『Ludovic – Un crocodile dans mon jardin』ストップモーション映画における物理法則への裏切り

Ludovic – Un crocodile dans mon jardin(2000)

監督:コ・ホードマン

評価:80点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

Twitterで近日、ワニ映画学会が発足すると目にして、軽くフランス語圏のワニ映画を探してみた。お目当てはアフリカのワニ映画であったのだが、発見できず、代わりに『Un crocodile dans mon jardin』と不気味なタイトルがついた作品を見つけた。タイトルは直訳すれば、『ボクの庭のワニ』。庭にワニが現れて戦う映画なのかと思わざる得ない。しかし、内容は全く違った。監督のコ・ホードマンはオランダ系カナダ人のストップアニメーション作家。『砂の城』でアカデミー賞短編アニメーション映画賞を受賞した監督で、彼はクマのルドヴィックを主人公としたシリーズを作っている。そんな彼のシリーズの一編が『Ludovic – Un crocodile dans mon jardin』というわけだ。

『Ludovic – Un crocodile dans mon jardin』あらすじ

C’est le printemps. Installé au jardin, Ludovic règne sur toute une ménagerie d’animaux en papier. C’est le jeu de la jungle. Dans son Afrique improvisée, Ludovic va de surprise en surprise jusqu’au moment où les animaux s’emparent du cadeau apporté par Maman. Quand ils cessent de lui obéir, Ludovic ne joue plus. Il claque la porte et boude. Mais les chicanes d’enfants ne durent jamais très longtemps. La réconciliation est toute proche surtout lorsqu’elle se fait autour d’une collation que l’on partage.
訳:春ですね。庭では、ルドヴィックが紙の動物たちを支配しています。ジャングルゲームですからね。即席で作られたアフリカの中で、ルドビックは驚きに驚く、かあちゃんが持ってきたプレゼントを動物たちが取ってしまったため。彼らが言うことを聞かなくなると、ルドヴィックは演奏をやめてしまう。ドアをバタンと閉めて、すねる。しかし、子供の喧嘩は長くは続かない。特に、お菓子を一緒に食べながら行う和解は、とても身近なものです。

YouTubeより引用

ストップモーション映画における物理法則への裏切り

ストップモーションアニメにおける、アニメと異なる面白さをひとつ挙げるとするならば、「物理法則への裏切り」だろう。アニメは、物理世界から解放されているため、オブジェクトの伸縮性から来る面白さを見出すことでアニメとしての優位性を引き出せる。それはトムとジェリーにおいて、トムが潰れたり、引き伸ばされたりしても死なないことからも明白であるだろう。ストップモーションアニメは、物理世界に存在するものを使って物語が紡がれる。そこに物理的制約はあるはずだが、細かく制御された静止画の中で物理法則を裏切ることができる。実写映画におけるCGと異なるのは、あくまで物理的制約を受けつつ、裏切る点にあるだろう。なぜならば、CGは元を正せば虚構的画としてのアニメーションを使っているからだ。『Ludovic – Un crocodile dans mon jardin』を例に挙げる。

庭で紙の動物たちが自由奔放に遊んでいる場面。親がホースから水を出したことで、ワニが萎びてしまう。それを阻止するために、紙のゾウがホースに座り込み、水を堰き止める。物理世界において、紙にホースを堰き止める力はない。しかし、この映画の中では、人間の握力に匹敵する力が込められている。それを物理世界の中だけで描くのだ。この物理世界の裏切りに魔法を感じる。それゆえに私はストップモーションアニメにのめり込むと言えるだろう。

ワニ映画を探す過程で、なぜかストップモーションアニメ論に行き着いた面白いケースであった。