【ブンブンシネマランキング2019】新作部門1位はペドロ・コスタ渾身の『ヴィタリナ』

11.インディアナ州モンロヴィア(Monrovia, Indiana)

監督:フレデリック・ワイズマン

フレデリック・ワイズマン悟りの境地。ただ、日常を切り貼りしているだけなのに強烈なメッセージが滲み出る驚異の作品だ。

インディアナ州といえば、大統領選挙において重要な拠点だ。アメリカではウィナー・テイク・オール方式を取っており、州ごとに投票で支持率が高かった候補者にその州の全ての票が入る。インディアナ州は人口が他の州と比べ多いので、選挙の際に重要拠点となっている。そしてドナルド・トランプは2016年の大統領選挙の際に保守的な公約を掲げ、インディアナ州をはじめとした地方都市の人気をがっつりと掴み勝利した。またインディアナ州は、銃所持が合法の州である。そう考えると、インディアナ州は差別的で野蛮な町なのでは?と実際に、合法的に銃を所持できる州であることもありそういった描写を期待してしまう。

しかし、映画は何も起きないのだ。

学校は治安が良いし、銃器ショップは男たちのまともな会話が展開される。トラクターの競りは平穏無事に終わるし、役所の会議も建設的な議論しか映し出されない。

ワイズマンは都市部の人、知識人が抱く無意識なる先入観や差別心を、無でもって暴いて魅せたのだ。

それでもってその無が全く飽きない面白さを秘めている。これはトンデモナイ作品でした。

12.愛がなんだ

監督:今泉力哉
出演:岸井ゆきの、成田凌、深川麻衣、若葉竜也etc

これぞ日本的恋愛の肖像!
友達以上恋人未満の居心地の良さに陶酔するも、その中途半端な恋に悶々とする者の繊細な心を今泉力哉は見事拾いあげて魅せた。そして恋に焦がれて盲目的になってしまう女性の行動を鋭いショットで見せつけてくる演出の妙で、ドンドン映画を魅力的に仕上げていった。

男の返信を待ち、仕事中もスマホを弄り、カップのそこについたコーヒーの跡の連続が時間の経過を表す。そして、彼女が恋愛のせいで会社をクビになってしまう様を敢えて描かないことで、彼女にとって仕事などどうでも良いことであると表現してみせる。他の監督であったら描いてしまうところをスルーし、一貫して中途半端な恋情にフォーカスを当てていくストイックな作りにもすっかり惚れ込んでしまった。

13.アベンジャーズ/エンドゲーム(Avengers: Endgame)

監督:アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ
出演:ロバート・ダウニー・Jr、クリス・エヴァンス、マーク・ラファロ、クリス・ヘムズワース、スカーレット・ヨハンソン、ジェレミー・レナー、ドン・チードル、ポール・ラッド、ブリー・ラーソン、ブラッドリー・クーパー、カレン・ギラン、ベネディクト・カンバーバッチ、トム・ホランド、チャドウィック・ボーズマン、クリス・プラット、ゾーイ・サルダナ、デイヴ・バウティスタ、ヴィン・ディーゼル、ポム・クレメンティエフ、ポール・ベタニー、エリザベス・オルセン、エヴァンジェリン・リリー、トム・ヒドルストン、アンソニー・マッキー、セバスチャン・スタン、グウィネス・パルトロー、ジョン・ファヴロー、タイ・シンプキンス、コビー・スマルダーズ、サミュエル・L・ジャクソン、ジョシュ・ブローリン、真田広之etc
(卒業式映画なんで、できるだけ多くのキャストを掲載しています)

今となっては『カサブランカ』は不朽の名作であるが、製作当時はまともに脚本が完成しておらず行き当たりばったりで作られていた。その行き当たりばったりが奇跡を起こしたわけだが、この『アベンジャーズ/エンドゲーム』はまさしく2010年代の『カサブランカ』ポジションであろう。2008年の『アイアンマン』から始動したMCUは、10年という長いスパン、常に戦略を立ててゴールに向かっていく行き当たりばったりな企画であり、初期の頃は、定期的に公開されるハリウッド大作といった形で軽視されていたのだが、今や『ブラックパンサー』がアカデミー賞作品賞にノミネートされるまでに進化を遂げた。日本においては、バラエティ番組で『アベンジャーズ』のテーマが流されるまでに人々に普及していった。そんなMCUの最終回は映画史上類を観ない、最高の御都合主義による快感を与えてくれた。

