考察

2021映画

【OAFF2021】『ナディア、バタフライ』身体の一部が喪失する倦怠感

何十年も、一つのことに没頭してきた者がそれを失う時、そこには大きな喪失感が生じる。本作は東京五輪をテーマにしたスポーツ映画でありながら、試合のシーンを横に置くユニークな演出が特徴的な作品だ。通常の映画であれば、引退する水泳選手の物語を描くのであれば、最後に有終の美としての泳ぎを魅せる。しかしながら、『ナディア、バタフライ』は冒頭20分で練習の場面と最後の試合の場面を完了させてしまうのだ。そして、その場面がとてつもなくスリリングで美しい。

サンクスシアター

【 #サンクスシアター 8 】『お嬢ちゃん』美人という仮面に封殺された者

主人公、みのり(萩原みのり)は観光地の甘味処でバイトする美人な大学生。しかしながら、彼女は目の前にある不条理には我慢できず、友人がチンピラに襲われようものならそのチンピラに噛み付く。コンパで、嫌な想いをしているのにそれをひた隠しにしてまたコンパに行こうとしている状況にも物申す。通常でなら、空気の読めない人として人間関係が絶たれて終わるのだが、彼女は「美人」という仮面をつけられているため、どんなに嫌なことを拒もうとしても粘着質に彼女をなだめることでその場に留めようとする。

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『北の橋』ドラゴンの滑り台とガチ喧嘩する女

パリのライオン像に向かって煽り運転するバチスト(パスカル・オジェ)、刑務所から出所し彷徨う女マリー(ビュル・オジエ)が激突する。ガール・ミーツ・ガールだ。何故か、マリーのことをストーカーし始めるバチスト。マリーには恋人がいるらしいのだが、彼は何かの陰謀と戦っているらしい。バチスとはその恋人のカバンを奪い、中から地図を見つける。ヘブライ語で描かれた目印、パリの地図にぐるぐると蜘蛛の巣状に張り巡らされたものを見て、これは双六だと妄想を膨らませる彼女たちは、地図を頼りにミッションをクリアしていく。

2021映画

【ネタバレ考察】『デッドゾーン』クローネンバーグはドナルド・トランプと闘っていた?

主人公ジョニー(クリストファー・ウォーケン)は、デートの帰り道、交通事故に遭ってしまい昏睡状態となる。5年後、目覚めた彼は、人の手を握るとその人の未来や過去が見える能力が備わっていた。マスコミに注目される彼は一応、警察に手を貸してみるが、あまりに凄惨な事件を目の当たりにしゲンナリしていく。そんなある日、彼はPR活動をしている上院議員候補スティルソン(マーティン・シーン)と握手を交わすと、彼が核ミサイルのスイッチを押している未来が見えてしまう。それを阻止しようと、彼は暗殺を企てようとするのだ。

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【ネタバレ考察】『無頼』井筒和幸のジャパニーズマン

マーティン・スコセッシがギャングのクロニクルを『アイリッシュマン』でスタイリッシュに描いていた。日本では今『ヤクザと家族』、『すばらしき世界』、『孤狼の血 LEVEL2』と空前のヤクザ映画ブームとなっているが、そこに井筒監督は重厚なクロニクルとして『無頼』を置いた。アイリッシュマンに対して、これがジャパニーズマンであると言いたげに。