【myfff2020】『カブールのツバメ』フランスで評判のこのタリバンの片隅に

カブールのツバメ(2019)
Les hirondelles de Kaboul

監督:ザブー・ブライトマン、エレア・ゴべ=メベレック
出演:ジタ・アンロ、スワン・アルロー、シモン・アブカリアンetc

評価:55点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

今年もマイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルの季節がやって来ました。昨年フランス映画祭で観逃した『カブールのツバメ』を観てみました。俳優にして作家のジャン=クロード・ドレ娘であるザブー・ブライトマンとアニメーターのエレア・ゴべ=メベレックがアルジェリア人作家ヤスミナ・カドラが書いた同名小説を映画化した作品。タリバン政権下、音楽などの文化が統制され、私刑が横行している社会で生きる夫婦を描いている。

AlloCinéのインタビューによると新鋭エレア・ゴべ=メベレックにとってこの企画は相当な負荷となっていたので、演出はザブー・ブライトマンが担当したことです。演劇論にも明るい彼女は俳優の動きを通じて、アニメに動きを投影させていきました。ザブー・ブライトマンは残酷な画を観ることなくリアリズムを描くツールとして水彩画のようなアニメ手法を取り入れていきこの作品が誕生しました。

『カブールのツバメ』あらすじ


1998年夏、アフガニスタンのカブールはタリバン勢力の支配下に。
ズナイラとモーセンのカップルは、暴力と悲惨な現実の中でも希望を持ち続けていたが、ある行動が災いし…。
2019年、カンヌ国際映画祭ある視点部門コンペティション出品。
※フランス映画祭2019より引用

フランスで評判のこのタリバンの片隅に

イスラム原理主義により、欧米文化を批判し、男尊女卑が蔓延るタリバン。白い靴を履いていただけで、女性は壁に立たされ市民に鞭打ちされる世界。当時のタリバンは、戒律こそが法であり、戒律に少しでも逸脱していようものなら私刑が許される世界であった。それはジョージ・オーウェルもびっくりなディストピア。不寛容の暴走により、街でサッカースタジアムで人々が集められ、石を投げたり、時には銃殺する。それ自体が娯楽となってしまう狂気が描かれている。禁欲的に娯楽を制限することによって、原始的暴力性が呼び覚まされ、修羅の国となる様がここで描かれているのだ。繊細ながらも、強烈強固なショットが映し出される。かつては賑やかだった映画館も今や廃業朽ち果てた姿になっている様に悲しくなる。

ただ残念なことに、今や『この世界の片隅に』がある世界軸。市井の生活の緩くもストイックで残酷な世界を描いた傑作があるので、この作品はいかんせんパワー不足である。Le Mondeが「ほんの一握りの限定されたいくつかの視覚的ショットによる発見を除けば、『カブールのツバメ』は、そのグラフィックの独創性やその台本によっては輝いていない。」と難色を示していたのと全く同じ感情が包み込んでしまった。石を投げて女性を殺す場面やカブール越しに見える世界といった描写は面白いものの、よくあるイスラム世界批判映画の域を出ておらず陳腐だったなと思い、割と残念でした。

ブロトピ:映画ブログ更新
ブロトピ:映画ブログの更新をブロトピしましょう!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です