『COLD WAR あの歌、2つの心』ポーランドにもあったラ・ラ・ランド

COLD WAR あの歌、2つの心(2018)
原題:Zimna wojna
英題:COLD WAR

監督:パヴェウ・パヴリコフスキ
出演:ヨアンナ・クーリグ、トマシュ・コット、ボリス・シィツ、アガタ・クレシャ、セドリック・カーンetc

評価:50点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第71回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞し、第91回 アカデミー賞では監督賞、撮影賞、外国語映画賞にノミネートされたパヴェウ・パヴリコフスキ最新作『COLD WAR あの歌、2つの心』を観てきました。本作は親友が大絶賛しており、「映像のパヴリコフスキが音楽を味方につけ、鬼に金棒となっている。」と評している。前作『イーダ』ではウカシュ・ジャルの圧倒的なカメラワークによって観る者を釘付けにしました。今回も彼がキレッキレのカメラワークを魅せているとのことなのですが果たして…

『COLD WAR あの歌、2つの心』あらすじ


ポーランド映画で初のアカデミー外国語映画賞に輝いた「イーダ」のパベウ・パブリコフスキ監督が、冷戦下の1950年代、東側と西側の間で揺れ動き、時代に翻弄される恋人たちの姿を、美しいモノクロ映像と名歌で描き出したラブストーリー。2018年・第71回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した。ポーランドの音楽舞踏学校で出会ったピアニストのヴィクトルと歌手志望のズーラは愛し合うようになるが、ヴィクトルは政府に監視されるようになり、パリへと亡命する。夢をかなえて歌手になったズーラは、公演活動で訪れたパリやユーゴスラビアでヴィクトルと再会。パリで一緒に暮らすが、やがてポーランドに戻ることに。ヴィクトルは彼女の後を追ってポーランドも戻るのだが……。
映画.comより引用

オヨヨの囁きが脳裏から離れない。

確かに鬼に金棒でした。ウカシュ・ジャルの時が止まったかのような白黒写真的空間の中、ズーラがなんどもオヨヨ…と歌う。Dwa Serduszka Cztery Oczy(二つ、四つの目と心)という彼女の十八番は、激動のヨーロッパ史を駆け抜け、祖国を失うズーラとヴィクトルの心の中の故郷として映り込む。時代や社会が代わり、歌も変わっていくのだが、二人はオヨヨ…のメロディだけは手放さない。その力強さは観客の心に刺さり、感動を呼び起こします。

ズーラがベースにするDwa Serduszka Cztery Oczyの歌詞をみてみましょう。

Dwa serduszka cztery oczy ojo joj!
Co płakały we dnie nocy ojo joj!
Czarne oczka co płaczecie
Że się spotkać nie możecie
Że się spotkać nie możecie
二つの心、四つ目がオヨヨ!
彼らが夜泣いていたものなのよ!
黒い目はあなたが泣くものよ
会えないんだ
会えないんだ

ポーランド語でオヨヨ(ojo joj)は驚きを表す話し言葉で、フランス語におけるオララ(Oh là là)に近い表現らしい。本作は、ズーラとヴィクトルがスマホもパソコンもない時代に、偶然に引き寄せられるかのように再会し、引き裂かれていく様が断片的に描かれている訳だが、まさしくその奇跡に対して観客もojo jojと言いたくなります。

ラ・ラ・ランドのラストを抽出するとどうなるか

ただ、前作同様、物語に物足りなさが残ってしまったのは事実だ。例えるならば、本作は『ラ・ラ・ランド』のクライマックスで、エマ・ストーンがバーに行くプロセスだけを多面的に切り出したようなもの。『ラ・ラ・ランド』が冒頭の華や、ラストの華がなければただの退屈な映画だ。シークエンスに物語を運ぶから魂が揺り動かされる。『COLD WAR』の場合、カップルの結ばれ引き裂かれを断片的に並べているだけで、感情が錬成されていく過程、進化させていく歌に込められた魂が見え難くなっている。

なので、映像音楽は素晴らしいのだが、来月には忘却の彼方へ追いやられていることでしょう。

非常に惜しい、オヨヨ…ではなくトホホ…な作品でした。

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