サノスの指パッチンで消えた人々が最後にあらゆる手段でもって一箇所にアッセンブルし、サノスと対峙する。この無茶苦茶具合は、今年のワースト1に選んだ『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』と大差ないのだが、本作の場合前半2時間で緻密に脚本を積み上げていったからこそ許されるものとなっている。各ヒーローが過去と対峙して、それを乗り越えていくのだ。それはDCと違い、マーベルは人を描いており、人の心の弱さが最大の敵になっていることを表している。

人情を持った合理的の鑑となったサノスに敗北した彼らは、暴君時代のサノスと対峙することでしか未来を築けなかった。しかし、妥協をできるのが人類であり人類の心を持った宇宙人なのである。都合が良すぎるかもしれないが、マーベル映画が10年積み上げてきた哲学を見上げた時にこれは最強の傑作であった。

14.スパイダーマン:スパイダーバース(Spider-Man: Into the Spider-Verse)

監督:ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン
声の出演:シャメイク・ムーア(小野賢章)、ヘイリー・スタインフェルド(悠木碧)、ジェイク・ジョンソン(宮野真守)、ニコラス・ケイジ(大塚明夫)、キミコ・グレン(高橋李依)、ジョン・ムレイニー(吉野裕行)etc

アメコミからノワール、カートゥーンに萌え絵が一箇所に集結し、遠くにいるヒーローに思いを馳せつつ誰しもがヒーローになれる世界を描いて魅せたこの高密度な作品は、アニメーションの限界点に到達した。絵のタッチが違う存在を違和感なく一箇所に凝縮する巧みなパワー。そしてヒーロー映画が度々描いてきた多様性の表現として、新たなベクトルを見つけた新規性にすっかり興奮しました。

また、マイルスや愉快な仲間たちと会いたい!

15.ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス(Ex Libris: The New York Public Library)

監督:フレデリック・ワイズマン

図書館は単に本を貸す場ではない!情報格差を埋める場所だ!

日本の政治家はそんなことを全く考えてないだろう。ニューヨーク公共図書館の表裏を余すことなく魅せていく本作は、図書館のあらゆる可能性とその可能性を実現するために知恵を絞る者たちのドラマを並列に魅せていく宇宙である。Wifiを貸したり、友達がいない人の為にコミュニティを作ったり、プログラミング教室なんかを開催したりする果てしなく深い世界に図書館好き、本屋好きのブンブンは釘付けでした。

びっくりしたことに、外のパレードシーンで男性器のコスプレした人がうっかり映ってしまい、それをよしとするお茶目さ込みで面白かった。

16.運び屋(THE MULE)

監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、ブラッドリー・クーパー、ローレンス・フィッシュバーン、アンディ・ガルシアetc

この作品のイーストウッドはブンブンの将来を映す鑑のようで、心に刺さりました。園芸に命を捧げ過ぎて、家族に見放された男が、飄々と運び屋を務める。明らかに怖いおっさんだらけの場所に、ヒョイっと現れては間抜けな顔しながら仕事を引き受ける。例え、チンピラたちが喧嘩を始め一触触発な状態になってもリップクリームを塗る余裕を魅せるユーモアにどんどんこの運び屋のことが好きになっていきました。

そして運び屋を追う者との奇妙な交差の美しさにも惹き込まれ、ブンブンもイーストウッドのようなイカした爺さんになりたいと思う一方、趣味に没頭し過ぎて全てを失わないようにせねばと反面教師として本作を観ました。

17.ディアスキン 鹿革の殺人者(Le daim)

