『トゥ・ランド』ゴダール音響ギャグ炸裂

トゥ・ランド(2025)
Where to Land

監督:ハル・ハートリー
出演:ビル・セイジ、ロバート・ジョン・バーク、イーディ・ファルコetc

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

ハル・ハートリー11年ぶりの新作『トゥ・ランド』が公開された。本作はクラウドファンディングで制作された作品で当時、私も出資していたのだが、コロナ禍で仕切り直しとなった過去がある。資金はあれども、使用しないと税金で蒸発するということで、とりあえずの返礼としてDVDや本作の脚本を貰った。てっきり、企画は頓挫したのかと思っていたらいつの間にか完成していた。ということでユーロスペースで観てきた。

『トゥ・ランド』あらすじ

「トラスト・ミー」「シンプルメン」などでニューヨークのインディペンデントシーンを象徴する映画作家として知られるハル・ハートリーが、コロナ禍での制作中止を乗り越えて完成させた、11年ぶりとなる長編監督作品。隠遁状態だった映画監督が、余命わずかと勘違いされたことから起こる騒動を描くドタバタ喜劇。

58歳のジョー・フルトンは、かつてロマンチックコメディで人気を博した映画監督だが、今は半ば引退状態にあった。時間を持て余すのはよくないと考え、近所にある墓地で管理人の求人が出ていたことから、その仕事に応募する。一方、ジョーの恋人でテレビ界のスター、ミュリエルは、ジョーが遺言書を作ろうとしていることを知り、彼が余命わずかで終活しているのだと早とちりしてしまう。その勘違いはたちまち周囲にも広まっていき、ジョーのアパートには友人や知人、さらには見知らぬ若者たちまでが押しかけてくる。

ハートリー自身を思わせる主人公ジョー・フルトン役を、「シンプルメン」で主人公兄弟の弟を演じたビル・セイジが務めた。そのほか、「シンプルメン」「ブラック・クランズマン」のロバート・ジョン・バーク、「トラスト・ミー」「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」のイーディ・ファルコらが共演する。

映画.comより引用

ゴダール音響ギャグ炸裂

本作は、かつて『トラスト・ミー』や『シンプルメン』で一世を風靡し「死ぬまでに観たい映画1001本」にも掲載されたもの時代に忘れ去られつつあるハル・ハートリーが抱える中年の危機をコメディに落とし込んだような作品である。冒頭に挿入される荒波の船と現代における地味ながらもヒリついた道を歩む様は「オデュッセイア」を位相ずらして描いた「ユリシーズ」を意識したように思える。中年の危機に苦しむかつての人気映画監督ジョー・フルトンは墓地の管理人の求人に応募する。人生の黄昏をどう生きるか考えている彼は遺言状を書き始めるが、周囲に思わぬ影響を与えていく。

本作を観るとゴダールフォロワーな監督であったことを思い出す。『シンプルメン』で『はなればなれに』のオマージュをしていた彼は、ゴダールの黒画面や「じゃーん」といった異音を使いながらアンニュイな人生の余白に刺激を与えている。特に後者を使ったギャグは秀逸であり、「息子です」と電話がかかって来る場面でSEのように使用している様には思わず笑った。