リバティ・バランスを射った男(1962)
The Man Who Shot Liberty Valance
監督:ジョン・フォード
出演:ジェームズ・スチュワート、ジョン・ウェイン、ヴェラ・マイルズ、リー・マーヴィン、エドモンド・オブライエン、アンディ・ディヴァイン、ウディ・ストロード、ジャネット・ノーラン、ケン・マーレイ、ジョン・キャラダインetc
評価:95点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
『逮捕命令』が良かったので「死ぬまでに観たい映画1001本」掲載の西部劇を続けて観ることにした。今回はジョン・フォードの『リバティ・バランスを射った男』。これまた素晴らしい作品であった。今回はネタバレありで書いていく。
『リバティ・バランスを射った男』あらすじ
西部の小さな町シンボーンに老紳士夫妻が汽車から降りた。上院議員をつとめるランス・ストダード(ジェームズ・スチュアート)と婦人ハリー(ヴェラ・マイルズ)である。夫妻が来たのはトム・ドニファン(ジョン・ウェイン)という男の葬式につらなるためだった。この名もない西部男の葬式に今を時めく上院議員がなぜやってきたのか。かけつけた新聞記者に問われるままにランスは語り出した。--1880年代、大学で法律を学んだランスは青雲の志に燃え、東部から西部へやってきたが、途中、無法者リバティ・バランス(リー・マーヴィン)の一味に襲われ重傷を負った。
伝説から現実へ
法律家ランス・ストダード(ジェームズ・スチュアート)は西部に向かう道中、リバティ・バランス(リー・マーヴィン)一味に襲われてしまう。そんな彼を救ったのは屈強なガンマンであるトム・ドニファン(ジョン・ウェイン)であった。トムは、復讐に燃えるランスに「銃」をチラつかせるが、暴力でなく理性で解決したい彼は怒りをあらわにする。ランスは、町のレストランで働き、住民に政治について教える中、リバティ・バランス一味が嫌がらせを行う。そして、ついに決闘が行われる。ランスはやむ得ず、「銃」で決着をつけることとなる。非暴力な手段で問題を解決しようとするも、暴力で解決せざる得ない状況を描く本作の倫理面に関しては一旦横に置くとして、ランスとリバティを炎の観点から注目すると鋭い演出が施されていることに気付かされる。
乱暴者リバティ一味は、定期的に暴れに町へやって来る。銃を乱射したり、酒瓶を投げつけたりするが、唯一やらないことがある。それは建物を燃やさないことである。例えば、新聞社主ピーボディのオフィスを襲撃する場面では、あれだけ破壊の限りを尽くしているのに、画面中央にはランタンが無傷で残り続けているのである。何故、リバティはランタンでオフィスを燃やさないのだろうか?
それはリバティに復讐を果たしたランスが町を去る場面で明らかとなる。自殺しようと思い立ったのか、業火に燃える家の中に身を置く場面がある。この場面を観ることで、対比構造の存在に気付かされる。つまり、リバティにとって町は居場所である。暴力で支配はしても、居場所をなくしてしまっては意味がない。だからオフィスは燃やさなかった。一方で、ランスにとって町はもう居場所でないし、結局暴力で解決してしまった法律家の自分という存在は社会に必要なのか?そんな彼の居場所のなさを象徴する場面として火災が描かれているのである。これは素晴らしい演出だと感じた。
また、鋭利な復讐は2度描かれる。これがまた辛辣である。狡猾にランスを追い詰めるリバティは、ふとした油断で射殺される。ランスによる奇跡だと誰しもが思う。伝説的存在になるのだが、終盤で明らかにされる。リバティを射ったのはトムだったと。
お祭り騒ぎとなっている空間に消えるランスと人がいない外へと出るトム。現実に戻り、もう二度と交わることのない人生を象徴する扉の締まりに泣けてきた。ジョン・フォード作品は苦手だったりするのだが、本作は大傑作であった。
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※映画.comより画像引用