監督:カンタン・デュピュー
出演:ジャン・デュジャルダン、アデル・エネル、アルベール・デルピーetc

誰しもが認められたいと思っている。SNS時代により、人々の承認欲求が肥大化した。2019年は『イエスタデイ』や『The Art of Self-Defense』といった承認欲求をテーマにした秀作が沢山公開されたが、『ラバー』でお馴染み鬼才カンタン・デュピューが放つ承認欲求ものは悩殺な大傑作であった。

ジェケットに取り憑かれたしょぼく虚言癖のある男は、大金叩いて買ったジャケットを誰も褒めてくれないことから、幻覚を引き起こし、ジャケットが「俺以外のジャケットなんかいなくなってほしい」と語り始めるようになっていく。そして、小さな町の住人からいかにしてジャケットを奪うかに取り憑かれていく。

カンタン・デュピューならではの、頭のおかしい展開の下で、承認欲求の肥大化による狂気が重厚に描かれていく。このユニークな語り口が素敵でした。

18.ミッドナイト・トラベラー(Midnight Traveler)

監督:ハサン・ファジリ

カメラが小型化し、誰しもスマホがあれば映画を撮れる時代になりました。その結果生まれたこの難民ドキュメンタリーは、難民がどのように発生してどういったプロセスでヨーロッパに渡っていくのかを捉えた貴重な作品であった。タリバン政権に殺害を予告された映画監督はスマホ3台で撮影しながらタジキスタン、そしてブルガリアへと亡命していく。しかし、亡命先のブルガリアでは攻撃党の連中の暴力がすぐそばにまで迫っており脱出しなくてはならない。警察は、しっしと自分たちを追い出していく。今まで、どこからやってきたかぐらいしか分からなかった難民の軌跡を、映画的スリルでもって描いた渾身の作品でした。

日本公開してほしいなー

19.シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション(Nicky Larson et le parfum de Cupidon)

監督:フィリップ・ラショー
出演:フィリップ・ラショー、エロディ・フォンタン、タレック・ブダリetc

漫画の実写版、特にアクション漫画の実写化は日本がやろうとハリウッドがやろうと基本的に失敗するもんだ。しかし、ここに完璧すぎる正解が登場した。『シティーハンター』オタクのフィリップ・ラショーがはるばると原作者の許可を撮り、製作された本作は圧倒的原作再現っぷりと、スキンヘッド愛に満ちた傑作フレンチコメディの文法を化学反応させた楽しいの暴力であった。映画に必要な要素だけを足しているので、ノイズはほとんどなく、XYZの依頼を受けて、アスファルトを斬りつけて終わる軸を最後まで脱線させなかったところに感動すら覚えた。日本ではほとんど吹き替え版での上映でしたが、これは原語バージョンでも観たいものです。

20.映画 ひつじのショーン UFO フィーバー!(Shaun the Sheep Movie: Farmageddon)

監督:リチャード・フェラン、ウィル・ベッカー

台詞なくして、『E.T.』を描けるのか?

アードマン・アニメーションズが描く、オマージュだらけのキッズ映画は、常時斜め上を行くオマージュの数々で映画オタクを興奮させる一方、一貫して子どもに映画の面白さを伝えることに注力しているため、「楽しい」しかない傑作であった。ネタの一つ一つは一発芸なのに、それが意外な形で伏線回収されていく様子に脚本の鋭さを感じ、またひつじの間抜けさとルーラ、そしてロボットの可愛さとのマリアージュに癒されまくりました。

アードマン映画は公開されるや否やすぐに上映終了となってしまうため、なかなか劇場で観れないのですが、今回は観て大成功でした。

最後に…

来年はクレベール・メンドンサ・フィリオの『BACURAU』やセリーヌ・シアマの『Portrait of a Lady on Fire』、カバルダ・バルカル共和国出身監督カンテミール・バラゴフ『Beanpole』、アルベール・セラ『Liberté』、『レ・ミゼラブル』といった今年のカンヌ国際映画祭で話題になった作品を観れたらなと思っています。そして、ブンブンが尊敬する済藤鉄腸(@GregariousGoGo)さんよりも先に未知なる面白い監督を発見できたらなと思っています。

