2021映画

【ネタバレ考察】『デッドゾーン』クローネンバーグはドナルド・トランプと闘っていた?

主人公ジョニー(クリストファー・ウォーケン)は、デートの帰り道、交通事故に遭ってしまい昏睡状態となる。5年後、目覚めた彼は、人の手を握るとその人の未来や過去が見える能力が備わっていた。マスコミに注目される彼は一応、警察に手を貸してみるが、あまりに凄惨な事件を目の当たりにしゲンナリしていく。そんなある日、彼はPR活動をしている上院議員候補スティルソン(マーティン・シーン)と握手を交わすと、彼が核ミサイルのスイッチを押している未来が見えてしまう。それを阻止しようと、彼は暗殺を企てようとするのだ。

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【VHS】『ときめきメモリアル』全員ツンデレ、地獄で天国な海の家

主人公、鈴木明彦(岡田義徳)はウォールフラワーな高校生。勉強もスポーツもイマイチで、一人補講を受けている程だ。そんな彼は女性と付き合いたい欲にまみれており、女子更衣室を友人と一緒に覗きに行くの。女子更衣室の中心に立ち、光を浴びるシーンが美しくも気持ち悪さが充満している。そこへクリシェがごとく女子が雪崩れ込んでくる。ロッカーに隠れる明彦。彼の手汗にぎるスリルと、欲望からくる爬虫類的眼差しの先で女子がガールズトークをする。ここで今回のヒロインたち、西村小麦(榎本加奈子)、遠野波絵(中山エミリ)、原田夏海(矢田亜希子)、横山美潮(山口紗弥加)の自己紹介が始まる。今の映画であれば、VFXでテロップを出して名前の紹介をしてしまうのだが、本作ではロッカーに貼ってあるシールで顔と名前を一致させるのだ。新鮮である。

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『Fourteen』脆い友情への処方箋

本作では対照的な女性マーラとジョーにフォーカスが当たっている。昔からの友達である二人。マーラは保育園で働いており、きめ細かく面倒見が良い。一方でジョーは精神が不安定なソーシャルワーカーである。お金をカバンにドサっと入れていたり、申請書を一人で書けなかったり、一緒に歩いていたら急に消えてブラウニーを買い始めたりとなかなかの社会不適合者である。そんな彼女のことを救えるのは自分しかいないとマーラは手を差し伸べ続けるのです。友人はほっとけないと。

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『ロード・オブ・カオス』停滞に鮮血、それは絶望か希望か?

「メイヘム」を描いた伝記的本作は、音楽伝記映画にもかかわらずテンションは一定を保っている。てっきり、ミュージシャンのドラマティックな人生が展開されるのかと思いきや、停滞に停滞を重ね、微かなステージに立つ時だけが盛り上がりの絶頂となっている。予告編でも魅せてくれる教会炎上シーンも、静かで地味だったりする。これはどういうことだろうか?先日観たデヴィッド・クローネンバーグの『クラッシュ』に近いものを感じた。内なる暴力性の静かな爆発に癒しを求める者たちが停滞のモヤモヤの中で自己を解放させる場所を追い求めているのではないだろうか?彼らは満足しない。あまり客がこないレコード屋で駄話をし、部屋の一角で練習をする。一般人の平凡な人生と変わりない。その中で些細な変化を求める者たちのもがきが生々しく描かれている。だから、伝説的ミュージシャンの遠い世界の物語ではなく、我々の物語のようにみえるのだ。今、コロナで閉塞に押し込められ、微かな変化を求めてもがき苦しむ者にとってこの作品は救いの処方箋となることでしょう。

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【アフリカ映画】『IN THE NAME OF CHRIST』コートジボワールの不穏すぎる儀式

豚を仕留めようとする男。彼はナイフを研ぎ、そろりそろりと豚に近づき殺めようとする。しかし、豚におしっこをかけられてしまう。それを見ていたチンピラがケラケラと笑い、村人の女性からも見下しの目が注がれる。学校でクラスメイトから笑われる羞恥の厭らしさを伝えるのに十分な笑みが画面を木霊する。

怒れる男は森の中で暴れている。自ら儀式を行なっているようだ。しかし、『メートル・フ』で描かれるガーナ・ハウカ運動のように異常な動きを行う主人公に観る者は恐怖を覚えることでしょう。『オーディション』で突然動き始める袋のような気持ち悪さがあります。そうこうしていると、子どもの霊が現れ次のように告げる。

「この世は酷い、貴方が世界を平和に導いてください。」

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【ネタバレ考察】『無頼』井筒和幸のジャパニーズマン

マーティン・スコセッシがギャングのクロニクルを『アイリッシュマン』でスタイリッシュに描いていた。日本では今『ヤクザと家族』、『すばらしき世界』、『孤狼の血 LEVEL2』と空前のヤクザ映画ブームとなっているが、そこに井筒監督は重厚なクロニクルとして『無頼』を置いた。アイリッシュマンに対して、これがジャパニーズマンであると言いたげに。

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【アフリカ映画】『アフリカン・カンフー・ナチス』ヒトラーと東條英機がガーナで大暴れ!

さて、ガーナアーリア人補完計画を進めるヒトラーと東條英機の横で、現地の空手稽古場が映し出される。遅刻してきた男が、罰を受けている中「今日の稽古の結果を見て試合出る人を選抜するぞ」とマスターが語り稽古が始まるのだが、そこで映し出されるものが本格的だ。イップマンシリーズで登場する、木の柱を使った練習に、瓦割りといったものをスタイリッシュなカット捌きで描く。当の遅刻してきた男に対する罰もジャッキー・チェン映画やショウ・ブラザーズ映画でよく見かけるものだったりする。後半になると、酔拳を学ぶシーンがあったりと稽古のバリエーションが豊かなのである。想像で描かれるなんちゃって空手映画とは趣きが異なる。この手の映画を十二分に研究した形跡があるのだ。それだけに映画全体から漂う、自主制作のポンコツ感との不協和音が凄い。