『デストイレ』怪物は常に映り込んでいる

デストイレ(2018)
Death Toilet

監督:エヴァン・ジェイコブス
出演:アイザック・ゴルビッチ、マイク・ハーツフィールド、エヴァン・ジェイコブス、ミヒャエル・J・フォーゲルザンetc

評価:60点


映画系VTuberの映灯十色さんが激推ししていたB級映画を観てみた。ありそうであまりないタイプのトイレモンスター映画であるが、想像以上に意表を突く作品であった。

『デストイレ』あらすじ

泥沼の戦いとなったベトナム戦争のさなか、第一歩兵師団に従軍していたブレットのもとに弟がトイレで変死したという訃報が舞い込む。終戦後、失意のままに母国へと帰ったブレットは、弟の死の真相を知るべく彼が遺した家の調査を始める。ブレットはトイレに狂暴な悪魔がとりついてることを知り、ディングルベリー神父に悪魔祓いを依頼。人を嘲笑い、火を噴き、そして激しく爆発する悪魔トイレを相手にした史上初の”トイレ・エクソシズム” が始まろうとしていた…!

Amazon Prime Videoより引用

怪物は常に映り込んでいる

ベトナム戦争の痛みを抱える男が、トイレの異音が気になり修理屋を呼ぶが改善されず、悪魔祓いを呼ぶ内容。

通常B級映画は、怪物を魅せず、フレームの外側で怪物の存在をチラつかせる演出にこだわる。『マックイーンの絶対の危機』では、逃げ惑う人のカットを通じて人喰いアメーバの気配を演出していた。『エクソシスト・シャーク※旧:デビル・シャーク』では茶番を繋ぐことで、サメを出さずにサメの存在をチラつかせようとしていた。しかし、『デストイレ』の場合、常時怪物が映り込んでいるのだ。

洗面所で、トイレが「ウォーーー」と唸り声を上げている。夢の場面では、トイレが黄色い業火で主人公に襲いかかるのだ。これは珍しい光景である。さて、本作は意外にも物語の骨格が強固である。

ベトナム戦争でPTSDを患った者の孤独が描かれている。頻繁に戦争の記憶がフラッシュバックする。彼は、異音のするトイレに取り憑かれて悪魔祓いに電話をするがまともに取り合ってくれない。観客からしても異様な光景に見える。顕著なのは、彼がおもちゃの銃を持ちながらトイレに向かっている場面であろう。妄想に陥っているように見えるのだ。しかし、彼にとっては深刻な問題だ。

排泄をし解放される聖域であるトイレが、異音で汚されているのだから。『ジュラシック・パーク』やゾンビ映画など、現実において独りになれる聖域が破壊される映画は多い。通常は、トイレに怪物が襲撃するとそこで終わりだが、本作は聖域を取り戻そうとする。PTSDに陥り、悪夢が彼を襲う。誰も手を差し伸べてくれない中で孤独に闘う男を描いていたのだ。

本作は現在5作目を制作中とのことだが、果たしてどんな映画になっているのだろうか。楽しみである。

関連記事

『デビルシャーク』デビルシャークと私
夏だ!ビーチだ!サメだ!<夏に観たいサメ映画“5選”>
『恐怖!キノコ男』ねるねるねるねからキノコ男爆誕!
『セミマゲドン』蝉と青春の旅立ち