【ネタバレ考察】『がっこうぐらし!』ヴィジュアルに騙されてはいけない7の注目ポイント

がっこうぐらし!(2019)
SCHOOL LIVE!

監督:柴田一成
出演:阿部菜々実、長月翠、間島和奏、清原梨央、おのののか、ひょっこりはんetc

評価:85点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

公開前から、原作ファンに火炎瓶を投げられていた作品『がっこうぐらし!』。確かに、海法紀光×千葉サドルの萌え系全開なタッチを、別次元にシフトさせたり、そもそもヒロインが秋元康プロデュースのアイドルだったりと、原作原理主義者にとっては鼻持ちならないであろう。ただ、試写会が行われると、チラホラ傑作との声も耳にする。

そして人気映画ライターのヒナタカさんが、本作を1万3,000字のレポートを書いてしまうぐらい絶賛していました。ブンブン、原作も知らなければアイドルも興味ありません。しかしながら、ヒナタカさんのおすすめにハズレなし。見逃すと、年末に後悔することが多いので、観にいきました。そうしたら、これが傑作だったのです。それもとても歪な。本記事では、原作もラストアイドルファミリーのことも知らないブンブンの目線から、いかに本作が傑作なのかを語っていきます。ネタバレ全開なので、未見の方はすぐにこのページを閉じて映画館へいきましょう!

『がっこうぐらし!』あらすじ

がっこうぐらし!
あの子はすみっこぐらし!
微笑むギャルはその日ぐらし!
そんな彼女らに明日はあるのか!

注目ポイント1:AVにしか見えない前半に気をつけろ

冒頭で、「これが傑作だったのです。それもとても歪な。」と書いたのですが、本作最大の落とし穴は、AVのような作劇にあります。ブンブンは、前半30分困惑しました。「これはNot for me」だとすら思いました。しかしながら、これは『カメラを止めるな!』同様、大きな罠でした。

何気ない、学校生活が映し出される。キャラクター紹介パートとして各登場人物を映していく。アイドル映画なので、魅力的にラストアイドルファミリーを映そうとしているのだが、どこか可笑しい。まるでAVを観ているようなのだ。制服は、「コスプレ」感を全力で醸し出している。ラストアイドルファミリーのメンバーは全員映画初。それだけに大根もいいところです。甘ったるい声、ぶりっ子声でイチャつく。柴田一成監督や撮影の吉沢和晃は足フェチなのだろうか?アイドルの足に対する執着を余すことなく魅せていきます。そういったシチュエーションは得意でないブンブンはフラストレーションが溜まります。油断もします。しかしながら、これが物語をとてつもなく面白くしていた。後述する、様々な伏線回収に意外性を持たせていたのです。

注目ポイント2:細かい伏線

この作品、ただのAVのようなアイドル映画に見せかけておいて、非常に伏線が細かいです。本作は、青春きらきら映画にみせかけてゾンビ映画という異色の内容。そのネタを描く前にしっかりと仕込みを行なっています。何気ない学校生活を冒頭描いていくのだが、直々違和感を観客に抱かせます。普通の学校生活かと思いきや、ヒロインは学校で生活している。合宿だと言い張るのだが、それにしては学校に滞在する人が多すぎる。急に「避難所が」と語り始める様子に、「ひょっとして3.11要素を入れてくるのか?」と思わずにはいられない。キャピキャピ屋上で飛び跳ねているヒロインだが、よく見ると、学校の下の階の窓ガラスが割れていたりする。どんだけ不良学校なんだ?

そうこうしているうちに、これがゾンビ映画だと分かってくる。そして、これはヒロインの一人・由紀の妄想が入り混じった世界だと気付かされるのだ。この展開に、思わずBravo!と叫びたくなりました。非常に魅せ方が上手いです。

注目ポイント3:『カメラを止めるな!』以降の新ジャンルゾンビ映画

こうしてこの作品は「ゾンビ映画」というジャンルであることが分かったのだが、ここで感じたのは、『カメラを止めるな!』は本当にゾンビ映画の歴史を変えてしまったのだと。ブンブンは『カメラを止めるな!』評で、従来のゾンビ映画には2種類あるジョージ・A・ロメロの「シリアス系」か、「バカ映画系」かと。中途半端なゾンビ映画は、その両方のベクトルどっちつかずな作品だったと語った上で、『カメラを止めるな!』は別のベクトルを開拓したと語った。『がっこうぐらし!』はまさしく、その別のベクトルに追随しようとしている。ポリコレとか政治的メッセージは無視して物語を進める。バカ映画っぽさもあるのだが、映画が進むごとに胸が熱くなるほどの感動がある。「ゾンビ映画」というフレームの中で、学園生活とは何かを見つめる。他のゾンビ映画ではなかなか見ることのできない内容となっているのです。

注目ポイント4:あなたは何も見えていない

この作品には、大きな「驚き」があります。それこそ、中学生時代に『ユージュアル・サスペクツ』や『ファイト・クラブ』を観てどんでん返しに驚いたあの興奮がありました。本作は、アイドル映画なので、わかりにくいところは懇切丁寧に「セリフ」で説明している。学校生活。しかも、高校3年生の話なのに、「彼女は佐倉先生!」みたいなことを平気で喋らせてしまう。映画に詳しい人ほど、「これはゴミ脚本だな」と見下げてしまう。ましてや、由紀が妄想の世界に取り憑かれているなんてことは、わざわざ説明しなくても演出で十分分からせることはできるし、なんなら本作はカット割りだけでしっかりそのシチュエーションを伝えられている。にも関わらず、何度も彼女の状況を説明するのです。

