フォードvsフェラーリ(2019)
英題:Ford v. Ferrari
仏題:LE MANS 66
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:マット・デイモン、クリスチャン・ベール、ジョン・バーンサルetc
評価:80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。東京国際映画祭で、アカデミー賞ノミネート候補と言われている『フォードvsフェラーリ』を観てきました。本作は1966年フォードが広告宣伝として、レースで優勝することを掲げて活動する中で生じたフェラーリとの対決を描いた作品だ。監督は『LOGAN ローガン』で骨太なアクションを撮れることを証明したジェームズ・マンゴールド。意外なことにマット・デイモン、クリスチャン・ベール初共演という熱いこととなっていた。そして実際に観てみると、これが2時間半の長さを全く感じさせない痛快スポーツドラマとなっていました。
『フォードvsフェラーリ』あらすじ
マット・デイモンとクリスチャン・ベールが初共演でダブル主演を務め、1966年のル・マン24時間耐久レースで絶対王者フェラーリに挑んだフォードの男たちを描いたドラマ。ル・マンでの勝利を目指すフォード・モーター社の使命を受けたカーエンジニア、キャロル・シェルビーは、絶対王者エンツォ・フェラーリ率いる常勝チーム、フェラーリ社に勝つため、フェラーリを超える新しい車の開発と優秀なドライバーの獲得を必要としていた。やがてシェルビーは、破天荒なイギリス人レーサーのケン・マイルズに目をつける。限られた資金と時間の中、シェルビーとマイルズは力を合わせて数々の困難を乗り越えていくが……。エンジニアのシェルビーをデイモン、レーサーのマイルズをベールがそれぞれ演じる。監督は「LOGAN ローガン」「ウォーク・ザ・ライン 君につづく道」のジェームズ・マンゴールド。
※映画.comより引用
ヤルかヤラナイの人生なら、俺はヤル人生を選ぶ
ライバル企業に勝つため、嫌な上司に勝つため、そして自分に勝つために技術を磨く。
働く者にとってこれほどまでに胸が熱くなるドラマはありません。全て手作り、芸術を追い求めるが故に破産に追い込まれたフェラーリに対し、大量生産のフォードは買収を試みる。フォードの目的は、レースに勝って名声を得ること。経営はできるが、スポーツかーのノウハウが乏しいフォードはフェラーリの技術が欲しかった。しかし、レース専門部署フェラーリ・フォードの運営を巡って、交渉が決裂してしまう。あとちょっとのところで手が届かなかった夢。それは野望へと変わり、フェラーリ打倒のための戦いの火蓋が切られる。
しかし、大企業には社内政治というものがある。目的は一つだが、そこへ向かうスタンスで別の戦いが勃発する。かつてレーサーだったものの、PTSDにかかり今は自動車工場の経営をしているキャロル・シェルビー。彼はフォードの依頼で、打倒フェラーリ、ル・マン24時間耐久レースで勝利するマシンの製造をすることとなる。そんな彼が相棒に選んだのは、荒くれのスピード狂ケン・マイルズだ。てやんでい口調のこの荒くれは、フォードの社風に合わないと何度もプロジェクトから外されそうになる。しかし、彼なしに目的を果たすことはできないと、シェルビーはあの手この手で社内政治を切り盛りし、最強のマシンを作り上げていくのだ。
モータースポーツといえば、サーキットで華麗に走る姿ばかりに目がいきがちだ。実際にこの手のジャンルの傑作である『ラッシュ/プライドと友情』もレースに重きを置いていた。しかし、本作はあくまで人間のドラマに力点を置いている。最高のマシンを作るためには、それを作る頭脳が必要。車に情熱を捧げる人々の対立や営みの末に生み出されている。それを『ソーシャル・ネットワーク』方式、常時早口、捲し立てるように展開していくことで、観る者も1960年代のフォード社員になったかのような興奮の坩堝に突き落とされていくのです。
1966年のル・マン24時間耐久レースの結果を調べるとわかるのですが、非常に映画化しにくいレース展開になっているのですが、それも男の決断として綺麗に脚本に落とし込んでいて最後まで楽しめる、興奮を切らすことなく2時間半駆け抜けることに成功していた作品でした。
ただ、少しパワープレイな作品だったことは否めない。本作は、フェラーリに勝つために技術を磨く作品であるのだが、脚本は人間を動かすことにばかり注力しており、技術がどのようにアップグレードされていったのかがイマイチわからない。それは、つまり時間の経過を上手く描けていないことへと繋がってしまい、結局どうしてフォードはフェラーリに勝てたのか?それは根性でしょう。という安易なものへと繋がってしまう要因となっていました。フェラーリから技術をいただこうとして失敗しているだけに、どのように欠落している技術を埋め合わせたのかといったところをしっかり描くことが重要だったのではないだろうか?また、レースシーンも、結構似たようなショットを繰り返しており、アクションの手数が異様に少なかったのも気になります。『LOGAN ローガン』であれだけ、様々なギミックを演出していたのにどうしたの?と思ってしまいました。
とはいえ、サイコーの作品であることには変わりありません。なるべく、大スクリーンで、IMAXで観ることをオススメします。
日本公開は2020年1月10日。
Amazon Prime Videoで配信中のドキュメンタリー『24時間戦争』も併せて観ると、きっと楽しいと思います。
おまけ:東京国際映画祭の不満
実は本作上映前に本作の字幕監修を行ったモータージャーナリストの堀江史朗と、映画ライター・よしひろまさみちによるトークショーが行われたのですが、これが酷かった。ネタバレできないという制約はあれども、「俺らはもう2時間半後に君たちが味わう興奮を知っているんだよね」と言わんげなトークしかしておらず、提示される事前情報もネットで調べれば簡単に出てくる浅いものをダラダラと語っているだけでした。折角モータージャーナリスト、つまりモータースポーツのプロをゲストに呼んでいるのであれば、上映後にモータースポーツ素人の映画ファンが見落としがちな部分について解説すべきだと思う。「車早くていいですね」なんてわかりきったことを我々は聴きたくないのだ。それに上映終了後だったら、トークショー聴きたくない人は退出できるのに、それを許さず強制的にどうでもいい会話に付き合わされる苦痛はかなりのものです。
おまけに、トークショー後のフォトセッションで、何故『フォードvsフェラーリ』のポスターを使わないのかも疑問でした。映画が主役じゃないんだ。《東京国際映画祭》という看板が観客よりも大事なんだねと映画祭に失望しました。
苦言はこれくらいにして、映画はサイコーなのでお楽しみに!
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