カイエ・デュ・シネマベストテン2019発表 1位はやはり『イメージの本』

カイエ・デュ・シネマベストテン2019発表

当ブログが毎年追っているフランスの捻くれ映画雑誌カイエ・デュ・シネマがベストテンを発表しました。フランスではテレビ放送、インスタレーション上映となったゴダールの『イメージの本』が案の定1位となりました。ただ、今年のカイエ・デュ・シネマベストテンは若干映画秘宝よりのランキングとなっており、またキネマ旬報方式、読者選出(昨年もやっていたっけ?)も発表されていました。

それではみていきましょう。

カイエ・デュ・シネマベストテン2018発表 今年はゴダールの『イメージの本』…ではなく謎の監督マンディコの『ワイルド・ボーイズ』
カイエ・デュ・シネマ公式サイト
※下線の作品はブンブンのレビューに飛べます。

1.イメージの本(Le livre d’image)

監督:ジャン=リュック・ゴダール

テン年代ベストテンにも選出されたジャン=リュック・ゴダールの映像コラージュ『イメージの本』が案の定1位となりました。昨年のカンヌ国際映画祭でスペシャル・パルムドールを受賞しながらもフランス公開は2019年であり、それもテレビ放送とインスタレーション上映という限定的な上映スタイルがとられました。もはや現代アートになっているゴダールの新作が、カイエの人々に刺さらない訳がなかった。

2.パラサイト 半地下の家族(Parasite)

監督:ポン・ジュノ
出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョンetc

フランスでもスマッシュヒットし、フランスの批評家のほとんどが満点評価をつけた『パラサイト 半地下の家族』が選出されました。
カイエは、「傑作『殺人の追憶』、『母なる証明』のように不安、予測不能、神経症によって動揺し、不確実性に満ちた素晴らしい映画です。」と絶賛していました。

3.シノニムズ(Synonymes)

監督:ナダヴ・ラピド
出演:トム・メルシエール、カンタン・ドルメール、ルイーズ・シュヴィヨットetc

イスラエルからフランスに移住した監督の内面を投影し、ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞した作品がランクイン。常に、フランス語を呟きながら、ひたすらにフランス人になろうとする男。ヘブライ語を棄て、イスラエル人としてのアイデンティティを捨てようとする移民の心情を捉えた作品となっています。フランス映画祭で日本でも上映されたのですが、日本ウケは若干悪く、日本公開は少し難しそうです。

4.Bacurau

監督:クレベール・メンドンサ・フィリオ
出演:ウド・キア、ソニア・ブラガ、ジョニー・マースetc

2016年の『アクエリアス』ですっかりカイエのお気に入り監督となったブラジルのクレベール・メンドンサ・フィリオ最新作。『ホステル』+『七人の侍』と囁かれている、ブラジル地方都市の不気味な戦いを描いた作品。政治物語として偉大だとカイエは語っています。

5.Jeanne

監督:ブリュノ・デュモン
出演:ファブリス・ルキーニ、Lise Leplat Prudhomme、アントワン・ドゥーシェetc

毎作、ベストテンにランクインする鬼才ブリュノ・デュモン最新作にして『ジャネット、ジャンヌ・ダルクの幼年期』続編。ミュージカル要素を廃して、ロベール・ブレッソン的ストイックな構図で大人の欺瞞を指摘した、ジャンヌ・ダルクものの傑作の模様。ブリュノ・デュモン作品はアンスティチュフランセ上映以外観られる機会がないので、是非ともカイエ週間で上映してほしいものです。

6.Pain & Glory

監督:ペドロ・アルモドバル
出演:ペネロペ・クルス、アントニオ・バンデラス、アシエル・エチェアンディアetc

『ジュリエッタ』と蝶番の関係にある本作は、ペドロ・アルモドバル版『8 1/2』。スランプに陥ったろう監督が過去を反芻することで、前へ進もうとする話。ペドロ・アルモドバルといえば、癖の強いタッチで毎回独特な作品を生み出していくのですが、そんな彼にもスランプがあったのかと驚かされる作品であります。

7.レ・ミゼラブル(LES MISÉRABLES)

監督:ラジ・リ
出演:ダミエン・ボナール、ジャンヌ・バリバール、アレクシス・マネンティetc

昨年のカンヌ国際映画祭を席巻させた現代の『レ・ミゼラブル』。黄色いベスト運動や、2019年多発するデモの熱気が反映されたであろう本作は、フランス人の心にクリーンヒットした模様。日本公開は意外と早く来月2/28。

8.運び屋(The Mule)

監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、ブラッドリー・クーパー、ローレンス・フィッシュバーンetc

久しぶりにイーストウッド作品が選出。カイエは、イーストウッド映画で長らく観られなかった、緻密に変化する物語に感銘を受けたようです。ちなみに、本作は恐らくキネマ旬報ベストテンで1位になることでしょう。

9.ジョーカー(JOKER)

監督:トッド・フィリップス
出演:ホアキン・フェニックス、ロバート・デ・ニーロ、サジ・ビーツetc

カイエ初!アメコミ映画がベストテン入りを果たしました。カイエにとっても相当衝撃的な作品だったようで、CGゴリゴリのハリウッド大作が作られる中、大作でありながら小さな映画を作れるハリウッドの希望に圧倒された模様。

10.アイリッシュマン(The Irishman)

監督:マーティン・スコセッシ
出演:ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシetc

カイエは保守的な映画雑誌に見えて、頻繁に新しい映画の形論を掲載してきている雑誌である。2019年12月号では、長尺映画論として、『ツイン・ピークス The Return』のようなテレビシリーズを映画として考察対象に入れていたりします。そんなカイエももうそろそろNetflix映画と思ったのでしょう。スコセッシの3時間以上に及ぶ大作を選出しました。

カイエ読者ベスト

カイエ・デュ・シネマ読者のベストは下記です。

1.パラサイト 半地下の家族
2.Pain & Glory
3.レ・ミゼラブル
4.シノニムズ
5.アド・アストラ
6.Bacurau
7.The Traitor
8.ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
9.運び屋
10.Jeanne

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