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『死んだってへっちゃらさ』クレール・ドゥニ幻の作品を新文芸座で!

『死んだってへっちゃらさ』クレール・ドゥニ幻の作品を新文芸座で!

死んだってへっちゃらさ(1990)
S’EN FOUT LA MORT(1990)


監督:クレール・ドゥニ
出演:イザーク・ド・バンコレ、アレックス・デスカス、
ソルヴェイグ・ドマルタンetc

評価:80点

新文芸坐でクレール・ドゥニ特集が組まれてました。今回なんと『死んだってへっちゃらさ』がラインナップに入っていた。これは私の聖書『死ぬまでに観たい映画1001本』に掲載されているものの、日本では未DVDであり、アマゾンで輸入DVDを買おうにも取り扱ってない幻の映画だ。ただでさえ、日本では鑑賞困難なクレール・ドゥニ作品群の中でもトップレベルにレア度が高い作品だ。

内容も、クレール・ドゥニ監督がモンテ・ヘルマンの『コックファイター』に影響されて作ったという闘鶏映画。これは面白くないわけがない。

ってことで、自主プレミアムフライデーを発動して観てきました。

『死んだってへっちゃらさ』あらすじ

西インド諸島マルティニーク出身の黒人ジョスリンとアフリカベナン出身の黒人ダーは金持ちになるのを夢見てBARの裏側で開催される闇賭博「闘鶏」にのめり込むが…

フランスの黒人の内面が分かる!

冒頭から面白い。「人は国籍、宗教、信条、イデオロギー関係なく誰でも可能性を持っている」というテロップから始まると、一人の黒人が全く同じことを語る。独特な反復におっ!と引き込まれる。そしてタイトルの『死んだってへっちゃらさ(S’en fout la mort)』の意味に驚いた。なんと闘鶏に出る鶏の名前だったのだ。日本語の響きからすると、「えっこんなのを動物の名前にするの?」と思うかも知れないが、是非とも発音してほしいゾン・フ・ラ・モーと。かっこいいでしょ!


そして、西インド諸島マルティニーク出身の黒人ジョスリンとアフリカベナン出身の黒人ダーがフランスで裕福になる夢を抱き闘鶏ギャンブルに明け暮れる様子が描かれる。

映画評論家大寺さんの講義によると、日本人からは同じ黒人に見えても、黒人同士お互いを比べあっている。フランスの植民地ということに誇りをもっているマルティニークの黒人像が象徴的だということ。それを踏まえるとNetflixにあがっているナイジェリア映画『オクラを買いに行かせたら(GONE TOO FAR!)』に近い洞察力がそこにあった。

一見シンプルな闘鶏映画。それこそ、バトルに夢中になり鶏に愛情を抱く様子は、ポケモンにおけるサトシとピカチュウの関係に近い。

しかし、よくよく見てみると、フランスに暮らすと誰しもが抱く目線が鋭く怖い黒人が何を考えているかを徹底して掘り下げた作品と言えるだろう。上野や原宿にいる黒人は陽気でフレンドリーな人が多く、テレビでもそういった黒人しか出てこないので、日本人はどうしても黒人=面白い人というイメージを持ってしまう。だから欧米で黒人差別が行われていることに、なんで?と思うかも知れない。ただ、実際に欧米に住むと、特にフランスに住むと、そこにいる黒人は殺気だった目で我々を見てくるからメチャクチャ怖い。『最強のふたり』以前の日本に来るフランス映画では全く黒人が出てこなかった、出てきても背景に過ぎなかっただけに日本人には信じがたいことだが、それが事実。クレール・ドゥニそういった殺気だった黒人が何を考えているかを心の声という映画文法的に多用厳禁な手法を惜しみなく使うことで、見事に描ききったのだ。

神話的で深い深い闇に足を突っ込んだような作品でした。

P.S.それにしても…

エンドロールで、お馴染みのテロップ「この映画では動物に危害を加えていません」と出てきたのだが、どう考えても鶏死んでいるだろうとしか思えなかった。死んだってへっちゃらさ!テロップの載せればってノリなのかな?逆にどうやって撮ったのか気になりました。

クレール・ドゥニ映画レビュー

【カイエ・ドゥ・シネマ週間】「美しき仕事」観た者の人生観を変える一本
【カイエ・ドゥ・シネマ週間】「パリ、18区、夜。」クレール・ドゥニのシリアスすぎるパリ事情
【TIFF2017】「レット・ザ・サンシャイン・イン」クレール・ドゥニの観る官能小説

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