【 #死ぬまでに観たい映画1001本 】『荒野のストレンジャー』おまえのものはおれのもの、おれのものもおれのもの

荒野のストレンジャー(1972)
HIGH PLAINS DRIFTER

監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、ヴァーナ・ブルーム、マリアンナ・ヒル、ミッチ・ライアン、ジェフリー・ルイス、ジャック・ギン、ステファン・ギーラシュ、テッド・ハートリー、ビリー・カーティス、スコット・ウォーカーetc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、『クライ・マッチョ』を観たので、クリント・イーストウッドがマッチョだった頃の映画『荒野のストレンジャー』を観ました。本作は「死ぬまでに観たい映画1001本」掲載の作品です。

『荒野のストレンジャー』あらすじ

イーストウッド監督の第2作目にあたる、自らが主演した異色のミステリアス西部劇。陽炎の中から馬に跨がり現れた謎の男は、いいがかりを付けた男どもを目にも留まらぬ早業で撃ち殺しその町ラーゴに居着く。その頃、以前逮捕した無法者たちが刑期を終え、ラーゴに仕返しにくる事を知っていた町の保安官は、その男の腕前を見込んで用心棒を頼む。その役を引き受けた男は町の男どもに射撃訓練をさせるが、町中を赤いペンキで塗らせたり、野外パーティの準備をさせたりと奇妙な行動も取って行く。そしていよいよ無法者たちが町になだれ込んでくるのだが……。

YAHOO!映画より引用

おまえのものはおれのもの、おれのものもおれのもの

さすらいの男クリント・イーストウッドが町にやってくる。美しい水辺にある町は陰りなき晴天に包まれるも、空気感はピリついている。よそ者には厳しいのだ。彼が酒場に入る。常連客に煽られた彼は、今度は床屋へ行く。そこには漫画のようなハゲ散らかしがある種ファッショナブルな店員が、手をガタガタさせながらこの謎の男の散髪に励む。そこへ、酒場からゾロゾロ輩がやってくる。この緊迫した冒頭のアクションからして観応えがある。床屋の鏡から微妙に酒場が見えており、床屋の椅子の動きに合わせてカメラが横移動する。すると、輩がイーストウッドを取り囲んでいる。それを颯爽と射殺していく。

町を支配していた暴力軍団を殲滅した彼はヒーローなのか?

…違った。彼は町の女を捕まえ、強姦するのだ。

そんな悪魔のような男を町の長は用心棒にする。だが、彼の暴力を崇拝する長は、彼に全権限を渡してしまう。彼が飲むもの、使うものは全て無料になることで、町の経済は破綻する。そして、勝手に軍隊が組織され、長に小人の頼り甲斐ない男が抜擢されるのだ。

また、彼は強運の持ち主なので、強姦した女が風呂場に襲撃してきて、バスタブに向かって発砲しても、彼が水に潜るだけで回避できたりしてしまっている。マカロニ・ウエスタンの溜めある鋭い銃撃とは裏腹に、パワハラセクハラしかない世界に唖然とする。

だが、よく観るとこの映画は傍観者を引き摺り出す映画となっている。町で行われている暴力を遠くから哀れみの目で見つめる者が次々とクリント・イーストウッドによってフロントラインに立たされ、当事者にされていくのだ。

本作は午後のロードショー映画として有名ですが、今のパワハラセクハラの文脈から批評することで新たな視点が生まれそうな作品でありました。

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※YAHOO!映画より画像引用

 

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