偶然の旅行者(1988)
THE ACCIDENTAL TOURIST
監督：ローレンス・カスダン
出演：ウィリアム・ハート、ジーナ・デイヴィス、キャスリーン・ターナー、エイミー・ライト、ビル・プルマンetc
評価：60点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
TSUTAYA浅草ROX店の中古セールでローレンス・カスダンの『偶然の旅行者』を買った。ローレンス・カスダンといえばスター・ウォーズシリーズの脚本家として知られている。だが映画監督としてのレベルも高く『再会の時』のような静かに人間の心理に迫る作品を撮っている。『偶然の旅行者』はカイエ・デュ・シネマの年間ベストに選出された作品でもあるので観てみた。
『偶然の旅行者』あらすじ
仕事の旅から戻ったメーコン・ラリー（ウィリアム・ハート）は、妻のサラ（キャスリーン・ターナー）から家を出て行く決心を告げられる。去年の夏、彼らの1人息子がキャンプ地での強盗事件に巻き込まれ、不慮の死を遂げて以来、2人の間には目に見えない溝が広がっていた。メーコンは旅慣れない人たちのために現地で取材した実用的な情報を提供するビジネスマン向けの旅行ガイドブックのライターだった。几帳面な彼は独り暮らしになっても家をきれいに保とうと努力するが、初めての家事に大いにまごつく。仕事からやっと帰り着いても待っているのは誰もいない荒れた家という有り様に、メーコンの心に、空しく冷たい風が吹き抜けていく。そんな時彼は足を骨折し、兄弟のポーター（デイヴィッド・オグデン・スティアーズ）とチャールズ（エド・ベグリー・ジュニア）、妹ローズ（エイミー・ライト）の住む祖父母の家にしばらく身を置くことになった。
犬から見る前へ進めない人の心理
旅行ガイドブックを書いている男は、旅行のプロとして小さなバッグに全てを詰め込み、他者からの干渉を回避すべく本を持って飛行機に乗る。しかし、巨漢な男に間合いを詰められ話しかけられる。しかも、彼のことを知っており、本の役割について意気揚々と語り始める。
「俺には効かないよ」
てっきり家侵入ものの始まりかと思ったらこのおっさんパートはここで終了し、離婚、息子の死の受け入れといった内なる自分と向き合う話が続く。本作にとって重要なのは犬を使った事故シーンであろう。犬は階段したの地下空間になかなか入ってこない。こっちに来いと叫ぶ。洗濯機が動く。犬が飛びつく。男が倒れる。犬は元の位置に戻る。これは前へと進もうとし、一歩踏み出すも、元へと戻ってしまうことへのメタファーと言える。この犬が主人公の心理の分身的役割を担っており、牙を剥き出し死にながら威嚇したり、子どものもとへと歩み寄る場面からその様子を感じ取ることができる。
それにしても冒険活劇のシナリオばかり書いているローレンス・カスダンがこんなにも静かに人間の痛みを描くとは驚きである。
※映画.comより画像引用