来年もいい映画と出会えることを祈りつつ、ベストテンの発表を終わります。

チェブンブンシネマランキング2019年新作部門

1.ヴィタリナ
2.アド・アストラ
3.TOURISM
4.Mektoub My Love: Canto Uno
5.パラサイト 半地下の家族
6.KNIFE + HEART
7.イサドラの子どもたち
8.THE GREEN FOG
9.LETO
10.春江水暖
11.インディアナ州モンロヴィア
12.愛がなんだ
13.アベンジャーズ/エンドゲーム
14.スパイダーマン:スパイダーバース
15.ニューヨーク公共図書館
16.運び屋
17.ディアスキン 鹿革の殺人者
18.ミッドナイト・トラベラー
19.シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション
20.映画 ひつじのショーン UFO フィーバー!

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4 件のコメント

  • さすがのランキングですね。アド・アストラのジェームズ・グレイはシネフィル評価の高い人だったんですね、知らなかった。早くパラサイト見に行かなければ。
    私も2019年で選んでみました。見てないものもたくさんあるけど・・・。
    コメントは反映されないんだなとがっかりはしたんですが、もうDMと割り切って書き込ませていただきます。不快、迷惑でしたらすみません。

    メジャーベスト5  1位:天気の子  2位:トイ・ストーリー4  3位:ブラック・クランズマン  4位:ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド  5位:アベンジャーズ/エンドゲーム  次点:ジョーカー 運び屋 アイリッシュマン

    マイナーベスト5  1位:旅のおわり世界のはじまり  2位:TOURISM  3位:象は静かに座っている  4位:岬の兄弟  5位:向こうの家  次点:ひかりの歌 よあけの焚き火 よこがお ワイルドライフ 誰もがそれを知っている ある女優の不在 帰れない二人

    1位:天気の子。新海氏の全力のメッセージに感動。所謂セカイ系と呼ばれる作風自体も、作中でツッコミが入るなど独自の深化が見え興味深い。前売り券の不売や、企業のPPなど興行面において正直嫌味を感じる部分もあるが、ストーリーテリングの剛腕ぶりは素直に認めるべき。

    2位:トイ・ストーリー4。哲学的テーマに脱帽。3で完璧に終わったと思いきや、その先が。玩具かゴミかという二者択一を脱構築し、生きるということの可能性を色鮮やかに描いてくれた。白と黒のその間に無限の色が。続編が常に最高作になるという正真正銘の化け物シリーズ。さすがにもう5はいい。

    3位:ブラック・クランズマン。黒人問題がより苛烈を極めている昨今、黒人映画もまた最大の活況を見せているのだから、世の中捨てたもんじゃない。そんな中、黒人映画の古強者である彼が堂々の傑作をものしてくれたのが非常に嬉しい。重くなりすぎない軽快な語り口。ラスト、懸案の不快事項だった差別主義者の同僚警官をやんわりと懲らしめて気持ち良くハッピーエンドと思いきや、これは昔話じゃないんだとガツンとやってくれる。伝える、怒らせる、考えさせるという事において非常に秀でた作りをしていると感じた。

    4位:ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド。正直言えば、最近のタランティーノはイデオロギーに傾きだしているせいでバイオレンス映画としての強度に不安を感じる。ジャンゴはバイオレンスとしては微妙な出来だろう。さて、今回。往時の描写の濃厚な愉快さは今までになかった要素で、中盤の牧場シーンの緊張感はお得意の要素だと言える。結末はイングロリアスで1回やっているので、そこまで驚きはないが、全編明るい作風だったことも手伝い暴力描写がややトゥーマッチに感じられた。あそこはもっと、会話を長く緊張感を持続させたのち一瞬で決めた方が良かっただろう。バイオレンス映画で重要なのは、暴力描写そのものではなくて、暴力により一瞬で人が居なくなる恐怖そのものの方なのだ。

    5位:アベンジャーズ/エンドゲーム。サノスのキャラクター描写の深さと説得力は、勧善懲悪ものの悪役として今までになかった革新性がある。そしてまた全てのキャラクター達が深い理解と愛情の基に描かれていることが伺える。これが、そのまま物語の強度に繋がり、荒唐無稽で複雑なお話に観客がついて来られる下地となっているのだと思う。

