パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021)
The Power of the Dog
監督:ジェーン・カンピオン
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、キルスティン・ダンスト、ジェシー・プレモンス、コディ・スミット=マクフィー、トーマシン・マッケンジー、キース・キャラダイン、フランセス・コンロイetc
評価:50点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
第78回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞し、第94回アカデミー賞作品賞最有力と囁かれているジェーン・カンピオン最新作。2021年12月に配信されたものの、なかなか時間が取れずようやく観ることができました。
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』あらすじ
「ピアノ・レッスン」で女性監督として初のカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞したジェーン・カンピオン監督が、ベネディクト・カンバーバッチを主演に迎え、1920年代のアメリカ・モンタナ州を舞台に、無慈悲な牧場主と彼を取り巻く人々との緊迫した関係を描いた人間ドラマ。大牧場主のフィル・バーバンクと弟ジョージの兄弟は、地元の未亡人ローズと出会う。ジョージはローズの心を慰め、やがて彼女と結婚して家に迎え入れる。そのことをよく思わないフィルは、2人やローズの連れ子のピーターに対して冷酷な仕打ちをする。しかし、そんなフィルの態度にも次第に変化が生じる。フィル役をカンバーバッチが演じ、ローズ役のキルステン・ダンスト、ジョージ役のジェシー・プレモンス、ピーター役のコディ・スミット=マクフィーが共演。2021年・第78回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞。Netflixで2021年12月1日から配信。それに先立つ11月19日から一部劇場で公開。
男らしさが支配する世界
シャーロック・ホームズやトーマス・エジソンに『スター・トレック イントゥ・ダークネス』のヴィラン、そしてドクター・ストレンジと男らしい天才役を演じてきたベネディクト・カンバーバッチが有害な男性を描く本作に出演したことが非常に重要な作品だ。特にドクター・ストレンジはヒーローでありながら、自身の勤勉さと身体能力の高さを棚に上げ高慢な態度で接するキャラクターであるので、そのキャラクターを演じた役者が本作を演じることに意味がある。強くて外国語も使いこなせるインテリ牧場主フィルは高圧的な態度で、周囲の人を支配していた。それに対して弟ジョージはナヨナヨしていて頼りない。フィルはジョージを見下している。そこへ、未亡人ローズと息子がやってくる。ローズとジョージは惹かれて結婚するが、息子がナヨナヨしていることもあり、フィルは嫌がらせを強めていく。
西部劇における男らしさを批判する本作は、高圧的な男性の側面をジワジワとあぶりだす作品となっている。しかし、そこを描くことに注力しすぎている気がして物語としては想定の域を出ないものとなっている。リップサービスとしてジョン・フォードの『捜索者』オマージュをやっていたりするが、それは形式的なものである。なので観ていても、男性らしさの有害な側面を並べているだけに見え芸がない。
同じくヴェネツィア国際映画祭コンペティションに選ばれた『ロスト・ドーター』の視線の交差で女性の痛みをひたすら綴る演出が上手かっただけにあまり魅力を感じなかった。私が苦手な映画ってことは恐らく第94回アカデミー賞作品賞は『パワー・オブ・ザ・ドッグ』で決まりだろう。
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※Netflixより画像引用