チェ・ブンブンの #2019年上半期映画ベスト10

チェ・ブンブンの #2019年上半期映画ベスト10

こんにちは、チェ・ブンブンです。

もう2019年も半分ですね。そして、2010年代もあと180日程で終わってしまいます。Twitterで毎年恒例の #2019年上半期映画ベスト10 のハッシュタグが出来上がっていたので、ブンブンも参加しました。選定理由に関しては当記事で書いていこうと思います。ブンブンの場合、日本未公開、DVDやVOD鑑賞でも新作に該当する作品はランキングに入れております。それではいってみましょう。

1位:Mektoub, my love: canto uno

監督:アブデラティフ・ケシシュ
出演:Shaïn Boumedine、Ophélie Bau、Salim Kechiouche、Lou Luttiau etc

『アデル、ブルーは熱い色』でカンヌ国際映画祭最高賞パルム・ドールを受賞したアブデラティフ・ケシシュ監督がフランソワ・ベゴドーの小説『La Blessure, la vraie』を映画化した作品。なんとパルム・ドールを売り払ってまでして本作を創り上げたとのこと。この続編にあたる『Mektoub, my love: intermezzo』が今年のカンヌ国際映画祭で上映されたものの、お尻しか映らない3時間半という地獄絵図と、『アデル、ブルーは熱い色』に引き続き勃発したセクハラ騒動によって日本でも話題になった作品です。ただ、この作品はスキャンダラスな部分を抜きにしてもサイコーに面白かった。今年最強のヴァカンス映画といっても過言ではない。ヴァカンスに故郷へ帰ってきた青年の周りでパリピたちがナンパにセックス狂乱の世界が展開されている。チョイイケメンな青年はなんとか意中の女性をモノにしようとするのだが、ナンパが毎回下手すぎて残念な結果に終わってしまう。あまりに痛々しい恋愛奇譚に胸がキューと締め付けられる。《Mektoub》とはアラビア語で「書かれる」という意味であるが、転じて「運命付けられた」という意味もある。ライターである青年は、自分で物語っているように思えて全てはアブデラティフ・ケシシュが操り人形のように動かすパリピによって運命付けられている。その神の手の滑稽さと眩いほどの陽光に照らされたビーチを駆け巡る裸体に底知れぬ感動を覚えました。

ブログ記事:【カンヌ国際映画祭特集】『Mektoub, my love: canto uno』A.ケシシュ、パルムドール売ってバカンス映画作るの巻

2位:アベンジャーズ/エンドゲーム

監督:アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ
出演:ロバート・ダウニー・Jr、クリス・エヴァンス、マーク・ラファロ、クリス・ヘムズワース、スカーレット・ヨハンソン、ジェレミー・レナー、ドン・チードル、ポール・ラッド、ブリー・ラーソン、ブラッドリー・クーパー、カレン・ギラン、ベネディクト・カンバーバッチ、トム・ホランド、チャドウィック・ボーズマン、クリス・プラット、ゾーイ・サルダナ、デイヴ・バウティスタ、ヴィン・ディーゼル、ポム・クレメンティエフ、ポール・ベタニー、エリザベス・オルセン、エヴァンジェリン・リリー、トム・ヒドルストン、アンソニー・マッキー、セバスチャン・スタン、グウィネス・パルトロー、ジョン・ファヴロー、タイ・シンプキンス、コビー・スマルダーズ、サミュエル・L・ジャクソン、ジョシュ・ブローリン、真田広之etc

2010年代は、「ユニバース」というフランチャイズ形式が普及した時代と言える。もちろん、過去には『悪魔の毒々モンスター』シリーズがユニバース形式で物語っていたが、ここまで大規模に、主要なハリウッドスターと予算を湯水のようにつぎ込んで作り上げ成功したユニバースはMCUが最初だと言えよう。そして、ユニバースのクライマックスは、映画史に残る御都合主義の塊で締めくくられており、中にはこのラストにブチギレる映画ファンもいた。ただ、アクション一切なしの長い長いお葬式展開から、過去の戦いの地を戦場とし、各ヒーローが己と対峙していく第二幕、そして結局ジャスティスリーグと比べると喧嘩ばかりして空中分解していたアベンジャーズが最後の最後にASSEMBLEし一つになるところはあまりにも美しかった。2019年とか2010年代という括りで観た際に、これほどまでに凄まじいクライマックスを無視するなんてブンブンにはできませんでした。

ブログ記事:【ネタバレ考察】『アベンジャーズ/エンドゲーム』平成の終焉、令和の誕生に相応しい5億点、いや∞(無限)点映画だ

スパイダーマン: スパイダーバース

監督:ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン
声の出演:シャメイク・ムーア(小野賢章)、ヘイリー・スタインフェルド(悠木碧)、ジェイク・ジョンソン(宮野真守)、ニコラス・ケイジ(大塚明夫)、キミコ・グレン(高橋李依)、ジョン・ムレイニー(吉野裕行)etc

