【ネタバレ】『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』セカイ系のその先へ

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q(2012)
EVANGELION:3.0 YOU CAN (NOT) REDO.

監督:庵野秀明、摩砂雪、前田真宏、鶴巻和哉
出演:緒方恵美、林原めぐみ、宮村優子、坂本真綾、三石琴乃、山口由里子etc

評価:90点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

実は、『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の予習で新劇場版を順番に観ているというよりも、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』とは何だったのか?を振り返りたくて順番に観賞し感想を書いているところがある。既に話をした通り、私のエヴァとの出会いは高校3年生の時にエヴァ好きな友人と「Q」を観たのが最初だった。「紫のロボットが戦う」「静かな女の子と痛い女の子に根暗な男の子が板ばさみになる」ぐらいしか事前情報ないまま観た「Q」は、当時から映画オタクだった私からしても異常であった。シンジくん同様、訳の分からぬまま人だけが代わる代わるシンジの過去を抉っていき、唯一手を差し伸べてくれたイケメン・カヲル君にすら裏切られる惨劇に驚愕した記憶がある。あの後、漫画を数巻読み、社会人になってからテレビ版を完走し、ようやく友人が狼狽する気持ちと同じ立場で観ることができた。そして意外なことにこれが傑作に感じました。ネタバレありで書いていきます。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』あらすじ


社会現象を巻き起こした庵野秀明監督によるオリジナルSFロボットアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」(1995~96)を、新たに4部作で描きなおす「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズ第3作。軌道衛星上に初号機とともに封印されていたシンジは、ミサトやアスカらの手により地上に戻され、目を覚ます。しかし周囲の状況は様変わりし、ヴィレという新しい組織に所属するミサトらは、巨大戦艦ヴンダーを駆使してNERV(ネルフ)と戦っていた。状況が理解できないまま困惑するシンジは、迎えに現れたレイの声に導かれてミサトらの下を去り、変わり果てたNERV本部へとやってくるが、そこで自分が眠っていた間に起こった恐ろしい真実を知ることになる。新キャラクターや新エヴァンゲリオンも登場し、TVシリーズにはなかった新たな物語が展開する。庵野秀明総監督の下、監督に摩砂雪、鶴巻和哉、前田真宏の3人があたる。活動休止中の宇多田ヒカルが新曲「桜流し」をテーマソングに提供。スタジオジブリ製作のミニチュア特撮短編「巨神兵東京に現る劇場版」が同時上映。
映画.comより引用

セカイ系のその先へ

セカイ系って「自分の欲望に従い、世界はどうなってもいい」という原理で動いているジャンルだと認識している。少なくても新海誠が『君の名は。』、『天気の子』で描いたセカイはそうであった。そして両作とも、少しばかり後日譚は描かれども、社会がどうなったかについては興味なさげに描かれていた。一方、新劇場版のエヴァ、特に「おめでとう」エンディングではない世界線を描くことで異次元に観客を陥れた問題作「Q」は、セカイ系のその先に着目している。ただでさえ、その視点が斬新だったのに対して、『ツイン・ピークス』シーズン1&2を完走した上で挑む『ツイン・ピークス THE RETURN』がいきなり第8話から始まるような混沌を90分間叩きつけるもんだから公開当時多くのファンを困惑させたのは無理もない。

ただ8年も経った今観れば、セカイ系のその先を凶悪な「オイディプス王」の世界に包んだ映画と冷静に解釈することができる。前作で社会の抑圧に耐えきれず開き直り暴力を開花させたシンジはその腕で使徒に吸収された綾波レイを救ったと思いきや、それがサード・インパクトを引き起こしてしまう。その事実に気づかぬまま、14年の昏睡状態から目覚めたシンジ。全てを知る、関係者は長い時をかけて蓄積されたシンジに対する嫌悪を彼にぶつける。あれだけプライベートゾーンに入ってきたミサトは長官に昇格しており、「あんたはエヴァに乗らなくていい。お願いだから何もしないで。」と彼を拒絶する。アスカは、キツくシンジに当たり散らす。でも、全員がサード・インパクトのプロセスをトラウマに感じており心の奥に隠している為、断片的にしかシンジに真実を伝えない。

そんなシンジは、突然現れた綾波レイが乗っていると思われるエヴァに乗り込み逃走する。逃走先は、ある種彼の楽園である。綾波レイ、父ゲンドウ、そして全てを受け入れてくれる美男子カヲルがいる。静かなる世界でシンジはピアノを通じてカヲルとシンクロしていく。テレビ版におけるアスカとのシンクロシーンは、新劇場版ではカヲルとのシンクロに取って代わり、周囲の抑圧に耐えきれなくなったシンジの内なるユートピア表現として機能する。ある種のイマジナリーフレンドとして現れる「破」で虚無を返すイマジナリーフレンドとして機能したレイと対極の存在だ。

しかし、自問自答するとやがて自らの汚が露呈して来る。自己嫌悪に陥るのだ。

本作では、空間の構図が丁度ダンテの「神曲」となっており、前2作から地獄巡りをしてきたシンジがようやく、地獄を突き抜け「煉獄」に到達するような仕組みとなっている。ただ、残念ながらミヒャエル・ハネケの映画のように凶悪な映画な為、そう易々と天国を魅せることはしない。突然、「オイディプス王」の悲劇へと爆走し始めるのです。自分が起こしたであろうサード・インパクトを認められずに、カヲルの「やっぱりやめよう」という言葉も聞かずに槍を抜く。するとフォース・インパクトが発生する。破壊神となって全てを混沌の淵に陥れるエヴァを見て、彼はようやく自分がしたことと対峙するのです。

そしてオイディプス王が自分の罪を認め、両眼を潰し、ホームレスになるように、シンジの分身であるカヲルは自ら命を経ち、魂を失ったシンジは荒野に佇む。

そう考えると新劇場版は、一人の少年が周囲の抑圧に耐えきれず開き直って暴力を炸裂させる。その暴力が持つ代償とどう向き合うのか?をテーマにした代物だと解釈することができるでしょう。なら、『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』は「神曲」における「煉獄編」と「天国編」を描き、シンジの悔悟と浄化の物語となるのではないでしょうか?

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※映画.comより画像引用

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