チケット・トゥ・パラダイス(2022)
Ticket to Paradise
監督:オル・パーカー
出演:ジュリア・ロバーツ、ジョージ・クルーニー、ケイトリン・デヴァー、マキシム・ブティエ、ビリー・ラード、リュカ・ブラヴォーetc
評価:80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
TOHOシネマズの予告編でジュリア・ロバーツとジョージ・クルーニー演じる元夫婦が娘の結婚に干渉する内容を明るく紹介している様子にグロテスクさを覚えた。しかも、よりによって恋愛における眼差しのグロテスクさを描いた『恋人はアンバー』と同じ日に公開されるというのだ。しかし、何かビビッと来るものを感じた私は観ることにした。これが意外にも『結婚五年目』に匹敵するスクリューボール・コメディに仕上がっていた。
『チケット・トゥ・パラダイス』あらすじ
「オーシャンズ」シリーズで夫婦役を演じたジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツが再共演し、娘のスピード婚を止めようと奮闘する元夫婦を演じたロマンティックコメディ。
元夫婦のデヴィッドとジョージアは20年前に離婚して以来、必要に迫られて会うことがあっても、いつもいがみ合ってばかりいた。そんな2人の愛娘リリーがロースクールを卒業し、旅行でバリ島へ向かい、数日後に「現地の彼と結婚する」という連絡が入る。弁護士になる夢を捨てて会ったばかりの男と結婚するなどあってはならないと、自分たちと同じ過ちを繰り返してほしくないデヴィッドとジョージアは、現地へ赴き、娘の結婚阻止に向けて協力することになる。
監督は「マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー」のオル・パーカー。「ディア・エヴァン・ハンセン」のケイトリン・デバーが娘のリリーを演じ、リリーの恋人役に本作でハリウッドデビューを果たすマキシム・ブティエ、リリーの友人役に「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」のビリー・ロード。
支配の眼差しを粉砕するスクリューボール
冷め切った夫婦を結びつけるのは運動だ!運動を引き起こすには乗り物でアクションを展開するのだと実践した作品がプレストン・スタージェスだった。なんとそんなアクションが『チケット・トゥ・パラダイス』で観られるとは思いもよらなかった。ジョージ・クルーニー演じる男が、娘の結婚を阻止しに飛行機に乗る。すると、隣の席にマダムが座り絡み始める。鬱陶しいので、イタリア語で話し、会話をブロックする。すると、そこにジュリア・ロバーツ演じる元妻が現れ英語で語りかける。それに彼が反応したことでマダムに嘘がバレてしまう。ジュリア・ロバーツは、フランス語を話しながらフライトアテンダントとイチャつく。しかし、乱気流が二人のイキった態度から引き摺り降ろし、結局、恐怖に弱い存在に見えたマダムが精神的に強かったことが顕となる。この奇妙なアクションは、呉越同舟を生み出し、「娘をバリ島の男から引き剥がす」名目のもと結束を強くする。
そんな夫婦は、見下した態度でバリ島の人々に接する。しかし、バリ島の人々は軽妙にカウンターをしていく。ナイフジョークで脅したり、花婿は策略に気づきそれとなく正解の振る舞いをしていく。インドネシア語できるアピールをしていたジュリア・ロバーツが、結局のところ言葉が分からず、悪口なのかなんなのか分からない会話に当惑する様は、言語をマウントの道具として使っていた者が言語で成敗される爽快さがある。
スクリューボール・コメディはドジっ子を通じて、コントロールする側がコントロールされる側に突き落とされる物語が多いイメージがある。これが2020年代になると、他者に向いているようで過去の自分にしか向いていない者による支配、差別による見下しの眼差しへのカウンターとしてスクリューボール・コメディは機能するようだ。バリ島全体が元夫婦による支配にカウンターしていく。そして、醜態を次々と暴いていく。
実は颯爽と高度なことをやってのけている作品であったのだ。
※映画.comより画像引用