【 #死ぬまでに観たい映画1001本】『ふたり自身』結婚はしたけれど

ふたり自身(1972)
THE HEARTBREAK KID

監督:エレイン・メイ
出演:チャールズ・グローディン、シビル・シェパード、ジーニー・バーリン、エディ・アルバート、オードラ・リンドレイ、ドリス・ロバーツetc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

最近、特集上映で『おかしな求婚』や『イシュタール』が紹介され、再注目されつつあるエレイン・メイ。「死ぬまでに観たい映画1001本」にも彼女の作品が掲載されている。それが『ふたり自身』だ。映画ファンを15年やっていて一度も仲間同士の会話に出てきたことのない作品だが、実はファレリー兄弟『ライラにお手あげ』のオリジナル版なのだ。実際に観てみると、これが結構面白かった。

『ふたり自身』あらすじ

スポーツ用品のセールスマン、レニー・カントロー(チャールズ・グローディン)は、27歳のニューヨーカーである。ある日、サード・アベニューでライラ・コロドニー(ジェーニー・バーリン)を見初め、デートを申し込んだ。やがて求婚し、式を挙げた。地味なレセプション後、新婚旅行に出発した。初夜はバージニアのモテルで過ごすことになったが、車中、レニーは、デイト期間中は気付かなかったライラの特異な性癖が判ってきた。たとえば彼女はおしゃべりであり何かと彼を質問責めにした。その初夜のベッドでの質問はあまりにもはしたないもののように思えた。マイアミ海岸に到着する頃、レニーはライラが鼻につき始めた。ライラは泳げないので、レニーは彼女から逃げるように浜辺へ飛び出した。そして、ケリー・コーコラン(シビル・シェパード)という若いブロンドの美人と近づきになった。

映画.comより引用

結婚はしたけれど

結婚式で愛を深め、いざ新婚旅行に飛び出したレニーとライラ。しかし、プロポーズまでの熱気はライラの本質を見えなくさせていた。道中、レニーは違和感を感じる。運転中に胸を見せつけてきたり、夜の営みにどこか下品さを感じた。ダイナーでハンバーガーを食べる彼女の姿ははしたない。結婚してよかったのだろうか?そんな疑問が彼の頭の中でグルグル駆け巡る。しかし、ここは紳士にと冷静さを保とうとする。この時のレニーの様子は、観客からすれば岡目八目、頭隠して尻隠さずな程に嫌悪感が顔に出てしまっていて滑稽に見える。顕著なのは、ダイナーでライラが彼の背後を指し示す場面。「私たちもああならなくちゃね!」と語る。レニーが恐る恐る振り返ると、老夫婦が仲良く店を出ようとしている。この女性と何十年もやっていかないといけない絶望が、この場面で強調されるのだ。レニーの苦々しい表情が際立つ。そんな彼の前に金髪の美しい女性が現れる。ケリーだ。シビル・シェパード演じるケリーがこれがまた美しい。ダボっとスポーツ服を着た彼女、誰しもが一目惚れしてしまうような彼女を前にレニーの心は突き動かされてしまう。

本作はクズ男映画であり、物語展開は同情はするが酷いものがある。だが、その着地に恋愛に対する辛辣な批判がある。つまり、結局のところ結婚するまでは楽しいものがある。しかし、結婚すると互いの暗部を直視し、受容する必要がある。レニーは奮闘の末にあるものを掴むが、掴んだ途端に虚無感が覆い尽くす。既に知っているからだ。彼の情熱は冷めてしまうことに。愛の渦中にいる時だけ輝くのだと。

コミカルでライトなラブコメディに見えて、強烈な恋愛の側面を叩きつける作品であった。

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