ウェンデルとワイルド(2022)
Wendell and Wild
監督:ヘンリー・セリック
出演:キーガン=マイケル・キー、ジョーダン・ピール、アンジェラ・バセット、リリック・ロスetc
評価:75点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
先日、配信のコメントでヘンリー・セレックの新作がNetflixで配信されているよと教えてもらった。ヘンリー・セレックといえば『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』、『コララインとボタンの魔女』で知られるストップモーションアニメ監督。今回、13年ぶりの監督作だが、なんと脚本に『NOPE/ノープ』のジョーダン・ピールが関わっているとのこと。これは面白くなってきたぞと観たのだが、想像以上のものであった。
『ウェンデルとワイルド』あらすじ
死者の世界をぬけ出し、生者の地で暮らすことを夢見る悪魔の兄弟。2人は悪知恵を働かせ、パンクロック好きのティーンエイジャーと取引することに。
ヘンリー・セレック×ジョーダン・ピールの治安悪き世界
RTAかと思うような速度、冒頭2分で両親が死亡するところから始まる。カット・エリオットは施設に入れられ数年後に故郷へ戻ってくる。しかし、あれだけ栄えていた故郷は廃墟と化していたのだ。怪しげな孤児院で生活することになるのだが、奇妙な能力によって死者の世界から悪魔の兄弟悪魔の兄弟ウェンデル&ワイルドを召喚してしまう。
冒頭10分で、ストップモーションアニメのコミカルさでは覆い尽くせない程の、重くて闇の深い物語が叩きつけられ、『コララインとボタンの魔女』からパワーアップしていることがうかがえる。カットの物語と悪魔兄弟の物語と、政治の物語、一見すると結びつかないような物語が、怒涛の勢いで繋がっていく。そこには、ジョーダン・ピール的お茶目さがスパイスとして効いてくる。例えば、教会に入って初日。制服に着替えて、授業に出席するのだが、まるで『ドゥ・ザ・ライト・シング』のようにゴツいラジカセを肩に背負いながら廊下を闊歩して教室へと向かうのだ。
一方で、本作では政治問題に斬り込んでいる。教会に通う子の親が、敏腕ビジネスマンで、刑務所に囚人を詰め込むことで巨額の富を得ようとしているのだ。そこには更生させる意志はなく、人さえ収容できればいいので、劣悪な環境が実現することとなる。そして、富豪が自分に有利になるように法案を通すため、退役軍人を蘇生させて、票を稼ごうとするのだ。子ども向け映画でありながら、悪徳経営者がどのように世論を操作して富を得ているのかといったシステムを的確に解説していて教育的な映画だと感じた。
日本でもよくわからないインフルエンサーが、現実をハッキングして政治家になってしまうケースがあるだけに、本作の世界はコミカルに見えて我々のすぐそばにある恐ろしい世界を描いているなと感じた。
※IMDbより画像引用