まさかブンブンシネマランキングにアメコミが2本も入るとは思ってもいませんでした。アメコミ映画自体、2012年に『アメイジング・スパイダーマン』(新作洋画部門8位)、『ウォッチメン』(旧作洋画部門1位)を選出したぐらいでした。しかしながら、『アベンジャーズ/エンドゲーム』と『スパイダーマン: スパイダーバース』はブンブンの好きなヨーロッパ系アート映画を凌駕する面白さがありました。何と言っても、アメリカンタッチ、白黒、カートゥーン、萌えといった様々なタッチの絵が共存し、それぞれが息をしている世界を創世したこと自体がアニメ映画史にとって大事件です。それでもって憧れの存在であったスパイダーマン亡き世界で、無能な自分に苦悩しながらも仲間との愛を受け、大人に、ヒーローになっていくマイルス・モラレスに熱くなりました。

ブログ記事:【ネタバレ考察】『スパイダーマン: スパイダーバース』が2019年暫定ベスト1な10の理由

4位:愛がなんだ

監督:今泉力哉
出演:岸井ゆきの、成田凌、深川麻衣、若葉竜也etc

日本のホン・サンス快進撃!マモちゃん、テルちゃん、甘酸っぱく目を覆ってしまうようなリア充生活。しかしながら、その実態はとてつもなくどす黒い。テルちゃんは、純潔な女性に見えて、昼間っから酒を呑み、会社ではマモちゃんからのLINEが来ないかとスマホをチラチラ見て仕事すらしない。一方、マモちゃんは、そんな彼女の愛を重いと感じ、テキトーに遊ばせておいていたり、彼女の愛をゴミ箱に捨てるかのように別の女と交際していることをテルちゃんに伝える。本作にはクズしか出てこないのだが、恋愛をしなくなった日本人を象徴しているように見える。まさしく日本版『アルフィー』だ。友達以上恋人未満の関係の居心地の良さと、ただその微妙な関係で揺らぐ自分の恋愛観を凝縮し、宝石のようにキラキラとしたものがここにはありました。まあ、東京国際映画祭の審査員であるブリランテ・メンドーサが、この日本人独特の恋愛観は分からないのも無理ないなとは思う。

ブログ記事:【ネタバレ考察】『愛がなんだ』5億点大傑作!今泉力哉監督が描くストレイシープのゆらぎ

5位:イメージの本

監督:ジャン=リュック・ゴダール

ゴダールのサンプリングした資料を紙芝居のように見せてくる文字通り《絵本(=Le livre d’image)》な本作は、常に映画の概念を破壊してきたゴダールの集大成であった。あの蓮實重彦ですら解釈することを諦めそうになるくらい、膨大な文学、音楽、絵画、映画からの引用から導き出されるのは「悟り」という答えであった。結局映画というのは、過去にあったアーカイブからの引用でしか物語ることはできないというゴダール悟りが極限まで高められ、マルセル・プルーストが『失われた時を求めて』で語った、究極のアートは森羅万象ある芸術全てを足し合わせて作り出せるものではないという理論における「究極のアート」に到達できたと感じた。本作は、見る人によって物語が変わってくる、『ブラックミラー:バンダースナッチ』的側面もあり、全く理解できなかった一方唯一無二の面白さを感じました。

ブログ記事:【ネタバレ解説】『イメージの本』ゴダール版『レディ・プレイヤー1』に何思う?

6位:ウィーアーリトルゾンビーズ

監督:長久允
出演:二宮慶多、水野哲志、奥村門土、中島セナ、佐々木蔵之介、工藤夕貴、池松壮亮、初音映莉子、村上淳、西田尚美、佐野史郎、菊地凛子、永瀬正敏、いとうせいこうetc

現代社会の薄っぺらさを、濃密な情報量で詰め込んだ新鋭・長久允が生み出したモンスター映画。SNSが発展し、人々はまるでゾンビのように恍惚を追い求めて食い尽くしては去ってしまう空っぽな存在なんだということを、厭世的な少年たちの放浪でもって見事に風刺してみせた。ただ町を彷徨い、たまたまバンドをやっただけで、ネットで注目され、一躍有名になるのだが、誰も彼らの本当のことを知らない。一度事件が起きれば、ぽいっと捨てられ忘れ去られてしまう。そんな映画が生み出したあの曲は、単体で聴くと次の日には忘れてしまいそうなのだが、映画という舞台装置に組み込まれた途端、忘れることのないパフォーマンスへと豹変するあたりも含めて凄まじい一本でありました。

ブログ記事:『WE ARE LITTLE ZOMBIES』電通マン・長久允が放つ、令和元年最強の映画爆誕!!

