The Timekeepers Of Eternity(2021)
監督:Aristotelis Maragkos
評価:100点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
先日、2022年上半期ベストスペースで済藤鉄腸さんが語っていた『The Timekeepers Of Eternity』を観た。本作はスティーヴン・キング「ランゴリアーズ」のテレビドラマを再編集した作品。しかし、予告編を観ると異様な作りとなっており、ボーディ・ガーボル『アメリカン・ポストカード』さながら画が紙のようにくしゃっとなる演出が施されていたのだ。実際に観てみると1時間の間に途轍もないテクニックが凝縮されており楽しい作品であった。
『The Timekeepers Of Eternity』あらすじ
Mr Toomey obsessively tears paper to control his childhood monsters, but when he wakes mid-flight to Boston to find most of the other passengers disappeared, he must confront the paper nightmare which threaten to rip everything apart.
訳:Toomey氏は、子供の頃のモンスターを制御するために執拗に紙を引き裂きましたが、飛行中にボストンに目を覚まして他の乗客のほとんどが姿を消したのを見つけたとき、彼はすべてを引き裂く恐れのある紙の悪夢に立ち向かわなければなりません。
引き裂かれる画面から「ランゴリアーズ」
気がつくと、飛行機には数名しか残されていなかった。この怪奇現象に不安を抱く乗客、パイロット。なんとか地上に着陸するも、人の気配がない。しかし、怪物「ランゴリアーズ」の気配が迫っていた。テレビドラマを白黒にし、彼らの運動に合わせ画が引き裂かれていく。まずこの演出に惹き込まれる。男が紙を破ると、同じ方向に画面が破れ始める。登場人物が怒ると、画が破れ、人が複製されていく。当時の飛行機において乗客は地上と通信を取ることができなかった。今やスマホで、地上の様子がリアルタイムに分かるが、ドラマは90年代なので飛行機の中というのは、時空の歪みを感じやすい空間といえる。なぜならば、地上につけば体感よりも数時間~半日ズレた時間が流れるのだから。本作における画面破れの演出は、単なる遊びではなく、時空の歪みの表象として機能しているのだ。
時空の歪みによる残像を画の破れにより複製されていく人で表現する。存在する/存在しないを重層的に描くため、画も層を意識したものになっている。
そして本作最大のポイントは、ランゴリアーズの描写だろう。花のような破れ方をする「何か」がファイヤーボールがごとく登場人物に襲いかかってくるのである。これの得体の知れない恐怖が異様で、しかもストップモーションアニメさながらの挙動で激しく襲いかかってくる。この演出を発明したことが『The Timekeepers Of Eternity』最大の魅力といえよう。
ちなみにドラマ版は3時間ある。それを1時間にまとめている。ある意味ファスト映画における創造性とは何かを追求した作品でもあろう。Aristotelis Maragkos監督は要チェックである。
※IMDbより画像引用