2021映画

2021映画

【 #サンクスシアター 12】『彼方からの手紙』彷徨える瀬田なつき

不動産屋の男・吉永(スズキジュンペイ)がお客さんに部屋を紹介すると、「他の店を当たります」と言われる。その真横をボールがぽんぽん飛び跳ね階段の下に落ちていき、客の対応とボールの確保どっちを優先すべきか迷っているうちに両方とも逃す。コンビニでレジに並ぶも全く店員が来なかったり、料理をしていると突然停電になって、そのまま足の小指を打ったりする。女の子のために物件のコピーを取ろうとすると何故か鼻血がベトっと原本についてしまい、それが印刷され、対処に手こずっている内に彼女は店を出てしまう。これら彼がアクションをしようとすると、それを無残に断ち切られてしまう姿が物語の後半に機能してくる。

2021映画

【告知あり】『コントラ KONTORA』後ろ向きに歩く男と邂逅する少女ムシェット in JAPAN

学校にも家にも居場所がなく、タバコを吸ったり酒を飲んだり、口答えしたり不良になろうとしているものの周囲はやんわりそれをスルーしてしまい生き地獄を感じている少女ソラ(円井わん)が、亡くなった祖父が遺した宝箱を手に入れる。そこの中には「鉄腕を埋める」というメッセージが書いてあり、彼女は非現実を求めて深淵の森で宝探しを始める。

一方その頃、町では後ろ向きに歩き続けるホームレス(間瀬英正)が出現する。車通りの多い道路をグルグルと回り始めたりと予測不能な動きをする彼に町人はドン引きする。案の定、自転車に轢かれたりするのだが、それでも後ろ向きに歩き続けるのだ。その二人が邂逅した時、物語は思わぬ方向に走り始める。

2021映画

【 #サンクスシアター 11】『ユートピア』インディーズが生んだ逆異世界転生もの

ある日、まみ(松永祐佳)が悪夢から目を覚まと、床に斧のようなものが刺さっている。恐る恐るベッドの上を見ると夢で見た女の子が寝ているではありませんか。むっくり女の子が起きると、何かを伝えようとしているのだが、英語でもない東欧系の謎の言語を話していて全く理解できない。通常、異世界転生ものでは都合よく言語の壁は解消されがちだ。あのリアル路線な「本好きの下克上」ですら、異世界の転生前の世界にない言葉だけ通じない設定にしているくらい言葉の問題は厄介なので御都合主義で処理されてしまう。

2021映画

【MUBI】『UPPERCASE PRINT』プロパガンダの皮をひらいてとじて

チャウシェスク政権下で見つかった落書き。自由を求めるメッセージが込められたその落書きを巡って秘密警察は動き始め、若者Mugur Calinescuが殺されてしまう。それを、テレビ番組のようなステージの上で人々が再構築していく。話されることは物騒なことばかりなのに、そこで挿入される映像は子どもが「おかあさんといっしょ」のような空間の中でワイワイ遊んでいたり、経済成長しているアピールをするCM、軍隊や市民による集団行動だったりするのだ。つまり、表面的には国家として成功しているように見えて、その実情は市民の声を踏みにじっている。それをまるで、シールをひらいてとじる感覚で演劇パートとフッテージを交差させることによって辛辣に社会批判してみせるのだ。プロパガンダの再構築によって新たな社会批評の方法を模索している監督にセルゲイ・ロズニツァがいる。彼は『国葬』の中でスターリン時代のプロパガンダを再構築することによって、プロパガンダで封殺されて市民の痛みを強調していたが、『UPPERCASE PRINT』の場合、淡々と喋る役者の演技とプロパガンダが悪魔合体することによって、痛みが継承されていく過程まで描けていた。

2021映画

『赤い天使』若尾文子、恋のライバルはモルヒネ!

従軍看護婦の西さくら(若尾文子)は、陸軍病棟に赴任する。問診で部屋に入ると、欲望にまみれた男たちが舐めるように彼女を見つめている。その夜、巡回で同じ部屋を訪れた彼女は男たちに襲われてしまう。主犯の男はその罪で戦場へ送り出された。彼女の地獄はまだ続く、転属となった病棟では常に怪我人が運ばれてくる。手術を待つ間に亡くなり、手術中にも亡くなり、手術後にも亡くなり、ひたすら男が埋葬されていく地獄。彼女はその地獄のシステムに呑まれていき、男に尽くそうとする。そして、モルヒネに依存する岡部軍医(芦田伸介)に恋を抱く。

2021映画

【ネタバレ考察】『デッドゾーン』クローネンバーグはドナルド・トランプと闘っていた?

主人公ジョニー(クリストファー・ウォーケン)は、デートの帰り道、交通事故に遭ってしまい昏睡状態となる。5年後、目覚めた彼は、人の手を握るとその人の未来や過去が見える能力が備わっていた。マスコミに注目される彼は一応、警察に手を貸してみるが、あまりに凄惨な事件を目の当たりにしゲンナリしていく。そんなある日、彼はPR活動をしている上院議員候補スティルソン(マーティン・シーン)と握手を交わすと、彼が核ミサイルのスイッチを押している未来が見えてしまう。それを阻止しようと、彼は暗殺を企てようとするのだ。

2021映画

【VHS】『ときめきメモリアル』全員ツンデレ、地獄で天国な海の家

主人公、鈴木明彦(岡田義徳)はウォールフラワーな高校生。勉強もスポーツもイマイチで、一人補講を受けている程だ。そんな彼は女性と付き合いたい欲にまみれており、女子更衣室を友人と一緒に覗きに行くの。女子更衣室の中心に立ち、光を浴びるシーンが美しくも気持ち悪さが充満している。そこへクリシェがごとく女子が雪崩れ込んでくる。ロッカーに隠れる明彦。彼の手汗にぎるスリルと、欲望からくる爬虫類的眼差しの先で女子がガールズトークをする。ここで今回のヒロインたち、西村小麦(榎本加奈子)、遠野波絵(中山エミリ)、原田夏海(矢田亜希子)、横山美潮(山口紗弥加)の自己紹介が始まる。今の映画であれば、VFXでテロップを出して名前の紹介をしてしまうのだが、本作ではロッカーに貼ってあるシールで顔と名前を一致させるのだ。新鮮である。