『ホットギミック ガールミーツボーイ』キラキラ青春映画の万物を凡庸に追いやる山戸結希の大型魔法

ホットギミック ガールミーツボーイ(2019)

監督:山戸結希
出演:堀未央奈、清水尋也、板垣瑞生、間宮祥太朗、桜田ひよりetc

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

今、Twitterのタイムラインを賑わせている作品に『ホットギミック ガールミーツボーイ』があります。本作は、相原実貴の同名少女漫画の映画化で、いわゆるキラキラ青春ものというジャンル映画なのだが、山戸結希のトンデモ演出によって異次元の作品に仕上がっているとのこと。ということなので観てみました。

『ホットギミック ガールミーツボーイ』あらすじ


「乃木坂46」の堀未央奈が映画初主演を務め、「溺れるナイフ」の山戸結希監督が相原実貴原作の同名コミックを実写映画化。平凡な女子高生・成田初は、兄、妹、両親に囲まれたごく普通の家庭で暮らしていた。同じ社宅に住む幼なじみで昔から初の憧れの存在だった小田切梓。口は悪いが傷ついた初を励ましてくれる橘亮輝。初の兄で、ある秘密を持つ凌。初を取り巻く3人の男性との間で、彼女の心が揺れ動いていく。主人公の初役を堀が演じるほか、亮輝役を清水尋也、梓役を板垣瑞生、凌役を間宮祥太朗がそれぞれ演じる。
※映画.comより引用

キラキラ青春映画の万物を凡庸に追いやる山戸結希の大型魔法

2010年代後半はキラキラ青春映画戦国時代であった。数人の映画監督が交代で、1ヶ月に1本ペースで、胸キュン甘酸っぱい青春恋愛ものを作り続けていた。しかし、ここ最近、そんなキラキラ青春映画の波に翳りが出ている。単純にブンブンの邦画感度が下がっただけなのかもしれないが、あまりホームラン級の作品には出会えていない。唯一傑作だった『PRINCE OF LEGEND』も、キラキラ青春映画というよりかは、EXILE映画だしね。

さて、そんなキラキラ青春映画の淵にトンデモ映画が爆誕した。監督は『おとぎ話みたい』『溺れるナイフ』と、狂った音楽と映像演出で注目されている山戸結希だ。ブンブン、どちらの作品も好きなだけにワクワクしながら観たのですが、私の予想をはるかに超えてくる混沌がありました。

本作にはアクションしかありません。いきなり女子高生が歩くと、キラキラ青春映画のアイコン的イケメンが回転寿司のように流れていく。メガネ傑作ヒール男子、イケメンチャラ男、優男な兄貴。それを『キラキラ星』やパッハベルの『カノン』、『エリーゼのために』が響き渡る中、キャラ紹介とばかりに提示される。しかしながら、この作品は何故か物語における中盤の展開を観客に投げつけてくるのです。

セックススキャンダルに、私の奴隷になりなさい事件、なんか色々事情があって帰還したイケメンと再会事件と。観客は短時間で起こる理解しがたい展開に混乱するのだ。

では無軌道、天邪鬼にこだわった見かけ倒しの映画なのか?それは違う。というのも山戸結希監督は、思春期が持つ他者への好奇と拒絶をひたすら緻密に描いているのだ。寧ろ論理的にスパゲティコードのように乱れた少女の脳髄を駆け巡ります。例えば、主人公が淫乱とクラス中から囁かれる場面。ひたすら目と口をアップで映す。陰口に怯える人特有の気にしてしまうものをカメラは捉えていき、無数の目と口の不気味さは観客ですら気持ち悪くなる。彼女の恐怖心に突き落とされるのです。

そして、彼女の周りを蠢く魔性のイケメンたちとのディスカッションは、彼女が自分の内なる醜さとの対峙とも受け取れる。本作で登場する女がクローン女子さながら、個性がなくそこそこの美貌を維持しているところからも、この映画は内なる醜さと決着をつける話だと分かります。

さらに、キラキラ青春映画にありがちな、感情が最高潮に高まったときに走り出す描写は、階段を上から下に駆け抜ける縦のアクションとなっており、こういった手法の見本市を見せられると、従来のキラキラ青春映画がいかに凡庸だったかが分かる。いや訂正しよう。どんなキラキラ青春映画も「凡庸」という箱に封印されてしまうのです。

このように、思春期少女の内面を爆発する編集と音楽によるモンタージュでもってがっちり鷲掴みにしていくので、まさしく2010年代クライマックスを締めくくるキラキラ青春映画と言えよう。

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