    次点。ジョーカーは確かに素晴らしかったが、冷静に振り返ると意外なまでにジョーカーは自分の苦悩をそのまま吐露していて、分かり易すぎるきらいがある。しかし、どこまでが主人公の妄想なのか分からない物語構造の魅惑で、この短所でありかつ長所の泣き所がそのまま生かされたのだろう。キリスト復活のラストなどもやりすぎな気がするが、全て妄想として片付ければ納得できるのが、ずるいような面白いような。
    運び屋、アイリッシュマンは老いのスローさが前面に出てはいるものの、往年の切れ味も健在で、これが枯淡の境地かとしみじみとさせられる。

    1位:旅のおわり世界のはじまり。レベル100のアイドル映画。ドキュメンタリーを撮るよりも前田敦子を丸裸にしたんじゃないかという恐ろしさを感じる。取調室での「すみません」の言い方は監督のディレクションがあったのでは。

    2位:TOURISM。傑作「大和(カリフォルニア)」の後でリラックスして撮ったように思える1作。前作の舞台であった「日本の都市部郊外」というものが、そのまま若者のキャラクターとして擬人化されて海外旅行をしているといった感じ。宮崎監督は、このまま伸び伸びと撮り続けアサイヤスのような大物になってくれないかなと期待。

    3位:象は静かに座っている。結局結構好きだったなと思いました。あの淡い色調とか。カメラワークと青さはやっぱり気になりますが。

    4位:岬の兄弟。過激な話なんですが、主演の2人のお芝居を丁寧に撮ってくれたから不快なものにはならなかったんだと思う。次回作も期待。

    5位:向こうの家。丁寧に作られた若手の作品。わたしたちの家といい、邦画の若手は家に注目しているのだろうか。出来れば中の間取りまで把握できるぐらい空間を追及して欲しい。その意味では「ねえ!キスしてよ」は凄かった。

    次点。普通一般のシネフィルならひかりの歌を、もっと上位に持ってこないといけないとは自分でも思うが、2章の扱いが気になった。容姿の美しい若い女性がそのことで男に求められる苦悩を描いているのだが、映画としても彼女に短パンでランニングさせセクハラまがいの歌が出てきたりと居心地が悪すぎる。観客に対する挑発とも受け止められるが、そのくせチラシでもやはり美しい彼女が一枚看板だから、ちょっと理解に苦しんだ。よあけの焚き火は、能楽、狂言の言葉の面白さがストレートに良かった。ワイルドライフは、ルビースパークスの2人がしっかりとした文芸映画を作ってくれたなと満足。もう主演の男の子の顔が2人の本当の息子のように見える。残り3作はもう世界的には巨匠の3人の間違いないクオリティの映画なので、マイナーの次点というのも失礼だとは思うのですが挙げておきたかった。特に、ある女優の不在は、ある程度予想覚悟はしていたけど、もう無茶苦茶キアロスタミで本当に驚いた。でも中途半端ではないキアロスタミ愛があってこうなっているのだから、良い後継者に恵まれたんだなとは思いますね。

    • 通りすがりさん、コメントありがとうございます。最近は、本業の方が忙しいのと、迷惑コメントが多いのであまりみれていません(申し訳ありません)。

      ただ、通りすがりさんの熱量あるこのコメントは、返信せねば!と思いました。2019年は日本のインディーズ映画に力強い作品が多かったと思います。ただ、この手のインディーズ映画は上映劇場が限られていたりするので、『ワイルドツアー』や『向こうの家』といった作品を見逃してしまいました。恐らく観たら、ベストテンに入れていたであろう『月夜釜合戦』も見逃してしまいました。

      通りすがりさんのベストテンは、非常にバランスが取れており、私の理想とするシネフィルのベストテンに近いものがあります。シネフィルになればなるほど、ベストテンがマニアックな映画だらけとなり、大衆映画を軽視しがちです。自分は、そういう嫌なシネフィルにはなりたくないなと思っており、『アベンジャーズ/エンド・ゲーム』や『シティーハンター THE MOVIE』といった娯楽作品も面白ければ積極的に評価していくことにしています。最近だと、『カイジ ファイナルゲーム』がなかなか攻めた作品で面白かったです。

      ということで、2020年もよろしくお願いします!