7位:KNIFE + HEART

監督:ヤン・ゴンザレス
出演:ヴェネッサ・パラディ、Kate Moran etc

ベルトラン・マンディコと共に注目されているファンタスティック系監督ヤン・ゴンザレスのフレンチポルノ映画論が凝縮された作品。彼は修士論文で修論は「la figure de la femme dans le porno amateur(自主ポルノ映画における女性像)」とポルノ映画に関する論を手がけており、まさにフランスの『ブギーナイツ』、あるいは『止められるか、俺たちを』創り上げた。一見すると、とてつもなくかっこいい映像で難解な渦に観客を突き落とすストロングゼロ映画なのですが、よくよく観察していくと、同性愛者が持つ同族嫌悪性や、ポルノ映画を撮る側の好奇心問題、さらにはポルノ映画によって行き場のなかったゲイコミュニティが輝き、ゲイにとって生きる活力が生まれた点など、ポルノ映画という第一印象でラベリングされてしまいそうな素材に対してとことん理論を隠していくところが新鮮で面白かった。インタビューでのヤン・ゴンザレスのしっかり理論構築されたポルノ映画との立ち位置に関する話も超絶面白いので、今後この監督には注目です。

ブログ記事:『KNIFE + HEART』M83メンバー、アンソニー・ゴンザレス兄が手がける官能映画の美学

8位:チワワちゃん

監督:二宮健
出演:門脇麦、成田凌、寛一郎、玉城ティナ、吉田志織etc

自由に生きているようで息苦しい、、、『桐島、部活やめるってよ』同様、ブンブンとは遠く遠くかけ離れたパリピ、チャラ男が無軌道に遊び狂いチワワちゃんの死によってバラバラになる過程が描かれているのだが、この自由を謳歌するのだが自分の空っぽさに気づき、社会に同化していく様子の切なさは、胸が締め付けられるぐらい刺さった。また、Have a Nice Day!の主題歌『僕らの時代』もありふれた凡庸な歌詞なんだけれども、息もできない程々見つめてくる旋律と慟哭に涙した。多分この映画はボクらの時代、平成を象徴しているのだろう。年末にはネタが被りすぎている『ウィーアーリトルゾンビーズ』と本作どちらをベストテンに活かすか苦渋の選択しないといけないのですが、本作はブンブンにとって大切な大切な一本です。

ブログ記事:【ネタバレ考察】『チワワちゃん』1月のダークホース!日本にも『スプリング・ブレイカーズ』をできる監督がいた!

9位:ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス

監督:フレデリック・ワイズマン

3時間以上かけて『BANANA FISH』の聖地にもなっているニューヨーク公共図書館のinside/outsideを魅せてくれるドキュメンタリー。確かに話題によっては眠くなるところもあったり、退屈なところもあるのですが、図書館前のパレードでペニスのコスプレをした人物と、図書館にどんな本を入荷しようか議論する職員、プログラミング教室や点字教室に通う者を等しく映し出すフレデリック・ワイズマンの語り口は他のドキュメンタリー作家に真似できない超絶技巧を感じます。そして日本の図書館がすっかり忘れてしまった、図書館は単なる本貸し場ではなく市民に均等に情報を送り届ける場であることを痛いほど教えてくれました。

ブログ記事:【ネタバレ考察】『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』データを活かす場としての図書館4つのポイント

10位:7月の物語

監督:ギョーム・ブラック
出演:ミレナ・クセルゴ、リュシー・グランスタン、ジャン・ジュデ、テオ・シュドビル、ケンザ・ラグナウイetc

ジャック・ロジエの緩そうに見えてハードコアな冴えない男の受難ヴァカンス映画が好きなブンブンには、ギョーム・ブラックは至高の作家といえよう。ヴァカンスに女友達と行くのだが、ナンパ男が片方ばかりちょっかい出して悶々とする様子をコミカルに描いた第1部:日曜日の友だち、パリ留学が終わり明日には帰ろうとする女学生がテラスハウスさながらの異性の取り合いに巻き込まれる第2部:ハンネと革命記念日。どちらも女々しくて女々しくて女々しくて辛くなってきます。人間模様の辛さを嘲笑うかのように光り輝く自然の妙、そして第2部終盤に挿入されるエピソードの旨さ含めて大好きです。ギョーム・ブラック監督に質問し、サインまで頂いた映画体験含めて10位に入れました。

ブログ記事:【ネタバレ考察】『7月の物語』+『勇者たちの休息』ヴァカンスにある小さな闇を捉えた傑作

最後に

上半期はちょっと不作な感じもあり、個人的にはそこまで満足のいくベストテンを作ることができませんでした。下半期には『トイ・ストーリー4』、『SHADOW/影武者』や『Sorry We Missed You』と楽しみな作品がたくさんやってきそうです。そして東京国際映画祭、東京フィルメックス、釜山国際映画祭とブンブンの年間ベストを左右するイベントも押し寄せてくるので、ブンブンの大好きな映画を下半期も探求していきたいと思います。

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