『プラダを着た悪魔』社会人になって観ると生々しすぎて別の面白さが滲みだす件

プラダを着た悪魔(2006)
The Devil Wears Prada

監督:デヴィッド・フランケル
出演:メリル・ストリープ、アン・ハサウェイ、エミリー・ブラント、スタンリー・トゥッチetc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

『プラダを着た悪魔』の続編が公開されるということで予習として観た。本作は、映画の熱狂的なファンではない仕事ができる非オタクな女性と雑談になった際に安牌なタイトルとして知られている。下手に得意でもない恋愛映画トークをふっかけて自爆するよりかは、この話をすると体感99%話が広がる。それぐらい特定の層の鑑賞率と支持率が高いのだ。中学生の時以来に観たのだが、これが『ウルフ・オブ・ウォールストリート』並みに面白かった。特に社会人になった今、そしてベンチャー企業がパワハラスレスレのハードな現場を白昼堂々YouTubeチャンネルに公開し、ゾス系企業が都市伝説ではないことが明るくなった今観るとあまりに生々しく現実的で治安の悪い物語に惹き込まれたのであった。

『プラダを着た悪魔』あらすじ

一流ファッション誌の編集部で働くことになった女性が悪魔のような上司に振り回されながらも奮闘し、成長していく姿を、アン・ハサウェイ&メリル・ストリープ共演で描いたコメディドラマ。

ジャーナリストを目指してニューヨークにやって来たアンディは、一流ファッション誌「ランウェイ」編集部の面接を受ける。ファッションには疎いアンディだったが、編集長ミランダのアシスタントとして採用されることに。しかしそれは、地獄のような日々の始まりだった。業界のカリスマとして恐れられるミランダは、朝から晩まで理不尽な命令を次々と突きつけてくる。服装もファッショナブルなものに変え、徐々にミランダの信頼を得ていくアンディだったが、自身の私生活はボロボロになっていき……。

ファッション誌「ヴォーグ」で編集長の助手を務めた経験のあるローレン・ワイズバーガーが、自身の体験をもとに執筆し、ベストセラーとなった小説を原作に、テレビシリーズ「セックス・アンド・ザ・シティ」のデビッド・フランケル監督がメガホンをとって映画化した。

映画.comより引用

社会人になって観ると生々しすぎて別の面白さが滲みだす件

会社という組織は《俺が法だ》が支配する独裁国家である。社会の倫理や、法治国家としての法よりも組織としての規範が支配している。そのことを知らずに、理想論や一般常識による正論で突き進むと、一発で粛清される怖い世界である。そして、そんな村社会では一見すると親しげな従業員同士でも複雑な政治戦が繰り広げられている。ステレオタイプなのは承知で、特に女性コミュニティはこの傾向が強く、私も粛清されたトラウマを抱えているので本作の生々しさは現実的だといえる。そもそも、この作品がファッション誌「ヴォーグ」で編集長の助手を務めた経験のあるローレン・ワイズバーガーの実体験に基づく小説の映画化なので、よく外資企業数年勤めて辞めた人がYouTubeチャンネルでドヤ顔しながら内情を語っているのと同類であり、信頼できない語り手の側面がある。

その上で中身について語っていく。ファッションなんか興味なく、ジャーナリストになるための踏み台にしか考えていないイキり就活生のアンディ。一流ファッション誌の鬼編集長ミランダの気まぐれで採用された彼女だったが、理不尽な雑用に振り回され、茶番にしか見えない服選びを冷笑していく。当然、先輩社員のエミリーを苛立たせる。だか、アンディは社内政治の天才だったため、影の実力者であるナイジェルを味方につけ、ミランダの心を掴んでいく。

本作には企業としてイカれているが社会問題にならずもみ消されるリアルな世界が描かれている。ミランダは乱雑に服をぶちまけ、怒涛の勢いで共有する。先回りできていなかったら冷たくあしらう。詰める以上に怖い冷たさが周囲の目に晒される中で行われる。従業員を辞めさせるときも、直接的な暴力ではなく、「4時間以内に『ハリー・ポッター』の未発売新刊の原稿を入手しろ、できなければあとはわかるね」と自主退職に迫るような圧をかけるのだ。こういうものはパワハラだと言っても証明が難しく泣き寝入りになることがほとんど。組織の規律に従わなければ生存できないこの世の悲しさがあるのだ。そして、アンディがシゴデキになるまでの成長物語のように思えるが、エミリー目線から見ると、単にノンデリで図々しくのし上がっていく天才を、一定水準の優秀さはありつつも突き抜けられない凡人が指を咥えて嫉妬の業火を燃やしながら見守るしかない構図になっている。流石にアンディの姿をみたら、イラっとして嫌味っぽく指導するなという点も完璧に再現されている。

続編ではミランダ側の苦悩、要は新入社員からは見えてこない経営層の苦悩も描かれているようで観るのが楽しみである。