【カレル・ゼマン特集】『クラバート』倒せそうで倒せない厄介さ

クラバート(1977)
CARODEJUV UCEN

監督:カレル・ゼマン

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

2022年は、クラシック映画が熱い!ジャック・リヴェットにシャンタル・アケルマンが連日満席で大盛況ですがK’sシネマ開催のカレル・ゼマン特集も負けちゃいない。こちらも満席大盛況だ。

今回は『クラバート』を観ました。

『クラバート』あらすじ

チェコ・アニメーションの先駆的存在として知られる巨匠カレル・ゼマンが、ドイツの児童文学作家オトフリート・プロイスラーによる同名小説をダークなキャラクターで映像化し、ゼマンの代表作のひとつとなった傑作ファンタジーアニメ。少年クラバートは不思議な夢に誘われ、荒地の水車場にたどり着く。そこで見習いとして働きはじめた彼は、親方から魔法の修行を受けるが……。ゼマンの初期から晩年までの代表作10作品(+短編1作品)を上映する特集企画「チェコ・ファンタジー・ゼマン!」(2022年4月23日~5月6日、新宿K’s cinema)上映作品。

映画.comより引用

倒せそうで倒せない厄介さ

流浪の民であるクラバートは物乞いをしながら、寒い冬を過ごしていた。そんなある日、カラスの誘導で親方の水車小屋にやってくる。食住を提供してくれる環境に惹き込まれ住み着くことになるが、魔法の力で支配するブラック企業だったのだ。しかも、子どもたちが魔法を覚え、独り立ちできそうになると親方自ら決闘を申し込み、殺していくのが伝統となっている恐ろしい職場だった。

クラバートも何年か過ごす内に、他の者同様、新入りに憐れみの目を向けるようになる。そんな時、ある女の子を好きになってしまうという話。

この親方が非常に厄介だ。決闘を申し込むのだが、意外とダメージを受けており血だらけになったりするのだが、あと一歩のところで倒せない。また、「この本には魔法のすべてが書かれている。絶対に読むんじゃないよ。」と言いつつ、部屋に放置している。今風にいうと、ロックをかけずデスクトップをそのまま表示しているような状態である。また、松ぼっくりを1時間だけ宝石に変える魔法を使い、城に潜入するが、余裕で55分が過ぎ緊急事態になったりする。

間抜けに見えるのだが、その間抜けさによる油断を素なのかガチなのか分からない返しで、背後を取ってくるので厄介極まりない。恐怖すら感じるのだ。

さて、本作におけるカレル・ゼマン要素としては、炎の描写が実写である点だろう。『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』で描かれていたように、水槽に色付きの水を垂らし、それを反転させ爆炎を表現する演出が施されており、それがアニメと絡むことで不気味な雰囲気を醸し出している。

この禍々しい炎を観ただけでも、カレル・ゼマンを味わった気分になれて最高であった。