『Incident by a Bank』傍観者は人命より決定的瞬間の目撃者になることを優先する

Incident by a Bank(2010)
Händelse vid bank

監督:リューベン・オストルンド
出演:Bahador Foladi、レイフ・エードルンド・ヨハンソンetc

評価:100点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

第75回カンヌ国際映画祭の受賞結果が発表された。最高賞パルム・ドールはスウェーデンの陰惨映画の異端児リューベン・オストルンド監督作『Triangle of Sadness』が受賞した。本作は、セレブを乗せたクルーズ船が遭難して、無人島にたどり着くがセレブが無能でヒエラルキーが逆転するダークコメディらしい。2017年に『ザ・スクエア 思いやりの聖域』に次ぎ2回目のパルム・ドール受賞となったリューベン・オストルンド監督。これで9組目の最多受賞者、2作連続受賞はビレ・アウグスト監督、ミヒャエル・ハネケ監督に次いで3組目である。さて、今回はリューベン・オストルンド監督の受賞を祝福して短編映画を観ました。

『Incident by a Bank』あらすじ

Incident by a bank is a detailed account of a failed bank robbery: A single take where over 90 people perform a meticulous choreography for the camera. The film recreates an actual event that took place in Stockholm in June 2006.

MUBIより引用

傍観者は人命より決定的瞬間の目撃者になることを優先する

銀行前を捉える。トラックに乗ったデモのような集団が駆け抜ける。カメラは左の男に寄っていく。どうも待ち合わせらしい。すると右にカメラが異動する。バイクにビニール袋か何かが絡まって焦るドライバー2人がいる。2人は銀行にヘルメットをつけたまま向かう。手には銃を持っている。左側の男たちは「あれ、ヤバくね?警察呼んだ方がよくね?」と話し始めるが、一向に電話をかける兆しがない。やがて銃声のようなものが聞こえる。強盗は通りに飛び出し、去っていくかと思いきや、右側のビルに入っていく。しかし、誰も警察を呼ばないばかりか、遠くから見守っている。おっさんは、少しばかりの妨害と、強盗のバイクを倒して見守る。

やがて、騒ぎが大きくなってくる。おっさんは強盗と鉢合わせしてしまう。柱に隠れるおっさん。そこに向かって銃を発砲。「出てきやがれ!」と叫ぶ。緊迫感が流れるが、遠くから、さっきの男がカメラに撮り始めるのだ。

カメラが発明されてから、人々は決定的瞬間を撮ることができるようになった。カメラが小型化し、インターネットで共有することができるようになり、人命よりも決定的瞬間が優先されるようになったとリューベン・オストルンド監督は静かに告発している。これは『フレンチアルプスで起きたこと』に引き継がれている。人は凄惨な事件を前に、それをフィクションだと思う。そして、「自分は死なないだろう」という思い込みと悪魔合体して、その凄惨さを決定的瞬間として消費しようとしているのではないだろうか?

リューベン・オストルンド監督の視点は、とてつもなく意地悪でとてつもなく惹かれるものがある。なので『Triangle of Sadness』に期待である。円安で配給権高そうだが、来年の6月くらいまでには観られるといいなと祈るばかりである。

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