カイエ・デュ・シネマ

2021映画

『レディ・イン・ザ・ウォーター』シャマランが考える多様性とは?

M・ナイト・シャマラン『オールド』が公開されるや否や、Twitterでは賛否両論が分かれている。M・ナイト・シャマランはかつて町山智浩が『シックス・センス』や『ヴィレッジ』がパクリ映画だみたいなことを言ったこともあり、また『シックス・センス』のどんでん返しが凄すぎたこともあり、割と過小評価されがちの監督である。だが、彼の醍醐味はどんでん返しがどうとか、スリラーがどうとかそこにはなく、独自の歪んだハリウッド映画を魅せてくれるところにある。『アンブレイカブル』でアメコミヒーロー映画の最初にありがちな平凡な男がヒーローに目覚めるまでの過程をじっくりと描いた後、10年以上の時を経て『スプリット』、『ミスター・ガラス』と2010年代映画のテーマである「ユニバース」の文脈に歩み寄ってみせた。『サイン』、『ヴィジット』ではよくあるハリウッドポップコーン映画の文法で作りながら、時折シャマラン独自のユーモアを挿入してきてスパイスとなっていた。こうした、クリシェ外しがカイエ・デュ・シネマにウケているせいかたまに年間ベストに入ったりします。

2021映画

【ネタバレ考察】『ドライブ・マイ・カー』5つのポイントから見る濱口竜介監督の深淵なる世界

本作は村上春樹「ドライブ・マイ・カー」の映画化であるが、映画の始まりは肉体を交える度に物語る女を描いた「シェヘラザード」である。この引用に私はしびれた。「ドライブ・マイ・カー」は幾ら戦略的に描かれているとはいえ、2013年時点で「男らしさ/女らしさ」を語る手法に古臭さを感じた。村上春樹の女とはこうあるべき論が批判的に描かれているように見えて、彼の本心なんじゃないかと思うところがあった。

映画では、そういった原作にある「男らしさ/女らしさ」の話を巧みに解釈し、2020年代に相応しい普遍的な物語へと昇華している。

2021映画

【ネタバレ】『Go Go Tales』ウィレム・デフォーのイケイケ物語!

正直、『アンカット・ダイヤモンド』が登場した今考えると、本作の修羅場修羅場の釣瓶打ち映画としてはワチャワチャし過ぎてそこまで評価は高くない。ましてや『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』を引用しているという点でも、どうしてもジョン・カサヴェテスの舐めるような撮影に劣る部分がある。しかし、それでもウィレム・デフォーの常時ガンギマリな演技は大迫力である。

2021映画

【MUBI】『荘園の貴族たち/MALMKROG』貴族のマウント合戦に参加しないか?

本作は偶然にもコロナ禍とリンクしており、前作『シエラネバダ』では狭い部屋に何人もの人を密集させてルーマニア史における世代断絶によるヒリヒリとした会話と遅々として進まない物事が描かれてきたのに対してこの『MALMKROG』では終始ソーシャルディスタンスを取りながら同様の属性違いによる意見の対立とマウント合戦が描かれていく。間合いを取り、終始絵画的構図を作っていく人間の配置の美学に圧倒される一方で、展開される哲学的な議論は非常に難解で一度観ただけではわからないところも多い。内容と歴史背景に関しては他の方に考察を譲りたいと思う。