【アルベルト・セラ特集】『鳥の歌』+『キューバ・リブレ』スライムすら出てこない荒野を勇者は彷徨う

鳥の歌(2008)
El Cent dels ocells(2008)

監督:アルベルト・セラ
出演:ビクトリア・アラゴネス、リュイス・カルボ、
マーク・ペランソンetc

評価:50点

5/26(土)『ルイ14世の死』公開を記念して、渋谷イメージフォーラムではアルベルト・セラ監督特集が開催された。ってことで土曜日に『騎士の名誉』と『鳥の歌』と『キューバ・リブレ』の3本だてを行ってきた。アルベルト・セラの存在は全く知らなかったのだが、カンヌ国際映画祭監督週間で注目された監督らしい。『騎士の名誉』が面白かったものの、HPを根刮ぎ奪った為、不安しかなかった。果たして…

『鳥の歌』あらすじ

生誕したらしいキリストを追い求め、三人の勇者は荒野を彷徨った…

スライムすら出てこない荒野を勇者は彷徨う

カタルーニャの民謡El Cant dels Ocellsに基づく作品。キリスト聖誕を鳥が祝うという内容の曲がベース。実際に聴いてみると、優雅で喜びに溢れた旋律が奏でられているのだが、映画の内容は鎮魂歌。死の香りしか漂わない怪作となっている。

3人の勇者は生誕したらしいキリストを求め不毛な土地、砂漠、氷原をRPGさながらの勇ましさで巡っていく。しかしながら、道中は本当に不毛だった。スライム一体すら存在しない。次第に、士気を失っていくパーティ。寝っ転がり、暴れ始め、自ら《5のダメージ》を受け続ける者が現れる。また「この旅は不毛だ、まるで俺らは奴隷のようだ」と嘆く者も現れる。

観客も、そんな何もやり甲斐を感じないRPGの世界に強制参加させられるのだ。ブンブンも《寝る損・マンデラ》と回復呪文を唱えるが、睡魔に何度か心折られ、目の前が真っ暗になりました。これはキツイ。いくらラヴ・ディアス映画のようなモノクロ淡々とした映画が好きでも、これはなかなかの修行であった。

おまけ:キューバ・リブレ(2013)
Cuba Libre(2013)

監督:アルベルト・セラ
出演:Lluís Carbó, Wolfgang Danz

アルベルト・セラ特集上映『鳥の歌』には18分の短編映画『キューバ・リブレ』がついていた。公式フライヤーによると、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーと彼の映画の常連俳優であるギュンター・カウフマンに対するオマージュとのこと。

まあ、言われなきゃわからないだろう。確かに色彩は『ケレル』を意識しているとはいえ、変な音楽映画として観た方が良さそうだ。

やる気なさそうに、司会者が次のアーティストを紹介するところから始まる。歌手が出てくるのだが様子が変だ。具合が悪そう。そして拍手とともに、彼は歌い始めるのだが、トーキング・ヘッズのデヴィッド・バーンも首をかしげるぐらい、彼はグニャグニャ体を動かし、地面を這いつくばりながら歌う。それをゲイゲイしい眼差しで眺める観客が映し出される(まあファスビンダー的だ)。そして、ライブのクライマックスに近づくと、謎の真っ白おじさんが舞台に上がる。デュエットかな?と思いきや、何故かおっさんは歌手にボディタッチしながら揺れるだけ。そして、何故かカメラは白いおっさんを避けるように歌手の顔をアップで撮る。フォーカスは乱れ、幾ら何でもライブ映画としてアウトでしょうという程の混沌が歌手の微妙な歌声と絡み合い、そして映画は終わってしまう。

なんだったんだ、この20分。劇場の電気が付く前に、観客の何人かは困惑と怒りを抱えながら劇場を出ていく。正直、ブンブンも『鳥の歌』『キューバ・リブレ』のダブルパンチに困惑しか起きなかった。『ルイ14世の死』を来週に観るのはやめようとすら思った。

アルベルト・セラは困惑の監督であった。

↑このブログをMonsterのCuba-Libre味飲みながら執筆しました。ラムの風味こそ弱い気がしたが、Monsterコーラ味だと思えば大満足のクオリティです。仕事を頑張りたい時にオススメです。

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