『Playing the Victim』仮設トイレからドリフのズンドコ節を踊り狂う、事件現場再現者

Playing the Victim(2006)
Изображая жертву

監督:キリル・セレブレンニコフ
出演:Yuri Chursin、Vitali Khayev、Aleksandr Ilyin, Jr.、Svetlana Ivanova etc

評価:75点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

第75回カンヌ国際映画祭でキリル・セレブレンニコフの『Tchaikovsky’s Wife』が上映されている。今回は監督もカンヌ入りを果てせた模様で、映画の内容も面白そうなのでパルム・ドールが期待できそうだ。さて、カンヌに想いを馳せて過去作『Playing the Victim』を観賞した。

『Playing the Victim』あらすじ

A young man drops out of university and goes to the police. He’s done nothing wrong he just wants a job. A particular job. Playing the victim in murder reconstructions. Maybe by getting close to death he can manage to cheat on his own.

IMDbより引用

仮設トイレからドリフのズンドコ節を踊り狂う、事件現場再現者

仮設トイレで殺人事件が起きたようで、事情聴取が行われている。ビデオカメラ越しにインタビューが行われているが、ヴァーリャはカメラに映るたびにふざけている。中々事情聴取と犯行再現動画の撮影が進まない。そして遂に、ヴァーリャは仮設トイレからドリフのズンドコ節を爆音で聴きながら踊りくるいだすのだ。止めに入る者に対しては日本語で「どういうこと?どういうこと?」と圧をかけて踊りを続ける。本作は、ひたすら遅々として進まない現場検証の不条理を描いていくドラマとなっている。



冒頭のズンドコ節を含め、本作は後の『LETO-レト-』や『インフル病みのペトロフ家』に繋がる演出が散見されるのでファン必観の作品といえる。当然ながらアニメが映画を侵食し、突然脳天に列車が突っ込むアニメーションを介して次の場面に転換させたりするのだ。また、犯行現場の検証もどんどん酷くなっていき、ストッキングのようなものを命綱にして窓から今にも落下しそうな、安全基準とは程遠い業務を行っていたり、しまいには「物は試し」とネオンが光る寿司屋で、普通に営業している横で現場検証が行われているのだ。人の倒れた痕跡の横で寿司が握られ、芸者がコウメ太夫さながらの挙動で接客を始めているところがユニークであった。

ロシア情勢は伝聞レベルでしか分からないが、本作を観るとロシアの非効率でブルシットジョブにまみれた社会を批判しているように見える。いつだって、キリル・セレブレンニコフは挑発的な作品を放っているのだ。最新作はチャイコフスキーと妻との関係を描いた作品らしいが一筋縄ではいかないであろう。日本公開されることを祈るとしよう。