ヨーヨー(1965)
YOYO
監督:ピエール・エテックス
出演:ピエール・エテックス、リュス・クラン、クローディーヌ・オージェetc
評価:75点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
ここ最近、渋い監督の特集が組まれることが多くなってきて嬉しい。2023年はオタール・イオセリアーニ特集、メーサーロシュ・マールタ特集が控えており熱い年になりそうだ。さて、2022年最後を飾る特集にピエール・エテックスがやってきた。どうやらサイレント映画的アクションが楽しめるらしい。ということでシアター・イメージフォーラムへ行ってきた。
『ヨーヨー』あらすじ
ジャック・タチ作品のポスターを手がけたイラストレーターで、映画監督や俳優としても活躍したフランスのマルチアーティスト、ピエール・エテックスが監督・脚本・主演を務めた長編第2作。
世界恐慌で破産した大富豪は、元恋人であるサーカスの曲馬師と再会し、その存在を知らなかった幼い息子と3人で地方巡業の旅に出る。やがて成長した息子はヨーヨーという人気クラウンになり、第2次世界大戦が終わると、かつて父が暮らしていた城を再建するべく奔走する。空中ブランコ乗りのイゾリーナに恋したヨーヨーは、興行プロデューサーとして成功するが……。
世界恐慌までを字幕付きのサイレントで、その後をトーキーで描く。エテックスの盟友で後に「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」などを手がける名脚本家ジャン=クロード・カリエールが共同脚本を担当。日本では「ピエール・エテックス レトロスペクティブ」(2022年12月24日~2023年1月20日、東京・シアター・イメージフォーラム)で劇場初公開。
コント仕掛けのスペシャリスト:ピエール・エテックス
サイレント映画時代、音がないため「画」でいかに面白い世界を作るかを今以上に競い合っていた。その時代の勢いを蘇らせたような本作は、生身の人間の動きによるスペクタクルを魅力的にみせている。顕著なのは、車でのアクションだ。子どもに運転を任せ、荷台へと移動する男。しかし、木の枝にぶつかってしまい、車から引き離されてしまう。なんとか戻らないといけない。そこへ通りかかる車。それに乗り込み、なんとか、運転席へと復帰する。動く車ひとつとっても豊かな運動があって楽しい。
また、編集によるサスペンスも豊かだ。マダムがぶちまけた真珠を拾う場面。男の足元にコロコロと真珠が転がってくる。踏んで止めようとするが、隙間を通り抜けて、女のドレスの下へと紛れ込んでしまう。隙を狙って、マダムのドレスを捲り、真珠を探そうとするが、その真珠はポトンと、フロアから落下し、グラスの中へと入り込む。それをおじさんが飲んでしまい、真珠盗みの作戦は失敗する。真珠の取れそうで取れない宙吊りのスリルに惹き込まれる。サイレント時代を意識した映画を観ると、今公開されている多くの映画が「画」で魅せる喜びを失ってしまっているかのように見える。映画の視覚的魅力に定期的に触れることで、内なる感性が研ぎ澄まされていくのであった。コント仕掛けのスペシャリスト:ピエール・エテックスの魅力を知る年末であった。
※映画.comより画像引用