愛より強く(2004)
原題:Gegen Die Wand
英題:Head-On
監督:ファティ・アキン
出演:ビロル・ユーネル、シベル・ケキリ、カトリン・シュトリーベック、グヴェン・キラックetc
評価:90点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
「死ぬまでに観たい映画1001本」フルマラソンも終盤。序盤で会う敵が実はラスボスみたいな展開が好きなのだが、『愛より強く』はそんな作品だ。自分が映画にハマり始めた頃はTSUTAYA全盛期。TSUTAYAに行くと、決まって『愛より強く』と目が合った。毎回、借りてみようかなと思うが諦めること10年が経った。遂に重い腰をあげて観た。映画には食べ頃があると信じているのだが、本作はまさにそうだった。高校・大学時代に観ても全くわからなかったであろう。今だからこそ刺さるものがあった。
『愛より強く』あらすじ
2004年のベルリン映画祭で金熊賞を受賞した、俊英ファティ・アキンによるラブストーリー。人生に絶望して自殺未遂を起こした40歳のジャイトは、親から自立したいという理由でジェイドとの偽装結婚を望むトルコ系女性シベルの申し出を受け、彼女と偽装結婚することになる。複雑な偽装生活の中で、ジャイトは彼女に次第に惹かれていくことに気づくのだが……。2009年3月にファティ・アキン監督特集としてリバイバル上映。
※映画.comより引用
死を求めるようにふたりは出会った
死に場所を選ぶかのように、バーで酔い潰れては客と喧嘩を繰り返すクズ男の前に女が現れる。彼女は家から出るために結婚してほしいとしつこく彼のことを追い回し、遂に結婚をする。しかし、風習による束縛は強固なもので、結婚したから自由になれるわけではない。家族という村社会の中で、土足でプライベートに上がり込み、性生活について訊いてくるのだ。それを飄々と対応していくクズ男。そして、自由への渇望か、死への願望か、ひたすら無軌道にクズ男から去っては近づきを繰り返す女の激しい日常が展開される。そんな波瀾万丈、怒涛の生活もいつしか成熟する。クズ男は、ムショから出てくるとスーツをビシッと着こなし、トルコを旅する。そこには静寂と平穏が流れる。未来の見えない状況でひたすら足掻く中で辿り着く桃源郷の美しさを観ると、最悪な今をもう少し生きてみようかなという気分にさせられる。ひたすら元気をもらった作品であった。
※MUBIより画像引用