2021映画

【YIDFF2021】『丸八やたら漬 Komian』亡き地は思い出されない

さて、2021年。山形国際ドキュメンタリー映画祭は苦境に立たされる。前年初めから始まった新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが終息せず、映画祭に襲い掛かったのだ。開催か、中止か、苦渋の決断の上、本祭はオンライン開催に踏み切った。しかし、作品数は削減され小規模なものとなった。さて、もう一つ本祭にとって悲しい出来事があった。映画祭期間中、映画関係者と映画ファンがボーダーレスに語り合える空間であった香味庵こと老舗漬物店「丸八やたら漬」が年々需要が減少している漬物のニーズ、そして新型コロナウイルスの影響で135年もの歴史に幕を閉じたのです。個人的な思い出話になるが、2019年に訪れた際の盛り上がりの消失はあまりにも辛いものがある。文化の要塞となった、香味庵の喧騒の中で、老若男女、目当ての映画、今日観た作品の感想を語り合う。何気なく話していたら、それが監督だったり映画評論家だったりする。そして気が付けば、24時。シンデレラなら一目散に解散せねばならぬ刻となる。この高揚感が楽しく、映画仲間と「2年後またここで盛り上がろう」と契りを交わした。それが果たせなくなってしまったのだ。

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『誰かがあなたを愛している』華やかだけがアナザースカイではない。

海外留学、華やかなイメージを持つかもしれません。実際に日本で聞く留学話は楽しい話がメインだ。コミュ強、陽キャラの物語が支配している。だが、フランスに留学したことがある私に言わせれば、ネガティブな話も少なくはない。例えばアジア人は白人から、または英語圏の人からは忌避される傾向があるなんていうのは代表的だ。頑張って日本人以外のコミュニティから飛び出しても、様々な人種が議論しあったり、遊びに行ったりする状況はあまり生まれなかったなと記憶している。また、ワーキングホリデーに行った友人はどん底のようなコミュニティで低賃金労働に揉まれ苦言を呈していたりするから、海外に行く=楽しいの方程式は成り立たない。それは海外旅行と勘違いしていると思っている。さて、香港映画『誰かがあなたを愛している』を観た。これが面白いアナザースカイ映画だった。

【読書感想文】『理不尽ゲーム』ベラルーシの理不尽あるある早く言いたい

Twitterで話題となっていたベラルーシのディストピア小説「理不尽ゲーム」を読みました。コロナ禍になって日本はルーマニアのような東欧の閉塞感の空気を帯びてきたなと感じるこのところ、ベラルーシは欧州最後の独裁国家と言われるらしくルカシェンコ体制から逃れるように東京五輪後亡命する選手がいるほど過酷な国なんだとか。「理不尽ゲーム」はそんなベラルーシ社会を取り巻く閉塞感をディストピア小説として書いた代物だ。こうした作品が日本に翻訳されて入ってくるとは嬉しい限り。早速読んでみました。

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【SKIPシティ国際Dシネマ映画祭】『鬼が笑う』半田周平の怪演に注目

映画祭シーズンである。イメージフォーラム・フェスティバルと同時にSKIPシティ国際Dシネマ映画祭にも精を出してんやわんやである。さて、先日TwitterでSKIPシティ国際Dシネマ映画祭のことをつぶやいたら『鬼が笑う』関係者と思しきアカウントから執拗にいいねが来た。これは私に観て欲しいのだろうか。通常はそういうのは逃げてしまうのですが、乗ってみることにしました。

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【ネタバレ考察】『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』失われたマドレーヌを求めて

James Bond…License to kill…History of violence…

映画館ですっかり擦り込まれること約2年。ようやくダニエル・クレイグボンド最終章『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』が日本公開されました。Twitterでは台風の負けんじと10/1(金)初日に映画館に駆けつけたものの、あまりの微妙さに荒れている人が多数観測された。まさか007で、あの面白そうな予告編でそんな大暴投はないだろうと思ってTOHOシネマズららぽーと横浜で観てきました。確かに、大暴投はなかった。『闇の列車、光の旅』、『ビースト・オブ・ノー・ネーション』のキャリー・ジョージ・フクナガ監督なので堅実な映画作りをしている。だが、その真面目さ故かあまりにも退屈だった。007でここまでつまらなくできるのかと思うほどに退屈だったのです。今回は、そんな悲しい駄作『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』に対してネタバレありで文句を徒然なるままに書いていきます。

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【IFFF2021】『ロック・ボトム・ライザー』ファーン・シルヴァはロック様がお好き?

イメージフォーラム・フェスティバルは毎年実験映画が熱い。最近だと、往年の映画の星空を集めた『★』が話題となった。さて今回初めてイメージフォーラム・フェスティバルに臨むにあたって謎の実験映画に挑戦しようと『ロック・ボトム・ライザー』を観てみた。本作は第71回ベルリン国際映画祭Encounters部門でスペシャルメンションを受賞している。

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【JAIHO】『ゼロ・モティベーション』モティベーションをへし折るブルシット・ジョブの洪水

日本未公開映画を紹介する映画ブロガーゼロモチベーション済藤鉄腸さん( @GregariousGoGo )のTwitterネームの由来であるイスラエル映画『ゼロ・モティベーション』が2021年10月10日(日)〜2021年11月8日(月)の期間、映画配信サービスJAIHOで観られます。監督のタリア・ラヴィといえば、第16回大阪アジアン映画祭で上映された『ハネムード』で軽快ユニークなコメディを撮ったことが記憶に新しい。そんな、タリア・ラヴィ監督作『ゼロ・モティベーション』を試写にて一足早く観させていただきました。

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【ネタバレ考察】『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』ハリボテのマスクは、アバターを現実に引き摺り出す

イメージフォーラム・フェスティバル2021でルーマニア・ニューウェーブの鬼才ラドゥ・ジューデの新作『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』が上映された。本作は第71回ベルリン国際映画祭で最高賞である金熊賞を受賞しており、またコロナ禍を扱っていることで話題となった作品だ。当ブログでも『THE DEAD NATION』、『UPPERCASE PRINT』を紹介し、監督のユニークな演出に驚かされてきたわけですが『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』それらを遥かに超える進化を魅せてくれました。尚、ネタバレ考察記事です。

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【MUBI】『DADDY AMIN』エジプトのサザエさんはアメリカのミュージカルに羨望を抱く

今、MUBIではエジプトの巨匠ユーセフ・シャヒーン初期作特集が行われており、日本からでも「死ぬまでに観たい映画1001本」に掲載されている『カイロ中央駅』をはじめ、『THE BLAZING SUN』、『DARK WATERS』、『THE DEVIL OF THE DESERT』、そして『DADDY AMIN』の5作品が観られる。エジプトは歴史学的に「アフリカ」という括りから外されることが多く、「ブラック・アフリカの映画」では最古のアフリカ映画として1955年のセネガル映画『セーヌ湖畔のアフリカ(Afrique-sur-Seine)』を挙げている。この本ではサハラ砂漠以南のアフリカをアフリカ(=ブラック・アフリカ※現在の言い方だとサブサハラアフリカ)と定義している。だが、エジプトを含むと、もう少し古くから映画は存在する。事実、ユーセフ・シャヒーンは1950年にミュージカル映画『DADDY AMIN』を製作しているのだ。ということで、今回は本作の感想を書いていく。