『The White Meadows』モハマド・ラスロフの意外な側面

The White Meadows(2009)

監督:モハマド・ラスロフ
出演:ハッサン・プールシラジ、Younes Ghazali、Mohammad Rabbani、モハマド・シルワーニ、Mohammad Rabbanipour etc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞し、先日行われた第77回カンヌ国際映画祭にて審査員特別賞を受賞したモハマド・ラスロフ。初めて観た彼の作品『Manuscripts Don’t Burn』がアスガー・ファルハディ寄りのイラン映画で、内容はともかく相性が悪かったので敬遠していた。しかし、ここに来て観ておいた方が良さそうな気がしたので『The White Meadows』を観た。意外というか、深刻なイラン政治が『Manuscripts Don’t Burn』のような作品を作らせたのであって、実際はもっと伝統的なイラン映画の豊かな画の中で社会批判をする作家であることが分かった。

『The White Meadows』あらすじ

Rahmat has been asked to meet the inhabitants of these islands to collect their tears. Although for years people have been giving their tears to Rahmat, no one knows exactly what he has been doing with them.
訳:ラフマットはこれらの島の住民に会い、彼らの涙を集めるよう依頼された。何年もの間、人々はラフマートに涙を捧げてきたが、彼がその涙で何をしてきたのか、誰も正確には知らない。

※IMDbより引用

モハマド・ラスロフの意外な側面

本作において船が独特な役割を果たしている。船を漕いで男がやってくる。地平線がグラデーションによって透過しており、心象世界のように思える場所から人が降り立ち、儀式的な群れの中へと入っていく。小瓶に涙を集め、死体を海に捨てる。独特な地上の景色を映画は捉えていくのだが、やがて生贄として女が海に運ばれる残酷な描写へと発展していく。女は「結婚したくない、死にたくない」と叫びながらも引きずり出され、炎がぽつぽつと灯っている海へと運ばれていく。群れが一定の方向へ儀式を行う際の荘厳さと怖さが静かにと伝えられていく。

正直、画が強烈過ぎて内容が脳裏を剛速球で通過したのもあるので、日本でラスロフ特集された際に再度観直してみたい作品であった。