『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』フランス批評家、大衆絶賛の冒険アニメーション

ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん(2015)
LONG WAY NORTH

監督:レミ・シャイエ
出演:クリスタ・テレ、フェオドール・アトキン、トマ・サンゴルetc

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

東京アニメアワードフェスティバル2016でグランプリを受賞、『かぐや姫の物語』の高畑勲監督も公開を切望したフランスのアニメーション『LONG WAY NORTH』が『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』という邦題で、9/6(土)より東京都写真美術館より公開されます。本作は、フランスでも絶賛され、映画情報サイトAlloCinéによれば2015年の平均評年間総合ランキングで批評家部門10位、一般部門9位という成績を叩き出しました。そんな『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』一足早く観たので感想を書いていきます。

『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』あらすじ


行方不明の祖父を捜すため北極点を目指す旅に出た少女の冒険を描いたフランス・デンマーク合作による長編アニメーション。19世紀ロシア、サンクトペテルブルグで暮らす14歳の貴族の子女サーシャ。大好きな祖父は1年前に北極航路の探検に出たきり行方不明となり、捜索船は出たものの、いまだに見つからずにいた。祖父と家族の名誉は失われ、祖父の名を冠する予定だった科学アカデミーの図書館も開館が危ぶまれている。そんな状況の中でローマ大使の道を模索するロシア高官の父は、社交界デビューをするサーシャが皇帝の甥であるトムスキー王子に気に入られるしかないと考えていた。しかし、社交界デビューの日、サーシャは祖父の部屋で航路のメモを発見し、それをもとに祖父の再捜索を王子に懇願したことで、不興を買ってしまう。父からも叱責を受けたサーシャは、自ら祖父の居場所を突き止めることを決意。数々の困難を乗り越えてようやく北方行きの船に乗り込み、“地球のてっぺん”を目指すが……。アヌシー国際アニメーション映画祭で観客賞、TAAF(東京アニメアワードフェスティバル)2016でグランプリを受賞。
映画.comより引用

ドキュメンタリーの色彩を持つ

日本のアニメーションのアクションを持たない人間の心理を描いた側面が注目される。実写でも描ける話だが、敢えてアニメーションというスタイルを用いることで鑑賞者に気づかない人間の繊細些細な心理を気づかせる働きを映画にもたらす。この『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』もこの技法を用いられている。ブルジョワ家庭の娘が、デカダンスな空間から逃れるように北極を目指す。そこには、北極で行方不明になった祖父を探すというミッションがあり、鉄道員の目を掻い潜って船乗り場を目指したり、激しい天候の中未知の土地を目指すというスリリングなシーンがあるのだが、アニメという媒体を最大限活用した激しいアクションはそこにはない。まるで半世紀以上前、映画が未開の地を紹介するメディアの働きを持っていた時代のドキュメンタリーを観ているような気分にさせられます。

人間が生存するのに適さない、酷寒の地、難航するミッションにフラストレーションが溜まっていく船の乗組員たち、そこで起こる口論に生々しいものがある。そして、その不穏とは裏腹に粒子の一粒までもが美しい粉雪があたりを漂う。切り絵のような空間は、グイグイと観客をその世界へと没入させ、サーシャと共に冒険しているような気分にさせられます。

今や、子どもが一人旅をするとTwitterではたちまち叩かれてしまう御時世。無論、承認欲求の肥大化による旅は本人にリスクがあるだけでなく、社会にも迷惑をかけてしまう問題はあれど、冒険の末にある成長と感動を圧力で潰されてしまいがちな今だからこそ子どもたちに観てほしい作品でした。

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