『タイム』サンダンス映画祭2020監督賞受賞!ある黒人家族の肖像

タイム(2020)
Time

監督:ギャレット・ブラッドレイ

評価:65点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

サンダンス映画祭2020で監督賞を受賞し、アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞ノミネートに近い作品と思われる『タイム』がアマゾンプライムビデオにて配信された。監督のギャレット・ブラッドレイはNetflixで大坂なおみのドキュメンタリーシリーズを作っている人物で、今注目しなければいけないドキュメンタリー作家。彼女がある黒人家族の20年を捉えた。そんな話題作を早速観てみました。

『タイム』概要


Fox Rich fights for the release of her husband, Rob, who is serving a 60-year sentence in prison.
訳:フォックス・リッチは、60年の懲役刑を受けている夫ロブの釈放を求めて戦う。
IMDbより引用

サンダンス映画祭2020監督賞受賞!ある黒人家族の肖像

失われた《時間》。それはあまりにも重くのしかかる。フォックス・リッチは6人の息子を育てながら戦っている。彼女は懲役60年を言い渡された夫ロバートの為に戦っている、いやロバートが重い罪になっているのは白人至上主義が未だに蔓延しているからだ。何故、有色人種の刑が白人よりも重いのか?夫のために戦うことは、アメリカに蔓延る差別と矛盾を打破することに繋がっている。黒人が奴隷として扱われたあの時代から変わっていないのだ。そんな彼女に触発され、息子は法律家を目指す。法律を正しく解釈し、矛盾を是正することで、平等な裁判を、黒人が不利益を被ることを防ごうとするのだ。

本作は、戦いの中心にカメラを向けるのではなく、白黒に彩られたホームビデオ方式で断片的に刹那の幸福とヒリヒリとした閉塞感を語る。力強い抵抗のメッセージをボールドウィン的詩的演出で強烈に彩る。

特に注目すべき場面は、彼女が弁護士事務所であろうところに電話する場面。もうなんども電話しているのだろう。彼女の言葉には諦めがにじみ出ている。案の定、「ちょっと待っててくださいね」と担当者が出るまで待たされる。その間をカットすることなく魅せる。たらい回しされる、軽くあしらわれる電話のドライさが画面の外側にいる観客にまで伝わってくる。ようやく担当者が出る。明らかに対応する時間があるにもかかわらず、「来週電話かけてね」とあしらわれる。彼女は時間を失ったのだ。その痛みを担当者は知らない。黒人はそういった地味ながらも大きな痛みと時間損失を背に生きていることがよく分かるショットであり、これだけでっもこの映画のレベルの高さが伺えます。

今、Netflixでベトナム戦争の抗議運動を扱った『シカゴ7裁判』が配信されている。こちらも黒人に対する差別が描かれているのだが、あちらは間を軽視してセリフで押し切っていた。是非とも『タイム』と比較してほしい。実際の差別による苦痛は間や時間が重くのしかかってくるものなのだから。

※Varietyより画像引用

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