『ムーンフォール』本日は月を地球に落としてみようと思います

ムーンフォール(2021)
Moonfall

監督:ローランド・エメリッヒ
出演:ハル・ベリー、パトリック・ウィルソン、ジョン・ブラッドリー、マイケル・ペーニャ、チャーリー・プラマー、ドナルド・サザーランドetc

評価:70点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

世界が誇る破壊王ローランド・エメリッヒの新作は『ムーンフォール』!

「本日は月を地球に落としてみようと思います」とゲーム実況者のばまんのごとく、月を地球にぶつける映画となっている。本作はキノフィルムズが配給権を買っていたのだが、どういうわけか劇場公開せずAmazon Prime Videoにて配信となってしまった。配給権を手放したのかと思ったら、映画の冒頭にキノフィルムズのロゴが表示されていることから、配給権を持ったままアマプラに横流しにしたと思われる。

この手の映画は映画館で観たいだけに残念である。キノフィルムズさんは、前から大量に配給権を買うも捌ききれず、キノフェスティバルで在庫処分的に上映することがあり「買うんだったらちゃんと映画を扱ってほしい」と思っている(『ナイフ・プラス・ハート』を雑に上映した件は今でも悲しんでいる)。今回、確かに映画を観ると大津波が起きている横で「3.11も月が原因だった。」と話す場面があり、劇場公開断念の原因になったのかなとも思ったが、それでもガッカリ感は計り知れない。配給会社への苦言はこれぐらいにして、映画の感想を書いていく。

『ムーンフォール』あらすじ

「インデペンデンス・デイ」「デイ・アフター・トゥモロー」などのパニックアクション大作で知られるローランド・エメリッヒ監督が、月と地球の衝突という危機に立ち向かう人類の姿を描いたディザスタームービー。

原因不明の力によって月が本来の軌道から弾き出され、あと数週間で地球に激突するという驚くべき事実がNASA(アメリカ航空宇宙局)にもたらされる。NASAは現地調査を試みようとするが、同時に組織内部で、とある情報が隠ぺいされていたことが発覚する。地球と月を救うため、NASA副長官のジョー・ファウラー、一流の宇宙飛行士だったブライアン・ハーパー、天文学博士を自称するKC・ハウスマンの3人が立ち上がり、未曽有の危機に立ち向かう。

NASAの幹部で元宇宙飛行士のジョーをハル・ベリー、ジョーのかつての友人でもあるブライアンをパトリック・ウィルソン、自称天文学者で陰謀論者のKCを「ゲーム・オブ・スローンズ」のジョン・ブラッドリーが演じた。そのほかの共演にマイケル・ペーニャ、チャーリー・プラマー、ドナルド・サザーランド。

映画.comより引用

本日は月を地球に落としてみようと思います

のばまんがユニバースサンドボックスで地球に隕石を落としまくったり、太陽と太陽を戦わせたりする動画が好きだ。そして、時に「この時、地上の人からはどのように見えているのだろう」と妄想する。それをビッグバジェットでやってみせたのがローランド・エメリッヒである。いつも通り、ストーリーよりも破壊が優先なのでテンポが良い。月からジェット噴射のように煙が出始めて、ドンドン地球へ近づいていく。「ヤバいよヤバいよ」と思った次の瞬間には、ロケットが月に着いており、謎の怪物と戦っている。

地上では、次々と隕石が降り注ぎ、大津波が街を呑み込む。雪に覆われ始め、地球が滅びる色をし始めるのだ。

それでも、人間たちはイケイケドンドン「この状態からも入れる保険ありますか?」的状況を打破しようとする。大津波に希望のロケットが呑まれたと思いきや、ギリギリのところで飛び立つあり得ない展開もお約束。世界が絶望的な状況になるからこそ、この手のご都合主義は希望的に見える。

また、一見出オチギャグ映画に見える作品だが、良い演出も多い。

2つ紹介しよう。

1つ目は、大津波が建物内に入ってくる場面。男が階段を降りる。すると奥の扉から水が雪崩れ込む。奥行きを使った空間描写は見事と言えよう。

2つ目は、前半の絶望シーンだ。狭い部屋に関係者がいて、「どうすれば良いのか」と悶々する場面。世界は終焉に向かう。でも個人では何もできない。指を咥えて死を待つしかないのかといった焦燥を仄暗い空間を通じて描く。それがあるからこそ、ロケットという狭い空間から力技で世界を救おうとする描写に説得力がある。個のできることは小さい。動ける範囲も小さい。でもできることは大きいというローランド・エメリッヒ監督の強いメッセージを感じた。

終盤は、『インデペンデンス・デイ』を彷彿させる潜入アドベンチャーとしての躍動感があり、ポップコーン片手にゲラゲラ笑うにぴったりな作品でありました。

※映画.comより画像引用