  • あ、良かった、返信。ありがとうございます。

    そういえば、月夜釜合戦がありましたね。不思議な雰囲気の活劇でした。

    チェ・ブンブンさんは相当若いのに、凄まじい数をご覧になっているのだろうなと頭が下がります。体感的にはほぼすべて見ているんじゃないかと思うし、日本のシネフィルはほとんどの人がブンブンさんのブログをチェックしているんじゃないかと思います。自分はだいたいブンブンさんの10歳ぐらい上なんですが、見ている数では全く比べ物にならないでしょう。であるのに老婆心から、物申したくなってしまうという厄介読者ですね、ホント。

    バランスの良いと仰っていただきましたが、個人的にもシネフィルのマイナーを擁護、発掘したいというオタク的側面は良いと思うんですが、メジャーは腐すという天邪鬼的側面はどうかと思ってしまうんですよね。今どれほどメジャーな映画も、いつかは若い人は誰も知らない作品となる。例えばカサブランカを評価するシネフィルはほとんどいないけれど、本当にそれで良いのだろうか?とか。さすがにカサブランカ級ならば、忘れ去られる事はないと思うけど、メジャーだから無視して安心というのも違うはず。どの映画も良いところがあって素晴らしいとする仏の顔も、見なくてもいい映画と見るべき映画の峻別は厳然とあるとする鬼の顔、どちらも映画評論家には必要だと思います。娯楽作品と同程度には芸術映画にも別にあっても無くても良い作品というのはある筈。むしろ娯楽映画は時間の試練により自然と篩に掛けられるのだから気にしなくても良いのだけれど、芸術映画は3大映画祭などにより偽物が祭り上げられて後世に残ってしまうというような危惧があるのではないかと思っています。カンヌは本当にハッタリに弱いから困る。柳下毅一郎は何故あんなにもC級一般娯楽邦画を叩くのか。只の弱いもの虐めにしか見えない。3大映画祭ノミニーから選んで、本当に下らないものをこそ叩くべきだ。

    また長文になってしまいました。すみません。あまりご無理はなさらずに・・・とは言っても2020年も期待しています。やっぱり殆んど見てるんだろうな、と。

    • 通りすがりさん

      おはようございます。
      中学時代から、映画に嵌りいつの間にか、ここまできました。
      最近、思うのはTSUTAYAがNetflix等のサブスクリプションに押されて、レンタルビデオ屋に行く文化がなくなってしまっていることです。これは、レンタルビデオショップに行って偶然面白そうな映画に出会う機会が激減したことを意味します。NetflixやAmazon Prime Videoは確かに、映画の本数も多いのですが、機械学習でその人が好きそうな映画しか提案してきません。また、マーケティングの観点から、古い日本映画・外国映画はあまり配信されていません。それによって、古い映画にアクセスする機会が失われつつあります。ただ、どんな映画も古い名作を下地に強いていたりする。例えば、今話題の『パラサイト 半地下の家族』はキム・ギヨンの『下女』やジョゼフ・ロージーの『召使』を下地にしています。そういった作品にアクセスできるように、魅力的な文章を書くように日々文章を鍛錬させていってます。

      通りすがりさんがおっしゃっていた3大映画祭問題は、私も強く感じています。3大映画祭は、アカデミー賞とは違いある意味少数決です。少数決だからこそ、芸術性と向かい合って欲しいのですが、最近は貧困問題さえ描いておけば最高賞が獲れてしまう状態に辟易しています。それを逆手に取り、芸術性とエンターテイメント性を両立させた貧困映画『パラサイト 半地下の家族』は別として、『わたしは、ダニエル・ブレイク』や『ディーパンの闘い』がパルムドール獲ったことは非常に問題だと感じています。

      長文になりましたが、ここまで熱狂的に応援されている方がいる以上、さらなる飛躍を目指して頑張ります!
      (来月、映画検定1級を受験するので、頑張って合格の切符掴んでいきます)

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