『戦争と平和(1919)』その手口はとっくに俺が実装している

戦争と平和(1919)
J’ACCUSE!

監督:アベル・ガンス
出演:セヴラン・マルス、マリーズ・ドーブレー、ロミュアル・ジューベetc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

今となってはデジタルで画郭変更も容易にできるような時代になっているが、それでもスマホのタテ型サイズを効果的に用いた映画が極端に少ない。むしろ、サイレント時代の作品を追った方が自由でバキバキに決まった構図が観られることが多いことに気づくこのところ。

サイレント映画における演出の天才にアベル・ガンスがいる。エヴァンゲリオンのような墓描写で知られる『戦争と平和』を観たのだが、自分が最近の映画を観て、スゲーと思っていることの大半をアベル・ガンスがとっくのとうに実装していたとこを突きつけられ驚愕した。

『戦争と平和』あらすじ

Abel Gance’s J’accuse, about a young trio caught in the insanity of WWI, was cinema’s first great anti-war film, to be put alongside such classics as Grand Illusion and All Quiet on the Western Front.
訳:第一次世界大戦の狂気に巻き込まれた若い3人組を描いたアベル・ガンスの『J’accuse』は、『グランド・イリュージョン』や『西部戦線異状なし』といった名作と並ぶ、映画界初の偉大な反戦映画だった。

※MUBIより引用

その手口はとっくに俺が実装している

本作では、もちろん冒頭の人文字などといった名場面もあるが、何と言ってもアリリス(丸画面)の手数が豊富である。ただ、画面中央に○を配置するのではなく、必要に応じて位置を変えている。戦争映画なので敵陣に対する凝視表現として主に使用されるが、場合によっては楕円形を形成することもある。その中で人や空間がきっちりと収まっており、どのショットもカッコよく映る。またサイレント映画のイメージとしてフィックスしたショットを思い浮かべるが、本作では移動をする。線路をたどりながら男を追う場面があるのだが、線路に沿って右に曲がるかと思いきや、男を追って左にカメラを振り、そのまま上昇して街を捉えていく長回しが存在する。当時としてはかなり大胆な運動だったといえる。

個人的にはメタルギアソリッドさながらのスニーキングアクションシーンが面白かった。敵陣に侵入して爆弾を設置するミッション。死角から敵兵が右に左に警備している中を潜って、爆弾を設置。そして帰還しようとするも、敵に発見され泥臭い格闘でその場を凌ぐ。爆破までのタイムリミットも迫る中、地を這うようにして本陣に戻る場面は印象的であった。

アベル・ガンスはどうやら『アルマゲドン』のような映画も手がけているらしいので追っていきたいところだ。
※MUBIより画像引用

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