大怪獣のあとしまつ(2020)
監督:三木聡
出演:山田涼介、土屋太鳳、濱田岳、オダギリジョー、西田敏行、眞島秀和、SUMIRE、田中要次、有薗芳記、銀粉蝶etc
評価:50点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
公開されるとTwitterで「クソ映画だ」と多数の悲鳴が轟く映画『大怪獣のあとしまつ』。大怪獣の死体をどのように処理するのかを描いた一見面白そうな内容にもかかわらず、『デビルマン』と比較されるほどの酷評が相次いでいる(個人的に『デビルマン』を虐めないでくれとは思う…)。さて私も観てきたのですが、これが驚きの連続であった。例えるならば、三池崇史『DEAD OR ALIVE 犯罪者』のラストを何発も放つトンデモ映画であった。我々は、死体処理に励む人々の営み、職業人としての熱いドラマが観たいはず。しかし、魅せられたのは、おっさんたちの醜悪な会議であった。それではその内容について触れていく。
『大怪獣のあとしまつ』あらすじ
ドラマ「時効警察」シリーズの三木聡監督が「Hey! Say! JUMP」の山田涼介を主演に迎え、巨大怪獣の死体処理を題材に描いた空想特撮エンタテインメント。人類を恐怖に陥れた巨大怪獣が、ある日突然死んだ。国民が歓喜に沸く一方で、残された死体は徐々に腐敗・膨張が進んでいく。このままでは爆発し、一大事を招いてしまう。そんな状況下で死体処理を任されたのは、軍でも警察でもなく、3年前に姿を消した特務隊員・帯刀アラタだった。アラタとはかつて特務隊で同僚だった環境大臣秘書・雨音ユキノを土屋太鳳、ユキノの夫で総理秘書官の正彦を濱田岳、爆破処理のプロ・ブルースをオダギリジョー、未曾有の事態に翻弄される総理大臣・西大立目完を西田敏行が演じる。「平成ゴジラ」シリーズや「ウルトラマン」シリーズの若狭新一が怪獣造形を担当。
おっさんの醜悪な会議を魅せられる魔界
日本では大作であってもVFXコストを抑えるためか、『スティーブ・マックィーンの人喰いアメーバの恐怖』さながら事象を見せずに恐怖を描こうとする工夫が時折観られる。『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』では、火災に見舞われたクルーズ船を一瞬観せ、その後は横移動で倒れている人や走っている救命隊員を映すことで事態の深刻さを表現している。『大怪獣のあとしまつ』の場合、政治家の会議を執拗に映すことで、大怪獣の死体の登場時間を削減している。
本作は『日本沈没-希望のひと-』同様、日本の政治を風刺しており、蓮舫と小池百合子を足して2で割ったような人物が登場したり、保身の発言によって現場が混乱に見舞われる様子を辛辣に描いている。しかしながら、これが風刺なのかギャグが滑っているのかわからない程にぐちゃぐちゃとしている。ある意味、今の政治を表してはいるのだが、政治家たちが自分の立ち回りに応じて小ボケを挟み、それに対するリアクションなく次のボケが展開される。時々、笑うが、目は決して笑っておらず、ロボットのようにプログラミングされた動作に従ってアクションを実行しているように見える。風刺にしては韓国描写が卑怯でいたたまれない。物言う韓国を醜く描写しているが、直接「韓国」とは言わずに「隣国」と表現し逃げている。
このような状況なので、様々な部署や組織が一丸となって問題に立ち向かう熱いドラマは皆無である。ひたすら揚げ足を取り、組織の人間がメンツを保つための行動しか行わない。それによって、大怪獣の一部が爆発したりする。会社見学に行ったらおっさんのどうでもいい話を延々と聞かされてしまったような苦痛を伴う映画となっていました。カメラワークや編集も、「何故、そこを使おうと思った?」と疑問に思うものばかりであり、ある作戦のためにダムを破壊する男の具体的な描写はないくせに、バイクで怪獣のもとへ駆けつける描写は何度も挿入され、ドローンの妙な低空飛行で捉えられる。
しかし、その数々の奇妙さの中でも切れ味のある風刺を私は見つけた。それはインバウンドビジネスのために、政治戦略のために、怪獣に名前をつける場面。日本中から言語学者を集めて生み出された名前が「希望」なのだ。絶妙なダサさ、お役所的センスに感動を覚えました。
本作は、すっかりTwitterのおもちゃとなってしまい、クソ映画の烙印を押されてしまった。確かに凄惨な映画ではあったが、1990年代〜2000年代にあった香ばしい日本映画の味を令和になって味わえることに面白さを感じた。少なくても、よくあるポンコツ映画とは別次元の映画体験ができたことは間違いない。
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※映画.comより画像引用