湖の紛れもなき事実(2023)
Essential Truths of the Lake
監督:ラヴ・ディアス
出演:ジョン・ロイド・クルス、ヘイゼル・オレンシオ、シャイーナ・マグダヤオetc
評価:80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
東京国際映画祭恒例のラヴ・ディアスマラソン!
今年は215分と短めである。どうやら昨年の『波が去るとき』の前日譚らしい。ラヴ・ディアスファンとして早速観てみることにした。
『湖の紛れもなき事実』あらすじ
ドゥテルテ政権の圧政のなか、ヘルメス・パパウラン警部補は火山灰地の湖で起こった15年前の未解決事件を追い続ける。ロカルノ映画祭でパパウラン役のジョン・ロイド・クルーズが最優秀男優賞を受賞。
※第36回東京国際映画祭サイトより引用
ラヴ・ディアスの超スローモーション刑事もの
ここ近年のラヴ・ディアス映画はドゥテルテやマルコス政権に対する反発を地方から怒りを込めて描く傾向が露骨になっていた。その結果、映画を作るというよりか政治批判のツールとしての映画の側面が悪い意味で強くなってしまったと思う。それだけフィリピン社会が腐敗しているので仕方がないのであるが『痛ましき謎への子守唄』のような映画的表現をどうしても求めてしまう。その点、本作は映画的アプローチに戻ったラヴ・ディアス映画ともいえる。また、ラヴ・ディアス映画の中で最も分かりやすい内容なので、初心者にオススメしやすい一本ともいえる。
ヘルメス警部補は15年間、コードネーム:フィリピンワシと呼ばれる女エスメルダス失踪事件を追っていた。警察の体制に不満を抱き、同僚に文句を言いながら孤独に捜査を進めるのだが、ついに警察側からも見捨てられてしまう。それだけでなく、調査をする中で「これ以上追ったらどうなるかわかっているか?」と脅されてしまう。それでも彼は不屈の精神で調査を進めていく。潜入調査パートは『Century of Birthing』の発展系ともいえるスニーキングアクションが観られる。泥棒がコソコソ動いている横をヘルメスがにじり寄るように近づいていく様の緊迫感が面白い。
そして物語展開は意外にも『ツイン・ピークス』だ。4時間弱あるのだが、ラスト30分で怒涛のようにヒントが溢れ出し解決に向かうのかと思うのだが、宙吊りな状態で映画は終わってしまう。ただ、そこまでの引き伸ばし方が魅力的であり、4時間全く飽きることがないのだ。ラヴ・ディアスのゆっくりながらも確実に画とシナリオを踏み歩いていく作劇に満足した私であった。
※映画.comより画像引用