評価

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『DAU. New Man』初心者のための『DAU. Degeneration』

正直、『DAU. New Man』単体であれば非常に面白い作品だ。まさしく若松孝二の『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』のような理想を抱き、己の肉体を鍛錬する者たちがドンドン腐敗していき組織が破壊されて行く様子が生々しく描かれて行く。ソ連の閉塞感というものを捉えるには十分な作品であり、スキンヘッドの男マキシム(Maksim Martsinkevich)がX-MENに出てきそうな人体実験に励んだり、刑務所のような場所で格闘訓練をしたりする場面は視覚的面白さがある。男性的訓練が女=弱い存在に対して搾取して行く様子もよく描けている。その積み重ねが上手いので、終盤の破壊シーンに説得力が帯びていき、抑圧された世界に対する怒りの再現として傑作になっている。

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【ネタバレ】『フィッシング・ウィズ・ジョン』どうせ俺たちゃサグライフ

qp COLA a(@Na_Chos_)監督、(株)おくりバント社長 高山洋平(@takayamayohei1)主演で2020年コロナ禍から製作されているTwitter映画シリーズ第3弾『FISHだ!!JOE』。監督が「チェ・ブンブンに分からない映画ネタを仕込もう」と言うことで本作の骨格に『フィッシング・ウィズ・ジョン』が起用された。本作はジム・ジャームッシュ映画初期作品の常連ジョン・ルーリーが、毎回友人と一緒に釣りをするテレビシリーズだ。『FISHだ!!JOE』におけるサイケデリックな音楽や、拳銃でタイを仕留めようとする高山さんの姿はこの作品から来ている。ジム・ジャームッシュやウィレム・デフォー好きながらもこのシリーズは全く知らなかった。面白そうだったので取り寄せて観賞したのだが、とてつもなく狂った内容でした。

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『カポネ』黄昏のスカーフェイス

アル・カポネといえば、禁酒法時代に酒、売春、賭博で一大組織を作り上げた犯罪王だ。そんなアル・カポネの映画ときいたら、熱いドラマをイメージするだろう。しかしながら、『カポネ』ではひたすら情けないアル•カポネしか描かれていない。歴史に名を刻む人物であっても、情けない引き際はあると語ると同時に、本作ではジョシュ・トランクの陰鬱な精神状態が世界を侵食している。アル・カポネの話なのに、『バートン・フィンク』の世界に紛れ込んだジョシュ・トランク自身が見えてしまっている狂った映画なのだ。

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『北の橋』ドラゴンの滑り台とガチ喧嘩する女

パリのライオン像に向かって煽り運転するバチスト(パスカル・オジェ)、刑務所から出所し彷徨う女マリー(ビュル・オジエ)が激突する。ガール・ミーツ・ガールだ。何故か、マリーのことをストーカーし始めるバチスト。マリーには恋人がいるらしいのだが、彼は何かの陰謀と戦っているらしい。バチスとはその恋人のカバンを奪い、中から地図を見つける。ヘブライ語で描かれた目印、パリの地図にぐるぐると蜘蛛の巣状に張り巡らされたものを見て、これは双六だと妄想を膨らませる彼女たちは、地図を頼りにミッションをクリアしていく。

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『赤い天使』若尾文子、恋のライバルはモルヒネ!

従軍看護婦の西さくら(若尾文子)は、陸軍病棟に赴任する。問診で部屋に入ると、欲望にまみれた男たちが舐めるように彼女を見つめている。その夜、巡回で同じ部屋を訪れた彼女は男たちに襲われてしまう。主犯の男はその罪で戦場へ送り出された。彼女の地獄はまだ続く、転属となった病棟では常に怪我人が運ばれてくる。手術を待つ間に亡くなり、手術中にも亡くなり、手術後にも亡くなり、ひたすら男が埋葬されていく地獄。彼女はその地獄のシステムに呑まれていき、男に尽くそうとする。そして、モルヒネに依存する岡部軍医(芦田伸介)に恋を抱く。

2021映画

【VHS】『ときめきメモリアル』全員ツンデレ、地獄で天国な海の家

主人公、鈴木明彦(岡田義徳)はウォールフラワーな高校生。勉強もスポーツもイマイチで、一人補講を受けている程だ。そんな彼は女性と付き合いたい欲にまみれており、女子更衣室を友人と一緒に覗きに行くの。女子更衣室の中心に立ち、光を浴びるシーンが美しくも気持ち悪さが充満している。そこへクリシェがごとく女子が雪崩れ込んでくる。ロッカーに隠れる明彦。彼の手汗にぎるスリルと、欲望からくる爬虫類的眼差しの先で女子がガールズトークをする。ここで今回のヒロインたち、西村小麦(榎本加奈子)、遠野波絵(中山エミリ)、原田夏海(矢田亜希子)、横山美潮(山口紗弥加)の自己紹介が始まる。今の映画であれば、VFXでテロップを出して名前の紹介をしてしまうのだが、本作ではロッカーに貼ってあるシールで顔と名前を一致させるのだ。新鮮である。

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『Fourteen』脆い友情への処方箋

本作では対照的な女性マーラとジョーにフォーカスが当たっている。昔からの友達である二人。マーラは保育園で働いており、きめ細かく面倒見が良い。一方でジョーは精神が不安定なソーシャルワーカーである。お金をカバンにドサっと入れていたり、申請書を一人で書けなかったり、一緒に歩いていたら急に消えてブラウニーを買い始めたりとなかなかの社会不適合者である。そんな彼女のことを救えるのは自分しかいないとマーラは手を差し伸べ続けるのです。友人はほっとけないと。

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『ロード・オブ・カオス』停滞に鮮血、それは絶望か希望か?

「メイヘム」を描いた伝記的本作は、音楽伝記映画にもかかわらずテンションは一定を保っている。てっきり、ミュージシャンのドラマティックな人生が展開されるのかと思いきや、停滞に停滞を重ね、微かなステージに立つ時だけが盛り上がりの絶頂となっている。予告編でも魅せてくれる教会炎上シーンも、静かで地味だったりする。これはどういうことだろうか?先日観たデヴィッド・クローネンバーグの『クラッシュ』に近いものを感じた。内なる暴力性の静かな爆発に癒しを求める者たちが停滞のモヤモヤの中で自己を解放させる場所を追い求めているのではないだろうか?彼らは満足しない。あまり客がこないレコード屋で駄話をし、部屋の一角で練習をする。一般人の平凡な人生と変わりない。その中で些細な変化を求める者たちのもがきが生々しく描かれている。だから、伝説的ミュージシャンの遠い世界の物語ではなく、我々の物語のようにみえるのだ。今、コロナで閉塞に押し込められ、微かな変化を求めてもがき苦しむ者にとってこの作品は救いの処方箋となることでしょう。