A(1998)
監督:森達也
評価:95点
平成の終焉に向け、次々と信じられない出来事が起きている。SMAPの解散、桂歌丸の死、クレヨンしんちゃんの声優の交代etc…そして今日、また平成の終わりを感じさせる出来事があった。2018年7月6日、オウム真理教・麻原彰晃(松本智津夫)死刑囚ら7人に死刑が執行されたのだ。オウム真理教と言えば、1995年に松本サリン事件を引き起こした新興宗教だ。日本で、それも日本の組織がテロを引き起こしたということで、日本国内だけならず世界にも衝撃を与えた。あれから23年。遂に死刑が執行されたのだ。・日本経済新聞:オウム真理教・松本智津夫死刑囚ら7人の死刑執行
そんな今日、紹介したい作品がある。それが森達也監督のドキュメンタリー映画『A』だ。麻原彰晃の死刑執行がショーのようにメディアで扱われている今こそ、観て欲しい。ってことで語っていきます。
『A』概要
松本サリン事件以降、オウム真理教に残された広報副部長であった荒木浩にカメラが迫る。マスコミ対応に追われ、社会から強烈なバッシング受ける中、麻原彰晃(松本智津夫)というカリスマが消えたオウム真理教の舵取りを任された者たちの奮闘が描かれる…社会のイジメ
原一男系アクションドキュメンタリー監督に森達也がいる。2016年にゴーストライター騒動の佐村河内守を撮ったドキュメンタリー『FAKE
』で話題になったが、彼は昔、オウム真理教の広報担当の荒木浩を追ったドキュメンタリーを撮っていたのだ。その名も『A』だ。
麻原彰晃が地下鉄サリン事件で逮捕され、トップ不在となったオウム真理教を内部から撮ることにより、今まで知らなかった壮絶な日々が明らかにされる。
マスコミは一つでも特ダネをゲットする為に執拗に、嫌がらせレベルで広報担当の荒木浩に迫る。時には他社の者と喧嘩を始める。その様子を観ると単純にマスゴミとして片付けることが出来ない。一人の人間として、失敗したらクビになるかもしれないからガムシャラに頑張っている組織の捨て駒ならではの哀愁があるのだ。
オウム真理教側も、ジョージ・オーウェルの世界さながら社会の厳しい目をかいくぐり、もはやトップ不在で右も左も分からず、教団をどう動かしていいかも分からず、信じ続けようとする姿に、最初は「どうせヤバイ奴らの集まりなんでしょ?」と思っていた人も段々と感情移入していき、胸が苦しくなるほど切なくなるのだ。そう、これは我々が抱く偏見への挑戦だ。確かに、オウム真理教信者の話し方や修行は気持ち悪さを感じる。それに、彼らが行ったことは到底許されるものでもない。でも、マスコミのイジメレベルの取材には辟易する。嫌味っぽく、高圧的に徹底的に潰していく。特ダネを得るために、マスコミ各社が協力し合い、巨人となって言葉の暴力を投げつける様子を森達也は妥協することなく魅せて、魅せて、魅せまくる。そう、これは単に《オウム真理教》を描いた作品ではなく、スケールのでかいイジメの渦中にいる《個人》を描いた作品なのだ。
Twitterをみると、ちょっとしたお祭り騒ぎになっているし、ニュースでは大々的に取り上げられている。ただ、《オウム真理教》を一つの大きなアイコンとして見るのではなく、一歩引いて見ると、無意識に我々はイジメに加担していることに気がつくことでしょう。ブンブンも、SNSを通じたイジメに加担してしまっていることがある。自戒も込めて、今日はこの映画を強くオススメします。TSUTAYAの陰日向に置いてあるので、是非この週末借りてみてください。
コメントを残す