柴田一成監督がポンコツ脚本しかかけない訳ではなかった。これは完全に彼の罠であり大技の為の仕込みだったのだ。

観客は、由紀の妄想が作り出したアンニュイほんわか世界と、現実のゾンビサバイバルライフのギャップを楽しむ。そして、クライマックス。ゾンビが校舎内に押し寄せ、絶体絶命の危機に陥る。そこで、とんでもない事実が明らかになるのです。あれだけ、ヒロインの面倒をみてくれていて、メンターとして機能していた保健室の佐倉先生は最初からいなかったのです。彼女はとっくのとうにゾンビになっていたことが明らかになるのです。正直、驚きました。そして振り返って見ると、確かに合点がいきます。

由紀が授業を受けている場面、美紀が「あの子一人で授業受けているけど何なの?」と訊く場面がある。フレームは、由紀だけを捉えている。しかし、現実に置き換えて考えると、その場には佐倉先生がいるはずなのです。そしてこのシチュエーションだと先生にも言及しないとおかしいのだ。それだけではない。美紀の会話の世界には、全く先生のことが言及されていないのだ。

つまり観客は柴田一成監督の丁寧すぎる説明的セリフと説明描写によって「全てを知ったつもり」になっていたのだ。

しかも、このどんでん返しが、ヒロインの成長と大きく関係していて、涙が出るぐらい感動を引き起こします。

注目ポイント5:佐倉先生のネックレスの意味は?

さて、佐倉先生の正体がわかったことで、彼女について思い出しましょう。良く見ると、彼女の首には十字架のネックレスがついています。ただのファッションかな?と思うのですが、最後の方で、彼女が部屋で読んでいた本が「聖書」だと分かった時、これは非常に重要なアイコンだったことに気づきました。

つまり、佐倉先生は残された生徒にとってのイエス・キリストであり宗教であったのだ。

宗教は、絶望の淵にいる人に生きる希望を与える。ヒロインたちは、もうゾンビになってしまった先生の生前の優しさを共有し信仰することで、いつまで続くか分からない地獄の中で生きることができたのです。

そう考えると、学園生活部は教会のような存在だったということも分かってきます。

注目ポイント6:マッチョな男も、ミラ・ジョヴォヴィッチもいない、ここが重要

さて本作は、日本のゾンビ映画ということをしっかりわきまえています。マ・ドンソクのようなマッチョな男もいないし、ヒロインはミラ・ジョヴォヴィッチのように屈強ではない。それ故のスリルを良く描けています。ゾンビアクションが常にどんくさいのです。ゾンビアクションといえば、キレのある格闘とかガンアクションを思い浮かべるのですが、彼女はスコップやバールのようなもので殴るしかできない。しかし、華奢な彼女の戦闘能力はスライムレベル。常に危機一髪なのだ。しかも、先述の通り足フェチ向けAVのように演出されているので、素肌が見えまくりなのだ。だから「危ない!」と思わず叫んでしまいそうなシーンがやたらと多いのです。

注目ポイント7:永遠の青春からの卒業を描いた作品だ

さて、最後に本作は、ほとんど社会的メッセージのない純粋な娯楽青春ゾンビ映画なのだが、そこにひとつまみ添えられたテーマが素晴らしいスパイスとなっていたことを報告しなければいけません。本作は、「永遠の青春」からの卒業を象徴的に描いています。学校生活が楽しい者は誰しも「この青春が永遠に続けばいいのに」と思ってしまうもの。ヒロインたちは由紀の「永遠の青春」による渇望が生み出した妄想につきあうことで、永遠の青春から抜け出せずにいました。

しかし、最後に「大学に行こう」と彼女は、卒業式を敢行し、学校を後にする。

これは言い過ぎかもしれないのですが、少女から女性に変わるイニシエーションを描いているとも取れます。大人の世界に飛び込むと、周りには自分の常識では到底処理できないような怪物のような大人や不条理がある。それを認めて、自分としての生き方を決めていくのが大人だ。ヒロインは、自分の好きな世界だけを信じていたのだが、最後に外へ出ることで現実と向き合う。そして、「大学に行く」というベクトルを定めることは彼女たちが自分で不条理を消化し、生き方を決めて行くことに繋がります。

つまり、本作は現実世界と遠く離れたゾンビサバイバルものでありながらも思春期の終わりをしっかり描いた作品だったのだ。

最後に

いかがでしたでしょうか?多分、本作は現在公開中のリメイク版『サスペリア』同様、賛否が激突するのも必然な作品だ。しかしながら、ブンブンはこの映画にとてつもなく感動したし、演出に光るものを見た。柴田一成監督は、『リアル鬼ごっこ』シリーズのプロデューサーなので基本的にNot for meなのだが、これを観ると、彼の次回作は観に行かねばと感じるあまりでした。

ブロトピ:映画ブログの更新をブロトピしましょう!
ブロトピ:映画ブログ更新

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です