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【ネタバレ酷評】『キングスマン:ゴールデン・サークル』マシュー・ヴォーンに投げつける10の苦情

【ネタバレ酷評】『キングスマン:ゴールデン・サークル』マシュー・ヴォーンに投げつける10の苦情

マシュー・ヴォーンに文句がある!

マシュー・ヴォーンと言えば、映画ファンの間では『キック・アス』の黒歴史を思い浮かべる人も少なくない。あれだけ『キック・アス』は面白かったのに、続編『ジャスティス・フォーエバー』のキレもストーリーの質も堕ちに堕ちきった姿にがっかりした者が相次いだ。ただ、この続編は、マシュー・ヴォーンが監督を務めていなかったので、今回の『キングスマン』続編には期待していた。何故ならば、マシュー・ヴォーンが監督を務めたのだから。しかしながら、今回の『キングスマン:ゴールデン・サークル』は『キック・アス/ジャスティス・フォーエバー』以上にダメダメな作品であった。なので、今回は10の観点から苦情を言うことにした。

マシュー・ヴォーンへの苦情1:『キングスマン』をパロディにした罪深さ

予告編の雰囲気を観ると、United KingdomとUnited Statesが呉越同舟して新しい悪と戦うという意外と社会派なメタファーを含んだイメージがあった。しかしながら、本作において、「キングスマン」は、滅んじゃえば良かったのでは?と思う程世界平和の前に、世界の調和を乱しに乱している。

その原因はパロディを履き違えたことにある。前作では、007のパロディを行い且つ007を超えるスタイリッシュでガジェットガジェットしたアクションを魅せたからこそ、魅力的であった。

しかし、今回は『キングスマン』本体をパロディ化してしまっている。確かに似たような例に『オースティン・パワーズ』シリーズがあるが、あれは鼻からスパイなんぞやる気ないぜとシリーズ通して開き直っていたからこそ面白かった。だが、本作では、前作であれだけロジャー・コーマン版007に愛を捧げ、コミカルさを引き継ぎつつも独自性を生み出したものに対し、あれはなかったことにしてねと言わんばかりの「茶化し」を終始行なっているのだ。

マシュー・ヴォーンへの苦情2:前作の様式美を簡単に破壊する愛のなさ

前作を簡単に茶化すとどうなるのか?

それは一気にさむ〜い事態と化す。

例えば、ハリー。前作で死んだ筈の彼が復活している。ハリーを復活させる代わりにある制約を本作は組み込んでいる。ステイツマンがハリーを復活させる際に、蝶類学者という設定を与えてしまったが故に、ハリーは時折、蝶の幻覚が見えてしまい動けなくなるという制約だ。

そして、有名な“Manners maketh man”の再現にその要素を噛ませる。ハリーがアメリカのバーでゴロツキに絡まれる。そこで、彼は立ち去る素振りを見せて、”Manners maketh man”という。前作を知っている人は、「20分ぐらい前まで記憶を失っていたハリーが完全復活した!」と思うだろう。そして、ハリーのキレッキレのアクションにより、物語はキングスマンとステイツマンの最強コンビによる無双モードへ転がると思うだろう。

しかし、観る者を待ち受けていたのは、「ハズしギャグだ」。ハリーは傘でグラスを投げ飛ばすのだが、ゴロツキに当たらない。そして、彼らによってフルボッコにされてしまうのだ。その尻拭いをステイツマンのウイスキー(ペドロ・パスカル)が行う。縄でゴロツキを滅多打ちにするのだ。

観ていて哀しくなった。こんなハリーを私は観たくなかった。前作であれだけ大切に作り上げた名シーンをマシュー・ヴォーン監督が簡単に壊してしまうその横暴さに段々腹が立ってきた。

マシュー・ヴォーンへの苦情3:パロディの軸がブレている

では、100歩譲って、これは『キングスマン』のパロディ映画だとして観たとしよう。だったら、潜水艇に車がトランスフォームして突き進む『007 私を愛したスパイ』や雪山ロープウェイでのアクションがある『女王陛下の007』を軽くパロディとして使うのはどうかと思う。やるなら、『キングスマン』独自のシチュエーションを考えるか、本家を超えるヴィジュアルにしなくては単なる寒いジャブ止まりだ。

マシュー・ヴォーンへの苦情4:ギャグのキレが失われた演出

では、何故こうもギャグやユーモアのキレが無くなってしまったのか?

それは、間の使い方や説明の取捨選択がよくないからといえよう。本作で唯一と言ってもいい面白かった場面である、人間ハンバーガーのシーン。ジュリアン・ムーア扮するポピーが2人の男を戦わせる。そして、負けた方をそのまま、ミンチ機にぶち込む。そして、ポピーは「向かいの建物でエステを受けてらっしゃい」と言う。

そして勝者の男が戻ってくるとハンバーガーができていて、「どうぞ召し上がれ」と言う。

この時の、カメラワークと間の使い方は前作を超える者があった。その間を全編に渡ってやって欲しかったのだが、残念ながらそこで終わってしまう。上記で語った”Manners maketh man”のシーンもそうだが、全体的に語りすぎているイメージが強い。

特に顕著に表れているのが、ポピーの基地に潜入する際の地雷のやり取り。ハリーとエグジーとマーリンが見つめ合うシーンを多く挿入しすぎて、くどい。シンプルにマーリンが「お前ら行け!」と言う。そして彼が『カントリー・ロード』を歌う。そして警備員がマーリンの元へ集まる。そして、エグジーとハリーがダッシュで突入する。振り返る警備員。マーリンはニヤリと笑い、自爆するという流れで良かったのではと思った。

別にマーリンが頭突きで一人倒すシーンは要らない。

マシュー・ヴォーンへの苦情5:キングスマン要らないのではと思わせてしまう脚本

そもそも、本作においてキングスマンは必要だったのだろうか?

エグジーたちは勝手にステイツマンのところへ転がり込んで、彼らの邪魔ばかりしているように見えた。その際たるところは、ハリーが雪山での死闘中にステイツマンのウイスキーを「こいつと一緒に行動できない」といい射殺してしまうところにある。

ウイスキーの理念は、麻薬を使ったやつが悪いんだ。彼らは死んだってしょうがないというものだった。如何にも個人主義なアメリカ的思想。アメリカのおんぶに抱っこで介抱してもらっている立場の人間がこうも簡単に恩を仇で返していいものなのだろうか?

もしその設定で物語を進めるのであれば、ステイツマンとキングスマンが全面戦争する必要がある。でなければ、最後にステイツマンが「君たちにウイスキーのコードネームをあげよう」というのは非常に不可解なものといえる。なんたって、味方を殺しているのだから。

それに物語の裏テーマが、麻薬戦争とそれに対するアメリカの対応というここ数年の時事問題をおちょくっている。それだけに、イギリスとアメリカの組織に差異を儲けるのであれば、ステイツマンは最後まで自分の身は自分で守る系の個人主義を貫き通して、麻薬は自業自得という主張で物語を進めて欲しかった。

麻薬問題はアメリカだけの問題ではない。だから助けなければいけない!という立場をキングスマンに託して、対立させれば、両組織のコントラストがハッキリして、娯楽作品としても面白く、且つ政治的テーマも内包できる傑作になれたのではないだろうか。それなら、ウイスキーが殺される理由もよく分かる。

ただ、本作を観る限り、キングスマンは邪魔者の他以外の何者でもなかった。

→NEXT:マシュー・ヴォーンへの苦情6~10

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