『サタデー・ナイト・フィーバー』小さな勝利は敗北だと知る日まで

サタデー・ナイト・フィーバー(1977)
Saturday Night Fever

監督:ジョン・バダム
出演:ジョン・トラヴォルタ、カレン・リン・ゴーニイ、バリー・ミラー、ジョセフ・カリetc

評価:90点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

中学以来観ていなかった『サタデー・ナイト・フィーバー』をわけあって再観した。本作は私が映画好きになるきっかけとなった作品なのだが、実は映画より先にビージーズの楽曲だけ知っていた。ハッチポッチステーションでグッチ裕三が「クラリネットをこわしちゃった」との悪魔合体で主題歌をパロディにしていたのだ。「壊れたおんぼろクラリネット、捨てなさい、捨てなさい」と《Stayin’ Alive》を《捨てなさい》にズラすハイセンスさに子ども時代の私は感動したのだ。今回、映画を観直してみると、実は脚本の映画であったことがわかった。

『サタデー・ナイト・フィーバー』あらすじ

ディスコダンスに熱中する若者の恋と成長を描き、世界中にディスコブームを巻き起こしたジョン・トラボルタ主演の青春映画。ニューヨーク、ブルックリンのペンキ屋で働く青年トニーは、変化のない日常にうんざりしていた。そんな彼の唯一の楽しみは、土曜の夜に着飾って街へ繰り出し、ディスコで踊り明かすこと。ある日、いつものようにディスコを訪れた彼は、新顔の魅力的な女性ステファニーと出会う。素晴らしいダンスを踊るステファニーに惹かれたトニーは、彼女の自立した生き方に刺激され、自身を見つめ直していく。彼女と新しい人生を始めるため、優勝賞金500ドルのダンスコンテストへの出場を決意するトニーだったが……。2022年4月にディレクターズカット4Kデジタルリマスター版公開。

映画.comより引用

小さな勝利は敗北だと知る日まで

本作は大人の階段を登る過程を実に生々しく、絶妙なエピソードで物語ってみせる作品である。ジョン・トラヴォルタ演じるトニーは退屈なペンキ屋で働きながら、土曜日のディスコパーティーを生きがいにしていた。家族との関係は微妙である。特に兄がカトリックの司祭であることから、チャラい自分のことを家族はよく思ってないし、微妙な貧しさが彼を苛立たせ、現実逃避のごとくディスコへ向かわせた。そんなある日、ディスコで自分より巧いステファニーと出会い、魅了。強引な形でダンス大会へ出ようとする。

トニーはペンキ屋で退屈そうに働いているのだが、無能な訳ではない。寧ろ、飄々と仕事をこなす男であり、ヘッドハンティングの依頼が来るレベルである。だが、彼は将来のことは何も考えておらず現在の快楽にしか興味のない人物。それに周囲が困惑し、やんわり大人の世界を伝えようとしているのだが伝わらないところがミソとなっている。たとえば、ペンキ屋の店員がヘッドハンティング阻止のためにわずかながら給料を上げると言う。対してあまりにもあっさり承諾してしまう姿に店長はキレる。だが、「給料が上がったからいいじゃん」と何故彼が怒っているのかはわからない。ステファニーはステファニーで将来を見据えた際に、トニーがあまりにも未来を見ていない様に不安となる。近眼的上昇と高揚に満足してしまっているのだ。だが、クライマックスで彼はハッピーエンドではあるが自分としては納得のいかない状況に直面しようやく大人の世界が見える。

通常、こういった感情の繊細な動きは文学の方が適しているのだが、ジョン・バダム監督はディスコの高揚感の中でそれを描いてみせる。この超絶技巧に改めて驚かされた。