すずしい木陰(2019)
監督:守屋文雄
出演:柳英里紗
評価:75点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
皆さんの2020年映画館納めは何ですか?
私は『すずしい木陰』にしました。映画忘年会した際に『セノーテ』と本作どちらをベストに入れるか迷っている人がいて気になった。アップリンクで映画館納めするのは心苦しいのですが、直感がこの映画を観ろと訴えていたので事前調査せずに観ました。これが映画館納めにぴったりなモノホンのヤバい映画でした。
『すずしい木陰』あらすじ
脚本家や俳優として活躍し「まんが島」で監督デビューも果たした守屋文雄が、木陰で寝ている女の子の姿をとらえ続けた長編映画。物語らしいことは何も起こらず、女の子がただハンモックに揺られて寝ているだけにもかかわらず、そこで何かが起きている。何が起きているのかを観客が見つけていく。寝ている女の子を演じているのは、「チチを撮りに」「ローリング」などのほか、守屋監督の前作「まんが島」にも出演した柳英里紗。
※映画.comより引用
すずしい木陰、うるさい木陰、まぶしい木陰
ポスターを見る限り、MUBIにアップされているナマケモノや鳥、象のスピリチュアル系実験映画かなと思う。だが、5分くらいハンモックに横たわっている女性を見せられて嫌な予感がした。
…まさか…あっ…アンディ・ウォーホル『眠り』をやろうとしているのでは?
そういう嫌な予感ほど当たるものである。『すずしい木陰』は96分ハンモックしか映さない映画のだ。そして目を凝らして見るとうっすら変わる「変化」が重要な作品なのだ。ジョン・ケージ「4分33秒」と同じことを映画でやってのけているのだ。ただ、今更ウォーホルやケージの真似をしてもただの二番煎じに見える。かといって、コンテンポラリーアートのように監督や俳優、場所に意味を持たせた作品なのか?と疑いつつも、その匂いは一切感じない。では、本作はただの自己満足に溺れた失敗コンテンポラリーアートなのか?それは「否」と断言できる。
うっすらと引き伸ばされた「変化」のエッジが凄まじいのだ。
癒しが広がる自然の中のハンモック、にもかかわらず周囲の音は騒々しい。セミや鳥、飛行機の轟音が女性を寝かせまいとしてくるのだ。視覚的癒しと、その対岸に配置する聴覚的騒音の不協和音を、突如止まる騒音、金属に滴る水の音色との極端な対比で持って表現するのだ。また、視界も段々と陽光が射し込んできて強烈な光の世界へと変貌を遂げていく。
すると段々と、目の前に映る女性は眠りの達人なのではと思うようになる。次から次へと彼女を寝かすまいと現れる自然との闘いの表象なんだと気づかされるのだ。そして、光の狭間から見える女性の足がドンドンと官能的になっていく。
確かに『セノーテ』と同列に位置する強烈な実験映画であった。
※映画.comより画像引用
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