『ウェイキング・ライフ』リンクレイターの演出論

ウェイキング・ライフ(2001)
WAKING LIFE

監督:リチャード・リンクレイター
出演:ワイリー・ウィギンズ、イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー、スティーヴン・ソダーバーグ、アレックス・ジョーンズetc

評価:40点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

最近、自分の中でリチャード・リンクレイター再評価の流れが来ている。中学時代に背伸びしてよく分からなかったロトスコープ映画『ウェイキング・ライフ』に再挑戦した。

『ウェイキング・ライフ』あらすじ

「恋人までの距離」のリチャード・リンクレイター監督が、実写映像をさまざまなイラストレーターにデジタル・ペインティングで加工させ、実写でもアニメでもない映像を展開していく。リンクレイター監督本人はじめ、彼の過去作出演者や友人、スタッフらが多数出演。ひとりの少年が夢とも現実ともつかない時間の中で、さまざまな人物と出会い、夢について、人間について、会話を交わしていく。

映画.comより引用

リンクレイターの演出論

スキャナー・ダークリー』や『アポロ10号1/2』ではロトスコープで演出する意義が強固なものであった。しかし、本作はまだロトスコープの面白さに惹かれているだけのような気がして、特段強い理論を感じることができなかった。短い哲学的な会話を繋げていくスタイルの作品だが、正直なところ実存主義やらサルトルなどといった哲学用語や理論を並べているだけに感じてあまり面白いとは思えなかった。しかしながら、本作にはリチャード・リンクレイターとしての演出論が剥き出しで語られている。そのため作家論を語る上で、ロトスコープ抜きにしても重要な作品といえる。彼は本作の中で、脚本の存在に対して疑問を呈している。脚本に縛られることで映画から自由さを奪っているようなことを語っているのだ。それを踏まえると、彼がビフォア三部作や『6才のボクが、大人になるまで。』にて長期間役者と対話しながらその場限りのリアルな空気感を生み出そうとするのも分かるし、その執着から新作のミュージカルでは俳優と20年間同じ時間を過ごしながら映画を作ろうとするのも必然だったように思える。『ウェイキング・ライフ』はその後、彼が生み出す作品の即興的でありながら映画としての質感を保った神業の原石と言える。露骨な即興的哲学的会話は退屈で単なる羅列に過ぎないが、これがあってこそ、その後の傑作に繋がったといえよう。

※映画.comより画像引用