は彼を疑い事情聴取をする。彼は証人として向かいに住む女性を呼び出す。通常であれば、「助けて!」と叫ぶ声が聞こえたと彼女が告発し、窮地に追い込まれるのだが、どういうわけか二人は恋仲となってしまう。ディクソンとローレルは暮らし始めるが、段々と彼の突発的な暴力面が浮き彫りとなり、「彼は本当にミルドレッドを殺したのかもしれない」と疑い始める。

本作は観客に神の目線を与えることにより、限りなくアウトに近いセーフゾーンを疾走するディクソンの不気味さに戦慄する。彼は飄々と仕事をこなすが、常に何かにイラついており、交通事故未遂が起きると、相手を撲殺しようとしてしまうのだ。そして、ローレルは事実を知らないのでひたすら不安を抱え怯えている。

ローレルはファムファタールだと思っていたら逆の立場であり、ディクソンこそが「致命的な男」だったのだ。この自然な、クリシェ破りの鮮やかさに圧倒される。そして、直接ローレルに暴力を振るうことはほとんどないのだが、空間が暴力となっていく。モラルハラスメントを空間で表現してみせるニコラス・レイに先見の明を感じます。

冒頭のディクソンがミルドレッドを持ち帰る場面や、空間や会話の間で暴力を表現する特徴を踏まえると『プロミシング・ヤング・ウーマン』に影響を与えた作品かもしれません。

また、本作はニコラス・レイのハリウッドに対するぼやきがにじみ出ており、例えば「今のハリウッドはリメイクばかりだ。そりゃ稼げるからね。」とディクソンに言わせていたりする。今も昔も、ヒットした作品に対して柳の下の二匹目のドジョウを狙う動きは活発だったんだなと知ることができてこれもまた良かった。

Amazon Prime Videoにあるので是非!

※IMDbより画像引用

 

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