ホワイトハンター ブラックハート(1990)
WHITE HUNTER, BLACK HEART
監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、ジェフ・フェイヒー、ジョージ・ズンザ、アラン・アームストロング、マリサ・ベレンソン、シャーロット・コーンウェル、エドワード・チューダー・ポールetc
評価:80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
GW、バカンス映画を観たいと思い、おもむろにクリント・イーストウッド『ホワイトハンター ブラックハート』を観ました。これが壮絶な映画であった。
『ホワイトハンター ブラックハート』あらすじ
ハリウッド黄金時代の1950年代。カリスマ的な映画監督、ジョン・ウィルソン(クリント・イーストウッド)。彼の撮るべき映画はプロデューサーとも観客とも関わりなく彼の胸の内にしか存在しない。プロデューサー、ランダース(ジョージ・ズンザ)と衝突を繰り返しながらも巨額の負債を抱えるウィルソンだが、現在頭にあるのはアフリカで牙象を撃つことだけだった。脚本家ピート・ヴェリル(ジョフ・フェイ)と共にストーリーを考え、ついに念願のアフリカ・ロケに旅立つ。しかしウィルソンにとって映画はあくまで手段、脚本も殆んど進まぬまま現地人のガイド、ライサー(エドワード・チューダー・ポール)を案内に象撃ちに行ってしまい、夜ホテルでは人種差別主義のボーイを相手に喧嘩を演じてみせる。そんなウィルソンを友人として心配するヴェリルは、ウィルソンの行動を逐一報告するユニット・マネージャー、ロックハート(アラン・アームストロング)に一発くらわすのだった。
俺は象を撃ちたいんだ!
馬がダイナミックに駆け抜けていく。その上空を飛行機が飛ぶ時、映画における決定的瞬間を作り出すのに取り憑かれた作品だと分かる。それは本作でクリント・イーストウッド演じる狂気の映画監督の像と乖離しない画がそこにはあった。借金25万ドルし、脚本もそこらへんに放置し、「ライオンに食われるのなら本望だ」と豪語、通俗な映画監督を見下すジョン・ウィルソンはアフリカロケしたくてたまらない。プロデューサーなどを強引に説得して、いざアフリカへ。しかし、彼の本当の目的は象を射殺することだった。
本作は映画撮影の映画でありながら、映画そっちのけでアフリカ冒険旅行を楽しむ欲望の塊である映画監督の珍行動に密着した作品である。映画は映画自体より映画の撮影現場や映画監督の人生の方が面白かったりするのだが、その側面を一貫して描いている作品であり、映画は全然撮らないが、彼の行く先々が映画の顔をしてくるところが面白い。
映画は運動の芸術である。それを体現するように、冒頭の馬の疾走はもちろん。丘に激突しかけた小型飛行機が急旋回して天と地がひっくり返ったり、激流に呑まれ、水没寸前にまで陥る船の上下運動を水飛沫込みで捉える。また、象と対峙する場面では、駆け寄る象に対して銃を向け続けるイーストウッドの怖い眼差しが緊張感を引き出す。さらには、人種差別をする男に対して、タイマンバトルを行い、意外とあっさりノックアウトされる生々しい人間の運動までそこで描かれる。
この破壊的でありながらも、確実に運動の旨みを仕留めていく姿にイーストウッド監督の腕が光り、「アクション」と彼が映画に別れを告げる時、あまりに酷い撮影現場の話にもかかわらず、感動してしまいました。
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